Magnolia
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ヒロイン
「? ナギ?」
ナギ
「…お前…何クツ履いてんだよ」
ヒロイン
「え? だって大理石の床って冷たいし…」
ここまで言っても、まだ気付かないのか…。
ナギ
「下着も洋服もねぇお前が、何でクツだけあるんだよ」
ヒロイン
「え…ナギのブーツ…
さっきベッドに上がる時、ナギ脱いだでしょ?
だから… ……っ!」
ようやく気づいたのか、泣きそうな表情をするヒロイン。
ヒロイン
「ど、どうしょう……」
ナギ
「はぁ… アホ
次はオレが出るから…」
ヒロイン
「うぅ…ソウシさんに嘘ついちゃった…
どうしよぉ~~~」
ナギはガクッと拍子抜けした。
自分との情事がバレた事じゃなく、ソウシにウソをついた事を悔やんでいるなんて…。
その純粋な気持ちに、ナギは呆れるしかなかった。
そしてヒロインの傍まで行くと、ポンッと頭に手を置いた。
ナギ
「大丈夫だ。
ドクターは全部分かってて、あぁ言ったんだ」
ヒロイン
「そうかもしれないけどぉ…」
そんな事をしている内に、部屋のドアがノックされ
ソウシが洋服を持って、戻ってきてくれた。
ソウシ
「あぁ、ナギ。
コレヒロインちゃんの着替え」
ナギ
「ありがとうございます」
ソウシは何事もなかったかのように、普通に接してきた。
ナギも予想通りの接し方に、いつも通りだな位にしか思っていなかったのに
シーツに包まったヒロインは、ナギの背中に隠れて様子を伺っていた。
ソウシ
「? あれ?
ヒロインちゃん、どうしたの?」
そう声を掛けられると、少しだけ顔を覗かせて
申し訳なさそうに言った。
ヒロイン
「あの…ソウシさん…嘘ついてごめんなさい…」
ソウシ
「え?」
ヒロイン
「…ナギが部屋にいるのに…
ナギといけない事してたのが知られるのが嫌で…んんっ!!」
ナギ
「アホッ! お前何言ってんだ!」
どこまで正直に話すつもりなのかと、ナギは慌ててヒロインの口を手で覆った。
ソウシは大きく目を見開き、あっけにとられていたが
すぐに表情が緩み、大きく笑い出した。
ソウシ
「ふっ…あははっ!!
正直だなぁ~ ふふふっ子供のヒロインちゃんも、大人のヒロインちゃんも
正直者ってことだね?
大丈夫だよ、ナギといけない事してたのは
私たちのヒミツね?」
唇に人差し指を立て、パチッとウィンクをすると
ソウシは嬉しそうに廊下を引き返していった。
ヒロイン
「んっ…はぁ…ナギ…ごめんなさい…」
眉を下げながら見上げてくるヒロイン。
ナギはバカ正直なヒロインに呆れるも
そういう所が好きなんだと、優しく笑った。
ナギ
「もういい。 早く着替えて、皆のトコ行くぞ?」
ヒロイン
「うん!」
===============
翌日。
エドモンド
「…もっと居ても良かったのだが…」
リュウガ
「いやぁ~オレ達もそうしてぇトコだが
人気者の海賊団を放っておかない野郎共が大勢いるからよ?」
エドモンド
「ふっ… そうか…」
エドモンドは寂しそうに笑った。
シン
「何をシケたツラしてる?
お前にはやることが山積みだろ?」
エドモンド
「そうだな…」
結婚をするものだと信じ切っている国民への説明。
陥れようとした令嬢の国への制裁。
数え切れない程の事案がいっぱいだ。
ソウシ
「煮詰まったらいつでも船に乗りにおいで?」
トワ
「それいいですね!
エドさん、まだ海賊見習い途中ですし!」
以前、国外に出たことのないエドモンドが
無理を言って、シリウス号に乗せてもらった事がある。
エドモンド
「ははっ… そうだな!
また会いに行く。 シリウスの皆もいつでも遊びに来い」
ハヤテ
「言われなくても来てやるよ!
ここだったらスッゲェ分厚い肉が山ほど食えるからな!」
ナギ
「…悪かったな…分厚い肉が滅多に出せなくて…」
ハヤテ
「ち、ちげーよ! そういう意味で言ったんじゃねーし!」
ナギは不機嫌な顔をして、ハヤテの言葉を取り合おうとはしない。
部屋中が笑いに包まれ、ヒロインも一緒に笑っていると
突然手を引かれ、エドモンドの前に立たされた。
ヒロイン
「エド…さっ…」
青い瞳に見つめられ、どうしたらいいか
ヒロインは視線を泳がせた。
エドモンド
「ヒロイン? 本当に会えて良かった…
お前がここへ来ていなかったら、この国はなくなっていたかもしれない」
ヒロイン
「そんな… いつもご迷惑お掛けして…」
エドモンド
「何を言ってる! あんなに可愛いヒロインも見れて、私は大満足だ!
それに…」
ヒロイン
「!」
さらに引き寄せられ、コソッと甘いエドモンドの声で囁かれた。
エドモンド
「ヒロインの事、もっと好きになった…
やっぱり『好き』は、なるんじゃなくて
なってるものだな?
…そしてなかなか忘れさせようとしてくれない」
ヒロイン
「ぁんっ!」
甘い囁きの後、カプッと耳を甘噛みされた。
エドモンド
「…ふっ、今度あんな無防備な姿をしていたら
襲うからな?」
ヒロイン
「っ!」
ヒロインはパッと耳に手を当てて、エドモンドを見上げた。
エドモンドは意地の悪い笑みを浮かべ、『2人だけの内緒』とでも言うように
人差し指を口元に当てた。
ナギ
「ヒロイン! 行くぞ」
ヒロイン
「あっう、うん!」
本当にエドモンドとヒロインだけの秘密が出来てしまい
不覚にもドキドキしてしまった。
このドキドキもナギには話せないな…と
前を歩く大きな背中を追い掛けた。
・・・・・・・・・・・・・・
船に戻る前に、街で食料品や備品を買い込み
シリウス号へと乗り込んだ。
そしてしばらくは、掃除や買い出した物の整理をしたりと
せわしく仕事をした。
数日前のだらけた船内とは大違いだ。
ハヤテ
「ヒロインー? 夕飯できたってよー!」
ヒロイン
「あっはぁーい!!」
メンバー全員のベッドカバーとシーツを付け替えていたヒロイン。
夕食の準備を手伝おうとしたが、他の事をしてろとナギに言われてしまった。
ヒロイン
「よしっ! 終わったぁ」
カバーとシーツの付け替えは、意外に重労働だ。
「ふぅ」と息をつくと、食堂に向かった。
ヒロイン
「お待たせしました!」
ハヤテ
「遅せぇよ!」
食堂に入ると、テーブルにはスッカリ料理が並び
ナギ以外のメンバーも席につき、準備万端になっていた。
ヒロイン
「す、すいません!
ナギ、ごめんね? お手伝い何も出来なかった…」
ナギ
「いいよ。 それよりもうコレ運んだら終わるから
さっさと席に着け」
ヒロイン
「うん!」
席に着くと、山盛りのコロッケが
大皿の上に乗っているのが目に入った。
ヒロイン
「わぁ! コロッケだ!
私、スッゴイ食べたかったんだ~」
すると、横の席に座りながら
ナギがボソッと呟いた。
ナギ
「お前との約束だからな…」
ヒロイン
「約束?」
ソウシ
「ヒロインちゃんが言ってたんだよ?
コロッケ食べたいって… ね、ナギ?」
ヒロインはいつそんな事を言ったのかと、首を傾げた。
シン
「覚えてるはずはない。
お前が小さくなってる時だ」
ヒロイン
「あっそういう事ですか…」
トワ
「でもスゴイですね!
大人になっても食べたい物が、子供の時と一緒だなんて…」
そのやり取りにナギは、少し不安になった。
いつも大人に戻った時、ふとした瞬間に子供の時の記憶があるのではないかと思う時がある。
もし今のヒロインが記憶のないフリをしているのだとしたら…。
そう考えると、あれだけ甘々に接していた自分が恥ずかしくなる。
ヒロイン
「? ナギ?
どうかした?」
ナギ
「……いや」
何か思い悩んでいるナギを不思議に見つめていると、
突然リュウガが大きな声を上げた。
リュウガ
「ああぁっ!!」
ハヤテ
「な、何んスか!?」
ソウシ
「びっくりしたぁ~。 突然叫ばないでくださいよ」
リュウガ
「シン! ヒロインっ!
オメェら、ちゃんとあの酒の代わり買って来たんだろうな?」
ヒロイン
「あ…」
リュウガの問い掛けに、ヒロインはすぐに顔色を変えたが
シンは至って普通で、むしろ涼しい顔すらしているように見える。
もしかしてシンが買っておいてくれたのだろうか?
尊敬の眼差しでシンを見つめていると、
シンはサラリと言った。
シン
「…お前、何を期待してる?
あれはお前が割った酒だろう? お前が買うのが当然だ」
ヒロイン
「!? なっ!
あれはシンさんのせいであぁなったんですよ?
そんなのズルイですっ!」
どちらのせいか擦り合いをしていると、怒りが頂点に達したリュウガが
バンッとテーブルに拳を振り下ろした。
リュウガ
「…そうかよ… よぉ~く分かった。
シン、ヒロイン。
お前らそこに立て…」
ヒロイン
「えっ?」
シン
「………」
リュウガ
「いーから、さっさと立て!
今から吊るし上げてやるからよっ!」
そう言って脇に差した剣の柄に手を掛ける。
ヒロイン
「ちょっちょっと待ってください!!
シリウス海賊団は仲間を大事にするんじゃないんですか?
お宝よりも大事なんじゃ!!」
リュウガ
「…あの酒は別もんだ…
言いたい事言ったら、さっさと立て…」
あの目は本気だ。
ヒロインはゴクリと喉を鳴らし、ナギの方を見たが
ナギはまだ何か考えているようだ。
(ど、どうしよぉぉぉ~~~)
しかし、ハッと思い出した。
ヒロイン
「あっ!! そうだ!
船長! ちょっと待っててください!」
リュウガ
「あ?」
ヒロイン
「すぐ戻りますからっ!」
そう言って食堂を出ようとすると、鋭くシンが言う。
シン
「……お前、逃げるなよ?」
ヒロイン
「! に、逃げませんよ!!」
少しすると、木箱を抱えたヒロインが戻ってきた。
ヒロイン
「船長コレ! エドさんが帰り掛けに渡してくれたんです。
エドさんの国のお酒なんですけど…」
リュウガ
「…お前、それで済まそうとしてる訳じゃねぇよな?」
シン
「船長知らないんですか?
その酒、一年に10本も取れないほどの希少な酒で
市場には出回らないんですよ?
お前、よく2本ももらえたな?」
そんな話初めて聞くが、シンの口ぶりからすると嘘ではなさそうだ。
ヒロイン
「そ、そうなんです!
スゴイですよね~! 船長のあのお酒とは比べものにはならないかもですが…
飲んでみませんか?」
ソウシ
「へぇ、そんなに珍しいお酒なの?
あぁ、確かにラベルも高級感あるし、エドの国の物って結構世界からも注目されてるもんね?」
ソウシも話に乗っかり、リュウガは渋々グラスを差し出した。
そしてシンが栓を開け、グラスに注ぐと
リュウガはガブリと飲み干した。
ヒロイン
「ど…どうですか?」
これで納得してもらえなかったら、もう吊し上げ決定ということだ。
固唾を飲んでリュウガを見つめると
「ぷはっ」と声を上げ、満足そうに笑顔を見せた。
リュウガ
「うん! こいつぁ美味い!!
冷やしておいたのが良かったな!
こりゃイケるぞっ!」
ハヤテ
「マジで!? オレも飲みてぇー!」
リュウガの反応を見て、ホッとしていると
コソッとシンが耳打ちしてきた。
シン
「…ふっ、嘘も方便ってヤマトのことわざ
結構使えるな?」
ヒロイン
「! シ、シンさん!」
やっぱりシンの嘘だったのか…。
あの演技力、ぜひ見習いたいものだ。
でもエドモンドからもらった酒を飲むリュウガの顔も
先に飲ませてもらってるハヤテの顔も本当に美味しそうだ。
ソウシ
「そう言えばさぁ、途中になっちゃったけど
ヒロインちゃん、子供になった時の記憶って本当にないの?」
みんなのグラスに酒を注いでいるヒロインに問い掛けた。
ナギは顔を上げ、しっかりヒロインの反応を確認した。
ヒロイン
「はい… 全然覚えてないんですよね…
皆さんにいつもご迷惑お掛けして…」
嘘をついていないのは、すぐに分かった。
きっとナギだけじゃないだろう。
他のメンバーも同じ気持ちを少なからず持っているのではないか。
大人のヒロインには絶対に出来ない事を
子供のヒロインには出来てしまう事…。
もし記憶があったら、とんでもなく恥ずかしい。
ヒロインは自分のグラスに酒を注ぐと
手に持ちながら席に戻った。
ヒロイン
「あっ、でもボンヤ~リしてるのもあるんです。
誰かにぎゅ~ってしてもらえたり、抱き上げてもらったり…
ちゃんと手を繋いで歩いてくれたり…
…コレって夢ですかね…」
メンバー全員
「「!?」」
楽しく酒を味わっていたメンバーの動きがピタッと止まった。
ヒロイン
「ん~~いい香!
これエドさんの国の特産のフルーツ酒なんだそうですよ?
いただきま~……」
メンバー全員
「「ちょっと待てっ!!」」
ヒロイン
「!?」
全員からの視線を集め、ヒロインは固まった。
子供のヒロインは可愛くて、何度でも会いたいと思うが
記憶が残っているのなら、話は別だ。
ヒロイン
「???」
メンバーの険しい顔の意味なんて、ヒロインに分かるはずもなかった。
☆END☆ おまけ&あとがき⇒