in my room
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つまり今回の事は、全てロッシュの作戦だったという事だ。
リカー号に上手い話を持ち掛け、無償で船の改装をさせる。
恐らく船大工たちには、先に大金を支払ったか
もしくは脅したか… 恐らく後者だと思うが…
そして豪華になったリカー号を見れば、ライバル関係のシリウスメンバーが黙っていないと
シリウスとリカーの人間関係を知った上でないと成り立たない作戦だ。
ハヤテ
「チッ…ロイのバカのせいで…」
ソウシ
「いや、ロイも被害者だろ?」
シン
「…いずれにしろ、頭に来るな」
まんまとロッシュの罠にハマってしまったかと思うと
腸が煮えくり返りそうだ。
ロッシュ
「あははっいい顔ですね!
やっぱり海賊王の睨みは、恐ろしいなぁ…
ふふっでも明日からは、海中の海賊が知るんですよ?
『船を取られたマヌケな海賊王』って?」
ヒロインは声も出せない状態だが、それがどれだけの事か想像すると
何が何でも阻止しなくてはと思った。
しかし手も縛られ、足には鎖のついた鉄球を引きずらされ
身動きすら取れない。
ソウシに習った護身術さえ出来ない。
リュウガ
「…そうかよ…
オメェは随分と賢いみてぇだな?」
ロッシュ
「何ですか? 今になってやっと気づきましたか?」
リュウガ
「あぁ降参だ。
ここまでされちゃ、オレ達も打つ手がねぇ…」
そう言いながらも、リュウガの後ろに立つメンバーには
リュウガの作戦が分かっていた。
この距離でロッシュを引き離せるのは、ナギとシンしかいない。
シンの銃でロッシュに隙を与え、ナギの鎖鎌で射止める。
その作戦しかない。
ロッシュ
「…なるほど、ヤケに潔いいですね?」
ロッシュは鋭い目つきでリュウガを見つめる。
リュウガ
「仲間は取られてるわ、船はお前の手下に占拠されてるわ…
オレ達の力が上でも、これ以上どうしようもねぇ…」
ナギとシンはリュウガの合図を待った。
ロッシュ
「…無駄ですよ?」
そう言うと、カチャリとヒロインの頭に銃が突き付けられた。
それも右側に立つロッシュと、後ろに立つ手下の男からだ。
ナギ
「チッ!」
ロッシュ
「オレを殺れば、コイツが女を撃つ。
コイツを撃てば女に当たる。
クククッそちらには、名撃手と鎖鎌の名手がいますからね?」
リュウガ
「なんだよ、それも見抜かれてんのかよ…
どうしようもねぇなぁ…」
こんな緊迫した状況にも関わらず、リュウガはいつものような口調で話す。
ヒロインは銃を突きつけられている恐怖心よりも
リュウガや他のメンバーへの怒りが込み上げてきていた。
ソウシ
「…こうなったら、降参しかありませんね?
ヒロインちゃんの命の方が大事だし…」
シン
「オレとしては、ヒロインの命よりも
船を取り戻したい所だが、ここは引いた方がよさそうだな…」
ヒロイン
「!?」
何て薄情なんだろう。
シンの言葉もそうだが、ソウシも何故そんなにも簡単に船を諦めてしまうのだろう。
ハヤテ
「…そうだな。
一旦船は渡すしかねぇかもな…」
リュウガ
「ナギはどうだ?
ヒロインの命を取るだろ? 船なんて幾らでも造れる」
ナギ
「…そうですね…」
ヒロイン
「!!」
どうかしてる。
あんなに大切な船なのに、何を言っているのだろう。
自分の命を優先してくれるのは嬉しいが、こんなにも呆気なく渡してしまうとは…
ロッシュ
「ふははっ!
やーっぱ海賊王は物分かりがいい。
本当はもっと抵抗すると思って
全員殺しちゃおうかと思ってたんですけど、船を取られた海賊王として生き恥さらしながら人生を送るのもいいですよね? クククッ」
ロッシュは面白そうに笑う。
リュウガ
「まいったぁ… オレよりも若いヤツに人生決められちゃあなぁ…」
ロッシュ
「どうします?
ここで殺された方が、生き恥かかないですよ?」
リュウガ
「オレは痛いの苦手だからよ?
殺されるのはごめんだ…」
諦めムードを漂わせるシリウスメンバー。
ロッシュは疑いながらも、何も抵抗の出来ない様子に
徐々に警戒心が解けていく。
そしてロッシュの銃がヒロインの頭から離れた瞬間
リュウガは合図を出し、ロッシュの死角に立たせていたトワに閃光弾を投げさせようとした。
だが、驚いた事に猿ぐつわが口から緩んだヒロインの声にトワはその手を止めた。
ヒロイン
「…何…言ってんですか…」
シリウスメンバー
「「!!?」」
ロッシュ
「オイ、勝手に喋るな」
メンバー全員が目を見張った。
そしてロッシュがグリッとまた頭に銃を突きつける。
だが恐怖はなかった、それよりも先ほどから湧き上がってきた怒りの感情が爆発した。
ヒロイン
「何言いなりになってるんですかっ!?」
リュウガ
「オ、オイヒロイン!?」
シン
「…あのバカ…作戦が台無しだ…」
これにはメンバーも驚いた。
こんな状況で、メンバーに怒鳴りつけてくる女がいるだろうか?
シン
「…お前状況分かってんのか…?」
ヒロイン
「そっちこそですよ!!
何を言いないりになって船を渡そうとしてんですか?」
ロッシュ
「オイ、黙れ!!」
ソウシ
「ヒロインちゃん落ち着いて!」
こちらの作戦もお構いなしにヒロインは怒鳴り続ける。
ヒロイン
「この前からずっと言おうと思ってたんです!
どうせ死ぬなら言ってから死にます!!
皆ロイ船長に挑発されて、改装に夢中になってましたけど
私全然乗り気じゃありませんでした!!」
リュウガ
「なにぃ!!?」
ヒロイン
「今のままで十分なのに、張り合ってるみたいで…
今のシリウス号のいい所も壊そうとしてて、スッゴイ嫌でした!!!」
シン
「…随分言ってくれるじゃねぇか…」
全員が苦笑いになる。
ロッシュ
「黙れっっ!!」
ヒロイン
「船を渡すとか、私の命がどうとか…
その前にする事あるでしょ!?」
ロッシュ
「黙れと言ってるだろ!」
するとパシンッと乾いた音が甲板に響き
ヒロインの正面を向いていた顔が横向きになった。
ナギ
「ヒロイン!」
ナギの足が一歩踏み出した所を、ソウシが引き止める。
ヒロインはゆっくりと顔を戻す。
叩かれた頬側の唇から、血が流れている。
ヒロイン
「ナギも…皆も海賊でしょ!?
黙って獲られないでよ!
船も私も奪い返してっっ!!!
欲しいものは必ず手に入れるんでしょ?!」
その言葉でメンバー全員の胸に火が灯った。
そして何より、隣のいるロッシュが狼狽えている。
ロッシュ
「女、お前は何言ってる…
お前の頭を銃が2つも突きつけられてるんだぞ?」
ヒロイン
「関係ないですよ…
だって…」
ロッシュ
「!?」
正面を向いて話すヒロインの横顔に気を取られていたロッシュ。
突然ふっとヒロインがしゃがみ込み、視界から消えたと思うと
「ぐわっ」という叫び声が聞こえ、ドサッとヒロインを囲んでいた手下が倒れ込んだ。
そしてハッとして顔を上げると、そこには剣を持ったリュウガが立っており
喉元に切っ先が突き刺さっていた。
ロッシュ
「!!!」
リュウガ
「…おめぇは甘いんだよ…
頭ん中だけで計算してると、こういう目に合うんだ」
するとカシンッと手に持っていた銃が、シンの銃に弾かれ
ロッシュは一気に丸腰になってしまった。
ロッシュ
「なっ!!?」
シン
「言ってたろ?
名撃手って…? こんな距離目を閉じてても当てられる」
ナギ
「ヒロイン! 大丈夫か?」
ナギの鎖鎌がジャラッと音を立てて、背後の男から離されていく。
ロッシュに「状況が分かっているのか」と聞かれた瞬間
ナギと目が合い、その瞬時に悟った。
ナギが鎖鎌を投げようとしていると…
そしてナギが鎖鎌を振りかぶると同時に身を屈めた。
少しでもタイミングがズレれば、間違いなくヒロインに当たっていた。
ナギの腕を信じているからこそ出来た事だ。
ヒロイン
「うん、大丈夫…」
ナギは縄をほどき、鎖を外してくれた。
リュウガ
「さぁどうする?
これでもまだやるか?」
ロッシュ
「クッ…この女、何て命知らずなんだ…」
ヒロイン
「…私だってシリウス海賊団の一員ですよ?
それに銃を向けられるのなんて、しょっちゅうだし…」
そう言ってチラリとシンを見つめた。
リュウガ
「がははっ!
まぁ、お前の高~~~い知能をもってしても
ヒロインの行動は読めなかったって訳だ!!
さっさと船から降りろ!
手下も全員連れていけよ?」
ロッシュ
「!? 見逃すというのか?」
リュウガ
「ふっまさか。
オレを誰だと思ってる? 海賊王のリュウガだぞ?」
ロッシュ
「!? ぐぁっ!!」
リュウガに気を取られていたロッシュは、突然右頬を殴られた。
ロッシュ
「な、何をっ!」
ナギ
「…ヒロインの分のお返しだ。」
リュウガ
「そーいうこった!
やられたらやり返す。 ちゃんと報いを受けろ!」
ロッシュ
「!!!!」
ニヤリと不敵に笑うリュウガに、ロッシュは初めて恐怖の表情を浮かべた。