Magnolia
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チビヒロイン
「…なぎにぃちゃのとこいく」
???
「まぁどうして?」
チビヒロイン
「………」
そのまま走り出してナギの元へと行こうかと思った瞬間、
すぐ近くのドアが開き、フワフワのドレスを着た令嬢が顔を出した。
令嬢
「お入りなさい?
美味しいお菓子と、素敵なお洋服がたくさんあるわよ?」
ニッコリと優しい笑みを浮かべる。
この人は確かエドモンドのお嫁さんになる人で
昨日一緒にダンスをしていたお姫様だ。
チビヒロインは、少しだけ安心し
差し出された手に小さな手を乗せて、令嬢の部屋へと入って行った。
・・・・・・・・・・・
壁に背を付け、チビヒロインの戻りを待っていたナギ。
用を足すにしては遅すぎないか?
そんな心配がジワジワと胸を覆い出していた。
堪らずにナギはドアをノックした。
使用人
「はい」
ナギ
「さっき女の子が入ったが、まだ出て来ないか?」
使用人
「あぁ、それでしたら先ほど別の方がお迎えに上がり
少し前に出て行かれましたよ?」
ナギ
「!? それ誰だ?
男か?」
使用人
「いえ、女性で… あっ!ちょっとお待ちください!!」
ナギは静止を振り払い、女性専用の化粧室へと飛び込んだ。
ナギ
「ヒロインっ!?」
広い化粧室に驚いたが、ナギは構わず大きな声で呼んだ。
使用人
「こちらにはもういません!」
ナギ
「別にドアがあるのか?」
使用人
「はい、あの奥に…
あのエドモンド様にお伝えした方がよろしいですか?」
ナギ
「…アイツは今、何してるんだ?」
使用人
「確か、大臣たちとの会議中かと思います」
ナギ
「……だったらいい。
すまないが、食堂にいるオレの仲間に…
行けば分かると思うが、この事を伝えてくれ!
ヒロインが連れて行かれたと!」
使用人
「は、はい!」
ナギのあまりの剣幕に、使用人の女性は
青ざめた顔で飛び出していった。
一体誰がヒロインを…
この城で自分たちに対して、悪意を抱いている者はいないはずだ。
…と、なると
チビヒロインを連れ去って、得するのは誰だ。
考えても何も思いつかない。
ナギはヒロインの名前を呼びながら
広い城内を走り回った。
・・・・・・・・・・・・・
一方チビヒロインは、令嬢の部屋で
テーブルを囲って座っていた。
令嬢
「ふふっ、そうなの?
じゃああなた達は、船で旅をしているのね?」
チビヒロイン
「うん!」
令嬢
「どうしてエドモンド様と仲良しになったの?」
チビヒロイン
「…わかんない…」
チビヒロインは、この部屋に来てから質問攻めに合っていた。
リュウガやナギ達の事、他にもエドモンドの事…
小さいヒロインにとっては、何も分からず困っていると
令嬢の様子が段々とおかしくなってきた。
令嬢
「…分からないって…あなたのことでしょ?」
チビヒロイン
「!?」
強い口調にチビヒロインは怯えた。
物語のお姫様のようにキレイで、ドレスも品のいい仕草も
思わずウットリしてしまう程だった。
それなのに、今チビヒロインの頭の中には
ナギの顔しか浮かばない。
令嬢
「さぁ、思い出すのよ!
どうしてここにいるのか? エドモンドが何を隠しているのか?」
恐ろしい程、目を吊り上げて
令嬢はチビヒロインの肩をガシッと掴んだ。
あまりの恐怖に、チビヒロインはジワッと涙が浮かんでくる。
侍女
「お嬢様! そんなに脅しては逆効果ですよ?」
令嬢
「…もぉ、これじゃ全然掴めないじゃない!
何の為にここに来たのよ!
ホントに結婚する事になっちゃうでしょ?」
侍女
「…そうですが、こんな小さい子に全てを聞き出すのは無理かと…」
令嬢は冷たい視線で見下ろした。
令嬢
「いい? 私がいいと言うまでここにいるのよ?
それと、今聞いた話も、こうしている事も秘密。
分かった?」
怖くて怖くて、ブルブル体が震え出した。
侍女はその姿があまりにも可哀想で、すぐにでも解放してあげようと令嬢に提案したが
やはり無理だった。
この王国の弱みを握り、軍隊を送り込み
窮地に立ったこの国を乗っ取ろうというのが、令嬢一家の企みだ。
結婚だけでは娘を取られてしまう。
少しは恩恵を受けられるかもしれないが
それ以上に、この国の豊かな自然や、多く獲れる鉱石…
いくらでも金を生めそうな資源がたくさんある。
さっきのお見合いの席で、エドモンドはかなり心を許しているように見えた。
もう少し近けば、ポロリと話してくれそうだ。
それに見合いの席でも、何度も何度も視線を送っていたこの子供。
エドモンドのよっぽど大切なモノだと踏んで
攫ってみたが、ハズレのようだ。
令嬢
「まぁ、このまま連れ去っておけば
もし戦争にでもなった時、いい切り札になるかもしれないわ」
侍女
「そんなっ! ご両親様はそこまで望んではいらっしゃらないはずです!」
令嬢
「ふん、お父様もお母様も決断力が鈍いから
あっちの言いなりになるしかないのよ。
見てなさい、今日中にケリをつけて
ここから出ないと、取り返しのつかない事になるわっ!」
不気味に笑うその横顔、どこかで見た事があると思った。
(あ… こわいまじょだ…)
チビヒロインは、大きな声でナギを呼んだ。
チビヒロイン
「なぎにぃちゃ~~~~っ!!!」
・・・・・・・・・・・・・
ナギ
「!?」
息を切らしながら、城中を走り回っていたナギは
何故かピタリと足を止めた。
ナギ
「はぁ…はぁ…どこに居る…はぁ…
ヒロイン---!!」
城の使用人たちが、何事かと見て来るが
そんなのはお構いなしだ。
あと見ていない部屋はどこだ。
迷子になりそうなほど広い城の中で、ナギは途方にくれていた。
すると…
リュウガ
「ナギっ!」
ナギ
「はぁ…船長!」
リュウガ
「どうだ? 居たか?」
ナギ
「いえ…はぁ… 下の階とこのフロアは見ましたけど
どこにも…はぁ…」
ナギの汗だくな顔を見れば、どれだけ必死に探し回っていたかが分かる。
リュウガ
「今、他のヤツらも一緒に探してる。
こうなったらエドにも話した方がよくねぇか?
城の中もアイツなら分かるし、人ももっと動かしてもらえる」
ナギはエドモンドの仕事を邪魔しないようにと思っていたが
事は想像以上に最悪だ。
ナギはコクンと頷くと、会議中と言っていたエドモンドの居る部屋へと走り出した。
・・・・・・・・・・・・
令嬢
「! なんて声出してるの!?
ちょっと口を塞いでおいてっ!」
侍女
「そ、そんな事できません!」
令嬢
「…あなた、言う事が聞けないの?」
侍女
「そんな事は…その…」
今までも令嬢の自分勝手な行動を何度となく見てきたが
こんなに小さな子を巻き込んで、一体何をしたいというのだろう。
この子は何も知らないし、第一本当にエドモンドの大切なモノなのだろうか?
泣きじゃくるチビヒロインを、侍女はギュッと抱きしめた。
侍女
「大人しくさせますから、口を塞いだり
乱暴な事はしないでくだい」
令嬢
「フン、情でも湧いたの?」
令嬢は苛立ちを抑え切れないのか、用意されたお菓子のバスケットを
乱暴に払い落とした。
小さいヒロインの体がビクッと跳ねた。
・・・・・・・・・・・・・・
エドモンドの居る部屋の前には、使用人が2人立っていた。
ナギの剣幕に驚き、本来会議が終わるまで
決して開けてはならぬと言われているドアを開け
使用人の1人が中へ飛び込んで行った。
ナギは外で待ちながら、呼吸を整えていた。
使用人
「大丈夫ですか?
お水でも用意させましょうか?」
ナギ
「はぁ…いや、大丈夫だ…はぁ…
アンタも見てないよな? ヒロインの事…」
使用人
「申し訳ございません。
恐らくこの階には来ていないかと…」
会話の途中で、使用人の背後にあるドアが勢いよく開いた。
ナギ
「エドっ!」
エドモンド
「ナギ! ヒロインが居なくなったって、本当なのか?」
ナギ
「あぁ、食堂近くのトイレで誰か女が連れてったって…」
エドモンド
「女…」
ナギ
「悪い、エドも仕事の最中なのに」
エドモンド
「そんな事はいい。
シリウスの皆も探しているのか?」
ナギ
「あぁ、広過ぎて探しきれている自信ねぇけど
ヒロインが連れ去られてから、そう時間は経ってねぇから
そこまで遠くに行ってるのは考えにくい」
ナギの言葉に、エドモンドはハッとした。
食堂近くのトイレ…
確かそこから廊下を二回曲がれば、令嬢の部屋だ。
部外者が立ち入らないよう、調度品などを置いて
その先に行けないようにした。
エドモンド
「…まさかと思うが…」
ナギ
「?」
エドモンドが険しい表情で俯いていると、話を聞きつけたシリウスメンバーが集まってきた。
ソウシ
「ナギっ!」
ナギ
「どうだった?」
ハヤテ
「オレとトワで、西の棟を見たけどいなかった」
シン
「オレは南に行ったが、ダメだ。
外にも出た形跡はない」
リュウガ
「どの使用人もヒロインの姿を見てねぇ。
おかしくねぇか?」
これだけの人を用しても見つからないとは…
ナギはどうする事も出来ないもどかしさに
「クソッ」と拳を握り、太ももを叩いた。
ソウシ
「ナギ、落ち着いて。
外に出てないなら、城の中を調べればいいって事だし
エド、どこか人目につかない部屋とかない?」
ソウシの問いに、エドモンドは毅然と顔を上げ「ついてこい」と走り出した。