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リュウガ
「お前…何してくれたんだ…」
粉々に砕け散った酒瓶。
リュウガの静かな声が、妙に恐怖心を掻き立てる。
ヒロイン
「あ…あの! 違うんです!
わざとじゃなくてその…」
そう言うと、リュウガはフラフラと立ち上がり
壁に立てかけてあった剣をスラリと抜いた。
ヒロイン
「!!!! ちょっと待ってください!
船長聞いてください!!」
リュウガ
「いくらお前でも… !?
何でお前もいる?」
ようやく気付いたシンの存在に、リュウガの意識は削がれた。
シン
「………」
黙り込むシンを見て、リュウガは切先をシンに向けた。
リュウガ
「お前がやったってのか?」
喉元まであと数センチという所まで、切先をあてがわれているというのに
シンは顔色一つ変えない。
命乞いも、言い訳もしないシンをしばらく睨むと
リュウガは不機嫌に剣を床に突き刺した。
ヒロイン
「!!」
リュウガ
「シン、ここから一番近い港に向かえ!
これ以上の酒を手に入れるまでは、どこにも行かねぇからなっ!」
そう言ってリュウガは怒りを露わにし、勢いよく部屋を出て行ってしまった。
残されたシンとヒロイン。
瓶の破片と酒にまみれたヒロインを見下ろし
シンは鼻で笑った。
シン
「…お前に任せて正解だったな。
船長が一発でエドの国に行く気になったぞ?
クククッ」
ヒロイン
「! もぉ!!誰のせいですか!?
シンさんも片付け手伝ってくださいよ?」
シン
「オレは舵取りが仕事だ」
そう言って、無責任にも船長室を出て行った。
ヒロインはやり切れない気持ちを押さえて
片づけをするしかなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・
シンの言う通り、2時間半後に
エドが国王を務める国へ到着した。
エドとは、若くしてこの国の国王となったエドモンドの事で、
最初の出会いは、女好きのエドがシリウス海賊団の紅一点であるヒロインに目をつけ
呼びつけたのがきっかけだった。
ヒロインに会ったエドモンドは、今まで出会った事のない
優しさや誠実さに触れ、気持ちを入れ替え
そしてヒロインに恋心を抱くようになった。
その後も世間知らずな国王では恥ずかしいと
シリウス海賊団に一時入団したりと
本来の国王としての姿とは思えないほど、奇抜で破天荒な行動を起こしてきた。
しかし国王に仕える人達も、その事を受け入れ
この国はより一層栄えるようになっていった。
だからこの国とエドモンドは、シリウス海賊団とかなり深い関係でもあった。
あの懸賞首のシリウス海賊団と知っていても
エドモンドの周りの人たちは何も言わず、受け入れくれる。
港に降りると、メンバー全員が驚いた。
いつも以上に活気があり、その上何かのお祝いムードが漂っていた。
ハヤテ
「スッゲー! 屋台も出てるし、酒なんか飲み放題!?
トワっ行くぞ!!」
トワ
「はい!!!」
ヒロイン
「あっ!」
飛び出して行くハヤテとトワ。
止めようと声を上げたが、2人の行く手を阻んだのは意外な人物だった。
ソウシ
「あれ? あの人って…」
港に掛けた橋板から身なりの整った
初老の男性が乗り込んできた。
執事
「お久しぶりです皆様」
エドの身の回りをお世話する執事だった。
リュウガ
「久しぶりだなっ! 元気してたか?」
執事
「はい。 エドモンド様も元気にしております。
毎日のように皆様のお話をされていたんですよ?」
ソウシ
「それは嬉しいですね!
スゴイ賑わいですけど、何かあるんですか?」
執事
「実は明日、某国の令嬢様がエドモンド様とお見合いするんです。
このお見合いが上手くいって、結婚の運びとなれば
私たちの国もより一層栄え、お互いにとっても望ましい結果になる事は間違いないんです」
シン
「…なるほど…
それで国民も令嬢を受け入れている事をアピールしているという訳か…」
ヒロインも港から続く市場の方までを見渡した。
ハヤテ
「結婚って… だってアイツ、オレより1つか2つ下だろ?」
シン
「バカ猿。 国王ともなれば早くに結婚して跡継ぎをもうけるのも務めだ」
リュウガ
「そうだよなぁ… アイツ国王なんだもんなぁ…
嫁候補なんざぁ腐るほどいるだろうな」
ソウシ
「でもエドも乗り気なのかな?」
執事
「それはそうですとも!
ご令嬢様は容姿も端麗で、性格も申し分ないお人です」
リュウガ
「ほぅ…それは一度お目に掛かりたいもんだな」
リュウガは顎鬚を摩りながら、何だかいやらしい表情を浮かべている。
執事
「ご令嬢にはお会いできませんが、エドモンド様が皆様にぜひ城へ来て欲しいと、お迎えにまいりました。
船は私たちが責任もって保管しますので、よろしければ馬車へお乗りください」
ハヤテ
「エドに会えるのか?」
エドモンドと気の合うハヤテは、嬉しそうに身を乗り出した。
執事
「はい。 皆様さえよければ数日お泊りになっても構いません」
ヒロイン
「でも… ご令嬢もお城にいるんですよね?
それなのに私たちが居て大丈夫ですか?」
唯でさえ海賊と付き合いのある事がバレたら、
お見合いどころではなくなってしまうと思うのだが…。
しかし執事はニッコリ笑った。
執事
「大丈夫です。
お洋服もこちらで準備しておりますので、どうぞお着替えください」
至れり尽くせりの状況に、メンバーは全員喜んで行くことにした。
しかし、ナギだけはそうではなかった。
ナギ
「…随分用意がいいな?」
ひとりだけ無表情で、納得していないナギ。
執事
「…港を見張る者から報告があり、皆様の船を見つけたので…
エドモンド様もすぐにお会いしたいと申しまして…」
ナギ
「………」
何だか上手く事が進み過ぎて、ナギは不信感を抱いた。
見合い相手が来ているというのに、わざわざ海賊の自分たちを城に呼ぶなんて
常識的に考えてあまりにも不自然だ。
そもそもエドモンドはヒロインの事が好きだ。
自分と付き合っている事を知っているにも関わらず
それでも諦めようとはしない。
それ故の不信感だろうか…。
エドモンドの城で過ごせる事に浮かれるメンバーを他所に
ナギは不機嫌な表情のまま、城へ向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・
馬が軽快な足音を立て、馬車は城の敷地内へと入って行く。
いつ来てもスゴイ城だ。
丁寧に手入れをされた庭も、今日は一段とキレイにされている気がする。
お妃候補の令嬢が来ているのだから
当然の事なのかもしれない。
ヒロインはエドモンドに会うのも楽しみだったが、
結婚という幸せな報告にウキウキしていた。
執事の言う通り、そんなに素敵な人なのだったら
エドモンドも幸せなはず。
そして横にいるナギをチラッと見上げた。
(…私もいつかナギと…♡)
そんな甘い想いを抱いたが、ナギの表情を見たら
そんな考えは消え去った。
ヒロイン
「…ナギ…?」
ナギ
「あ?」
ヒロイン
「…なんか不機嫌…」
他のメンバーには聞こえないよう小さな声でそう言った。
しかしナギは、更にムスッとして
何も返事は返してくれなかった。
馬車が城の入り口に着くとすぐ、エドモンドが走って出迎えてくれた。
エドモンド
「やぁシリウスの諸君!!」
リュウガ
「よぉ! 元気そうじゃねぇか!」
目を輝かせながら、現れたエドモンド。
ナギが手を取ってくれ、一番最後に馬車から降りたヒロインは
ふと視線をエドモンドに合わせた途端、ギュウッと抱き付かれてしまった。
ヒロイン
「!? エ、エドさっ!!」
エドモンド
「…会いたかったヒロイン…」
ヒロインの肩に深く顔を埋めるエドモンド。
ただならぬエドモンドの様子に、ヒロインはそのまま動けなくなった。
するとグイッとエドモンドを引き剥がし
ナギは自分の胸をヒロインを抱き寄せた。
エドモンド
「……やぁナギ、相変わらずだな?」
エドモンドはナギの嫉妬心を鼻で笑い
呆れたように言った。
ナギ
「それはお前もだろ?」
険悪な空気になり、ヒロインは慌てて声を上げた。
ヒロイン
「ね、早く中入った方がいいよね?
まだお洋服も着替えてないし、エドさんのお見合い相手の方に見つかったら大変だし!」
そう言うと、エドモンドは優しく微笑んだ。
エドモンド
「そうだな。
ではすぐに部屋へ案内しよう」
まだピリピリした空気は漂っているが
ヒロインはナギを促して、用意された部屋へと向かう事にした。