Magnolia
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部屋に戻り、ベッドへチビヒロインを寝かすと
チビヒロインはすぐに眠り込んだ。
ナギは「ふっ」と笑い、サラサラな前髪を掻き上げ
そっとオデコに唇を当てた。
すぅすぅと寝息を立て、まだ赤く腫れている瞼を閉じ
チビヒロインは、ナギの胸にいる。
どんな事をされたのか…。
少しだけ聞き出そうとしたが、チビヒロインは黙ったままだった。
ナギ
「…はぁ…」
ナギはボスっと、仰向けに寝ころんだ。
どっと疲れが出た。
今まで大人のヒロインが危ない目にあった事は何度もあったが
子供のヒロインが危ない目に会うのは
桁違いに心配だった。
小さい分、判断力も力もない。
もし自分に子供が出来たら、こんな風になるのだろうか?
そう思うと、何だか不安になってくる。
ナギ
「…ヒロイン…オレは父親には向いてなさそうだ…」
小さく呟いた言葉は、当然チビヒロインには聞こえてない。
だが、向いてないにしても
こんな可愛い子にいつか会えるのだとしたら…
ナギはチビヒロインを抱き締めた時の感触や
キャッキャッと笑う、とびきりの笑顔を思い出した。
(…それでも、お前との子供に会ってみたい…)
チビヒロインの頬をそっと撫でると
ナギは起こさないようベッドから抜け出した。
するとタイミングよく、部屋のドアをノックする音がした。
起きてしまうかと、チラッとベッドで眠るチビヒロインを見たが
ちょっとやそっとでは起きそうにない程
深い眠りについている。
ナギがドアを開けると、憔悴しきった表情のエドモンドが立っていた。
エドモンド
「…ヒロインは…?」
ナギ
「寝てる」
エドモンド
「…そうか…
少し話をしてもいいか? リュウガたちにはさっき話をしてきた」
ナギが身を引いて、ドアを開くと
エドモンドは力なく「ありがとう」と言って、部屋に入ってきた。
ドアの横には、エドモンドが気を利かせてか
使用人を立たせてくれていた。
エドモンドは真っ直ぐベッドへ行くと、縁に腰掛け
寝ているヒロインを見つめた。
エドモンド
「…良かった…怪我はしていないようだな…」
ナギ
「あぁ」
エドモンドは愛しそうにチビヒロインの頭を撫でる。
もしこれが大人のヒロインにしている事だったら
とても許す事は出来ないが、今は子供という事でナギは何とか自制心を保っている。
ナギ
「…あの後どうしたんだ?」
エドモンドは情けない表情を浮かべながら笑った。
エドモンド
「結局、見合いも結婚も
令嬢の国の策略で、この国の弱みを握る為に乗り込んできただけの事だった…
…ははっ…一国の主が、まんまと敵を城に迎え入れ
その上、婚約しようとしていたなんて…
とんだ笑い者だな?」
自嘲気味に笑うエドモンドが、何とも痛々しく
ナギは何も話す事が出来なかった。
エドモンド
「…ヒロインを巻き込んでしまって、申し訳ない。
こんな小さい子を…」
ナギ
「…どうしてヒロインを?」
エドモンド
「昨日の晩餐会から、ずっとヒロインの事を気にかけてたらしい。
見合いの時も、庭園で遊んでいたヒロインの話をしていたから
私の弱みのひとつと思ったらしい…。
…確かに、ヒロインが連れ去られてたら
私はどうにかなっていたかもしれない…」
それはナギだって一緒だ。
同じ感情を抱くエドモンドに、ナギはやはり年月が経っても
エドモンドの気持ちは簡単には変っていないのだと確信した。
ナギ
「……エド、悪いがヒロインを見ててくれるか?
ドクターに聞きたい事がある。
ひとりにすると不安がるから…」
そう言うと、エドモンドは頷き
こちらを見ずに、視線はヒロインに向いていた。
エドモンド
「…どうにもナギには適いそうにない。
大人でも子供でも、私はお前には勝てないのだな…」
エドモンドの声が消え入りそうで、ナギはもう一度声を掛けようかと思ったが
ドアを開け、ソウシの元へと向かった。
ドアが静かに閉まると、エドモンドはそっと横になり
気持ち良さそうに寝息を立てているチビヒロインと向かい合わせになった。
エドモンド
「…怖かったよな… 悪かった…」
そう言いながらも、エドモンドは助けに入った時の
誰も立ち入れないような、ナギとチビヒロインの空気に
嫉妬を通り越して、羨ましいとすら思った。
エドモンド
「ナギよりも早く私に会っていたら、何か変わっていたか…?」
そう言いながらも、ナギとヒロインが出会っていなかったら
そもそも自分とも出会う事なんてなかっただろう。
考えれば考える程、ナギとヒロインの絆は強く
自分なんて到底割り込む事なんて出来ないように思える。
エドモンドは結婚の話がなくなった今、ようやくヒロインへの想いを再確認したにも関わらず
その想いが折れてしまいそうだった。
こんな風にベッドで一緒に寝るのも、無防備な寝顔を見れるのも
きっと最初で最後だろう。
子供のヒロインでもいい。
エドモンドはもう一度、チビヒロインの顔を見つめると
突然苦しそうに、ギュッと顔をしかめ始めた。
エドモンド
「!? ヒロイン?」
目は閉じているが、チビヒロインは体を丸めている。
突然どうしたのかと、エドモンドが起き上がると
驚いた事に、チビヒロインの体がどんどん成長していき
あっという間に、大人のヒロインに戻っていった。
エドモンド
「……っ!!」
話しでは聞いていたが、本当にこの子はヒロインだったのだと
初めて実感した気がした。
そしてエドモンドは、シーツからはみ出している
むき出しの肩や太ももが目に入り、不覚にもドキリと心臓が跳ねた。
きっと子供の時に着ていた洋服が脱げ、このシーツの下は裸なのだろう。
何度も女の裸なんて見てきたエドモンドだが、これほど艶やかな肌を見たのは初めてだった。
エドモンドは触れようと、手を伸ばしたその時…
ヒロイン
「…ん…」
エドモンド
「!!!」
薄っすらと目を開け、大人のヒロインが目を覚ました。
エドモンドは行き場を失った手を、慌てて引き
声を掛けた。
エドモンド
「ヒロイン… 大丈夫か?」
ボンヤリとした目をしたまま、声の方を見上げると
そこにはエドモンドがいた。
ヒロイン
「エド…さん…? あれ…私…」
「何故ここに?」とでも言うように、ヒロインはキョトンとした寝起き姿を見せた。
エドモンド
「ふっ…本当に覚えていないのだな?」
ベッドの縁に座っていたエドモンドは、そっとヒロインの顔に掛かった髪をかき分け
優しく微笑んだ。
ヒロイン
「…? 覚えてないって…
私…いつのまに寝てたんですか…?」
ヒロインが目を擦りながら、ムクッと体を起こす。
エドモンド
「!!」
予想もしない出来事に、エドモンドは目を見開いた。
当の本人は、まるで気づいてないようだ。
今エドモンドの前には、上半身裸のヒロインがいる。
真っ白で、柔らかそうな膨らみが
隠される事無く、そこにあった。
ヒロイン
「ん~… シリウスの皆は…?
? エドさんどうしたんですか?」
もっと見ていたいし、何ならこのまま押し倒してもいいと思った。
しかしエドモンドは着ていたジャケットをヒロインの肩に羽織らせた。
その肌に触れた生地の感触で、ヒロインはハッと視線を体に移した。
ヒロイン
「きゃあぁ!! なっど、どうしてっ!!?」
エドモンド
「すまない… 少し見てしまった…」
ジャケットを両手で引き寄せ、必死に胸を隠すヒロイン。
火が出そうな程、顔を真っ赤に染める。
エドモンド
「昨日からお前は、子供になっていた」
ヒロイン
「え…? あ…そう…なんですね…?」
エドモンドの言葉を、すぐに飲み込んだようで
慌てる事なくヒロインは受け入れた。
エドモンド
「本当に驚いた。
だが、得した気分だ。 大人のヒロインも子供のヒロインも
とても可愛いかったぞ?」
子供になっていた時間の記憶は残っていない。
今度は何をしてしまったのかと、ヒロインはヒヤヒヤしていた。
ヒロイン
「あの… 私、何か失礼な事しませんでしたか…?」
エドモンド
「ん?」
ヒロイン
「…何か…目が重たいんです…
私…泣いてました?」
恥ずかしそうにジャケットに顔を埋めながら、まだ潤んでいる瞳を向けてくるヒロイン。
よく見ると、瞼も少し腫れぼったい。
それはそうだろう。
あれだけ大いに泣いたら、こうなるのは予想できる。
エドモンドはニッコリ笑って、ヒロインの頭にポンッと手を置いた。
エドモンド
「…そうだな…
私の見合いを潰してくれた」
ヒロイン
「……えっ!???」
表情が固まり、エドモンドの言葉が理解出来ていないようだったが
そのまま話を続けた。
エドモンド
「…やっぱり、お前の事は諦められない。
チャンスをくれたのは… ヒロイン、お前だからな?」
そう言って、チュッと頭にキスを落とすと
エドモンドはベッドから立ち上がった。
エドモンド
「ふっ… そんな顔するな。
ナギを呼んでくる。 誰よりもヒロインの事を心配していたから…」
ヒロイン
「あっエドさん!」
聞きたい事はたくさんあるのに、エドモンドは満足そうに部屋を出て行ってしまった。
そしてドアが閉まると、ヒロインはボスッとうつ伏せでベッドに倒れ込んだ。
ヒロイン
「…エドさんに見られちゃった…」
とんでもない姿を見られた上、「見合いを潰した」とは一体…
ヒロインはパニック寸前の頭を、必死に働かせた。
子供になるのはいつだって突然で、前触れもなくやってくる。
そしてそれは大人に戻る時も同じで、いつだって洋服のサイズが合わず
こういう姿で目を覚ます。
一番最初の時なんかは、リュウガと風呂に入っている時だった…。
(…ナギにまた心配させちゃったな…)
枕に押し付けた顔を上げ、ナギの顔を思い浮かべた。
ナギ
「ヒロイン!」
部屋のドアがノックもせずに開き、ナギが駆け込んできた。
ヒロイン
「! ナギっ!
あの…ごめんな…っ!」
謝るよりも先に、ナギがギュッと抱きしめてくれた。
…何て安心する腕だろう。
ナギ
「…良かった… 体調はどこもおかしくないか?」
ヒロイン
「ん… ごめんね?
私また子供になっちゃったみたいで…」
ナギ
「そんな事はいい…
会えて良かった…」
ナギの呟く声が優しくて、胸の奥がキュンと締め付けられる。
ナギとこうしていれば、何も怖いものはない。
すると、ヒロインの口から思いもよらない言葉がこぼれた。
ヒロイン
「…夢…でね?
何だかスゴク怖い思いをしたの…忘れちゃったけど…
でもね、ナギが…こうしてギュウってしてくれて…
そしたら、あぁ…もう安心していいんだって…私気が抜けちゃって…」
ナギはハッとして、ヒロインを胸から離した。