Magnolia
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侍女
「ね、お願いだから泣かないで?」
そう優しく言われても、チビヒロインは泣きじゃくるばかりで
令嬢はイライラを募らせて行く。
令嬢
「もう、いい加減にしてよ!
外に声が漏れちゃうじゃない!」
侍女
「お嬢様、もうおやめになったほうが…」
令嬢
「黙りなさい!」
そんなやり取りとしていると、静かにドアをノックする音が響いた。
令嬢
「!!!!」
驚いた令嬢は、咄嗟に侍女と顔を合わせた。
侍女
「お、お嬢様…」
緊迫した空気を打ち破るかのように、もう一度ドアがノックされる。
コンコン
エドモンド
「…すまない。 私だが、少し顔を見せてくれないか?」
チビヒロイン
「!! えどにぃ…んぐっ!」
叫ぼうとしたが、令嬢の手が口を塞ぐ。
令嬢
「お前が出て! 私は体調が優れないと言って追い返すのよ」
エドモンド
「…出てこないな…」
エドモンドはドアの陰に隠れているナギに、そっと視線を落とした。
他のメンバーも少し離れた場所で、待機してくれている。
ナギ
「ヒロインは絶対ここにいる。 間違いない」
そう言われ、エドモンドも強く頷くと
もう一度声を掛ける。
エドモンド
「婚儀の日取りを決めたいのだが…」
静かな廊下にエドモンドの声が響く。
すると、ドアの向こうから床を歩くコツコツとした音が近づいてきた。
エドモンドはナギと目を合わすと、コクリと頷いた。
ドアが開くと、そこから顔を出したのは侍女だった。
侍女
「エドモンド様、お待たせして申し訳ございません」
エドモンドは出来るだけ静かに、何もないかのように話し出した。
エドモンド
「ご令嬢はいるか? 少し顔を見て話たいのだが…」
部屋の中を覗き込むように視線を向けるが、
不自然にドアを押さえている侍女。
侍女
「も、申し訳ございません…。
お嬢様は少しお疲れになったようで…」
ナギは確信していた。
エドモンドが次の言葉を話し出そうとするよりも早く
ナギはドアに手を掛け、バンッと大きく開いた。
侍女
「な、何をっ!!」
ナギ
「ヒロイン! 居るんだろ!?
どこだ!」
荒々しく部屋に入るナギ。
侍女は止めに入ろうかとも思ったが、そこで手を止めた。
そして広い部屋を、ナギは名前を呼びながら進んで行く。
しかし返事どころか、ヒロインの姿すら見つからない。
令嬢
「…何事ですか…?」
驚いた表情を浮かべ、弱々しく表れた令嬢。
怯えたように、エドモンドのそばにすり寄る。
ナギ
「ヒロインが… 女の子がいるだろ?」
令嬢
「女の子? あなた方と一緒にいた子ですか?」
エドモンド
「居なくなってしまったんだ。
何か知らないか?」
令嬢
「いえ… 私はエドモンド様と別れてから
ずっとお部屋で休んでましたので…」
ナギ
「チッ…」
わざとらしい言い方に、ナギは舌打ちをした。
絶対ここにいる。
ナギは寝室と思われる部屋を乱暴に開けた。
令嬢
「何をなさるんです!
女性の寝室ですよ? これ以上の無礼はゆるしません!」
沢山のドレスがトルソーに飾られ、衣装ケースやトランクが山積みになっている。
令嬢がナギの腕を掴み、ヒステリックに叫ぶ。
令嬢
「無礼者! エドモンド様っ一体どういうおつもりですの?
こんな侮辱初めてです!」
しかしナギは何かを見つけ、目を大きく見開くと
安心したような優しい笑みを浮かべた。
そしてそれを見ていたエドモンドも、何を意味しているかが分かり
ナギを押さえる令嬢の手を掴み取った。
令嬢
「?!」
エドモンド
「…残念だ…とても残念だ…
さぁ、話を聞こう。 ご令嬢のご両親も呼んできてくれ」
怯える侍女にそう告げると、エドモンドは喚く令嬢を連れ出し
部屋を出て行った。
静かになった寝室。
ナギはそっと足を踏み入れ、大きな衣装ケースの前に立った。
そしてパカッとふたを開けた。
ナギ
「ヒロイン…」
チビヒロイン
「!!!!!」
衣装ケースの中で、膝を抱えシャクリ上げていたヒロインは
濡れた瞳にナギを移すと、ボロボロと大粒の涙を流した。
チビヒロイン
「なぎ…にぃちゃ…ヒッ…うわぁ~~~~ん」
ナギはチビヒロインは抱き上げて、力強くギュ~~と抱きしめた。
ナギ
「もう大丈夫だ。 怖かったな?」
チビヒロイン
「うぅ~なぎっにぃヒッ…うぁっ!」
どれだけ怖い思いをしたのだろう…。
泣きじゃくって、もはや言葉になっていない。
ナギは小さな背中をトントンとゆっくり叩いた。
そして何度も「大丈夫だ」と言い聞かせた。
ナギ
「みんなも心配してるぞ?
お前の顔、見せにいこう」
チビヒロインは何も答えず、肩に顔を埋めると
ギュッと首にしがみ付いてきた。
ナギ
「…大丈夫だ。 オレがずっと傍にいる。
早くこの部屋を出よう」
苦しそうに泣きじゃくるチビヒロイン。
ナギはこの小さくて、軽い重みを感じ
心から安堵した。
最悪の事態も想像してしまったりして、心臓は今にも潰れそうだった。
余裕を見せているが、ナギの方がその場にヘタリ込んでしまいそうだった。
ハヤテ
「あっ! ナギ兄!」
リュウガ
「お~! 良かった!
やっぱここに居たんだな?」
トワ
「ヒロインちゃん、怪我してない?
もう大丈夫だからね?
僕たち全員が一緒にいるからね?」
するとチビヒロインは少しだけ顔を上げて
みんなの方を見たが、まだ息が落ち着かず
「ヒッ」という声しか出せない。
シン
「お前、鼻水垂らしすぎだぞ?
ホラこっちむけ」
シンは内ポケットから、真っ白なハンカチを出し
チビヒロインの鼻を拭いてやった。
ナギも他のメンバーもこれには驚いた。
潔癖ともいえるシンが、まさか鼻水を拭くなんて…
どうやらシンも、自分と同じように
きっと自分の子には、甘々なタイプなんだろうと微笑んでしまった。
ソウシ
「はぁ…本当によかったよ…
ナギ、部屋に連れてってあげたら?
少し休ませてあげた方がいい」
ソウシがそう言うと、チビヒロインは不安そうに
呟いた。
チビヒロイン
「…ヒッ…おへ…ヒッや?」
ナギ
「ん? 部屋行きたくないか?」
チビヒロイン
「…ヒッ………」
押し黙るチビヒロイン。
シン
「…部屋に行きたくないんじゃなくて、ひとりになるのが怖いんだろ?」
シンがそう言うと、チビヒロインはギュッとナギのシャツを掴んだ。
ナギ
「大丈夫だ。 一緒にいる。」
チビヒロイン
「ほん…ヒッ…と…?」
ナギ
「あぁ、本当だ。」
そう言うと、チビヒロインは安心したのか
コテッと頭をナギの肩に預けた。
リュウガ
「それにしても、よくここに居るって確信がもてたよな?」
シン
「…確かに。
もし間違っていたら、ただじゃ済まない部屋だぞ?」
そう言うと、ナギは無表情にチビヒロインのスカートのポケットに手を入れた。
メンバー
「「???」」
ナギがポケットから手を出し、握った手の平を開くと
そこには食堂で食べた厚焼きクッキーがボロボロになったモノがあった。
ハヤテ
「クッキー?」
ナギ
「そうだ…」
ナギは以前に言った事があった。
もし迷子になったり、はぐれたら
必ず目印を残せと…。
チビヒロインはその言いつけを守ったのだ。
きっと後で部屋ででも食べようと、こっそりポケットに詰め込んだクッキーだったに違いない。
この部屋の前に、クッキーの粉がボロボロと落ちていた。
そして閉じ込められていた衣装ケースの前にも
このクッキーは落ちていた。
シン
「ふっ…食い意地が張っていると、いい事があるもんだな?」
リュウガ
「がははっ! でかしたぞヒロインっ!
さすがお前はシリウス海賊団の一員だ!!」
リュウガの大きな手がガシガシと頭を撫でると、チビヒロインは気持ち良さそうにニッコリ笑った。
ソウシ
「ヒロインちゃんのお菓子好きが、ナギを導いたんだね!
スゴイなぁ… ふふっ、これからは食べ過ぎても怒れなくなっちゃうね?」
ナギは肩眉を上げてチビヒロインを見つめたが
安心しきった笑顔を見て、本当に良かったと柔らかく微笑んだ。