in my room
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その頃ヒロインは、まだ街の中を歩いていた。
(すっかり遅くなっちゃたな…)
空に浮かぶ月を眺めた。
夕飯の食材を探しに来たが、料理をテイクアウト出来る店を見つけ
今夜は手抜きをしようと、買い込んだ。
その為思ったよりも買い出しが早く終わり
ヒロインはいつもはなかなか立ち寄れない女の子向けの店を何件も回った。
洋服屋、雑貨屋、化粧品屋…
ナギや他のメンバーと一緒だったら、素通りする店ばかり。
だがそうは言っても、ふとメンバーの事を思い出し
足りなくなっていたものや、喜びそうな物を買ってしまった。
結局、構ってもらえなかった腹癒せに
自分のモノを買い込んでやろうと思っていたのに
実際に自分の為に買った物と言えば、焼き菓子くらいだった。
そんな根性なしの自分が笑えてくる。
そしてメンバーの喜ぶ顔を思い浮かべて、ますます笑みがこぼれた。
(早く帰ろう! ナギもこれ見たら喜んでくれるかな?)
ホクホクとした笑顔で帰路に向かうと、突然見知らぬ男から声を掛けられた。
男
「お姉さん、こんな時間にひとり?」
ハッと目を見張ったが、ヒロインはその言葉を無視して歩き出した。
ナンパのあしらい方くらい、心得ている。
男
「待ちなって!」
グッと腕を掴まれた。
心臓がドクンと音を立てた。
ヒロインにだって少しは分かる。
この手は、普通のナンパ目的の手ではない。
こういう手をしているのは…
ヒロイン
「…離してください…」
男
「ほぉ…なかなか可愛い顔してるね。
ふっ、何だ? その眼…」
警戒心を剥き出しにした眼に気づき、男は面白そうに笑った。
ヒロイン
「…何の用ですか?」
男
「さすがシリウスの女だな?」
ヒロイン
「!!」
その言葉に、ヒロインは「やっぱり」と一気に男への警戒心がピークに達した。
男
「ちょっとの間、隠れてて欲しいんだ。
力づくじゃないとついて来ないような、そんな間抜けじゃねぇよな?」
ヒロイン
「っ!」
思いっ切り肘打ちを食らわして逃げようと思っていたが
辺りを見回すと、人混みに紛れて海賊風の輩たちがニヤニヤと不気味な笑みを浮かべていた。
(逃げ場がないって事?)
その瞬間、一気に血の気が引いて
恐怖心が襲い掛かる。
男
「ふははっ物わかりがいいねぇお嬢ちゃん。
安心しろオレは命を奪ったりはしねぇ主義だからよ?
オイ、シリウスの方はどうなってる?」
手下1
「今、もぬけの空ですぜ!」
すると男は不敵な笑みを浮かべる。
男
「ははっ! 海賊王も所詮は能無しのマヌケだなっ!
よしおめぇら、指示通り動けっ!」
そう言うと取り囲んでいた男たちは、サッと姿を消した。
ヒロイン
「…何する気?」
キッと男を睨みつける。
男はニヤリと笑い、掴んだヒロインの腕を引っ張った。
男
「まぁ見てなって!
今から面白れぇ事が起こるからよ? クククッ」
この男、一見線の細い優男に見えるが
掴まれている手の力強さも、話し方も何だかとても普通の海賊とは思えない。
何でも見据えているような眼に、ヒロインは嫌悪を覚える。
男
「ふっ、堪んないねぇ…
その眼! クククッようやく夢が叶う…」
男は嬉しそうにヒロインを引っ張り、港の方へと歩いて行く。
・・・・・・・・・・・・・・・
いくら街を探しても見つからない。
ナギは息を切らしながら、探し回っていた。
(ヒロイン…どこだ!)
焦る気持ちと、ちゃんと傍で見ていなかったという後悔の念。
どうか何事もないようにと、ナギは何度も心の中で願った。
ハヤテ
「ナギ兄~~居た??」
通りの向こうから走り寄ってきたハヤテ。
ナギ
「いや…お前の方は?」
ハヤテ
「ダメだった。
何人か聞いたりしたんだけど…」
ナギは走り回って上がった呼吸を整えながら
人混みに目を凝らす。
ハヤテ
「アイツ、何かつまんなそうにしてたから
ヘソ曲げて帰ってこないとか?」
確かに考えられる。
だが、もしそうだとしてもヒロインの事だ
ここまで心配を掛けさせるはずがない。
(どこに居る!?)
すると、散らばって調べていたメンバーが集まってきた。
リュウガ
「どうだ? 手掛かりあったか?」
ナギ
「いえ…」
ハヤテ
「西側は居なかったぜ」
トワ
「港の周りもです。。
それらしい女の子も見てないみたいです…」
ソウシ
「…何かに巻き込まれたかな…
ここまで見つからないのも、姿を見られてないのもおかしいよね?」
すると店の並ぶ通りを調べていたシンが言った。
シン
「…街には来たみたいだぞ?
何件かヒロインらしい姿を見たヤツがいた」
ナギ
「それどこだ!?」
いつにない剣幕でナギが詰め寄り、シンはウザったそうに答えた。
シン
「バカか、1時間以上前の話だ。
そんなになるんだったら、しっかり首輪でもつけておけ。
迷い犬は飼い主の責任だぞ? しつけがなってないってな? クククッ」
ソウシ
「シン!!」
必死なナギを逆撫でするようなシンに
ソウシは厳しく声を上げた。
すると、恐る恐る話しかけて来た男がいた。
街の男
「…アンタたち、女の子探してるのかい?」
ナギ
「!! あぁ、若い女だ。」
すると男は、スッと手に持っていたカゴを前に突き出した。
トワ
「! コレ! うちの買い物カゴですよ!?」
ナギ
「コレどこで!?」
街の男は酷く憐れんだ表情を浮かべ、申し訳なさそうに話出した。
街の男
「…30分くらい前に、この先の人気のない路地で男に腕を掴まれているのを見た。」
メンバー
「「!!!?」」
リュウガ
「どんな男だ?」
街の男
「暗くてよく見えなかったが、腰に金色の望遠鏡をみたいなのをぶら下げてた」
シン
「金色の望遠鏡…」
シンはリュウガを見つめた。
ナギ
「で、どっちの方に行った?」
街の男
「オレも怖くてあんまり見てられなかったんだ。
多分港の方だと思う…
悪かった…助けてやれなくて…」
そう言いながら買い物カゴをナギに渡す。
ナギ
「いや、気にするな…
船に戻る…」
そう言うとナギは急いで船へと引き返す。
リュウガ
「もし海にでも出ちまったら捜すのが大変だぞ!?」
ソウシ
「私たちも急ごう!」
そう言ってメンバー全員
シリウス号を目指して走り出した。
・・・・・・・・・・・
シリウス号に着いたが、至って静かな様子にナギは更に不安が増した。
(ここじゃないのか?)
肩で息をしながら、ナギは甲板へと足を踏み込んだ。
ハヤテ
「はぁ…はぁ、ナギ兄!!
ヒロインは?」
ナギ
「………」
ナギはハヤテの問いかけには答えず、さらに甲板を歩く。
すると、暗かった船内からランプが灯り
こちらへ向かって歩いてくる。
リュウガ
「おめぇら、気ぃ抜くんじゃねぇぞ」
甲板に揃ったメンバーは、それぞれが戦闘態勢を取った。
男
「おやおや、随分お早いお帰りで」
リュウガ
「…やっぱりおめぇか、ロッシュ」
ロッシュ
「光栄ですね、海賊王に名を知ってもらえて…」
トワ
「ロッシュって、あの知略家のロッシュ船長ですか?」
ロッシュは、剣の腕がある訳でも腕っぷしが強い訳でもない。
船員の数も多くはないが、多くの戦いで勝ち抜いてきた経緯がある。
それと言うのも、トワの言う通り『知略』で
これまでの名声を勝ち取ってきた。
やり方は手段を選ばない。
どんなに時間や手間がかかっても、必ず手に入れる。
それがロッシュのやり方だ。
リュウガよりも若いのに、ここまで名が知れているのは
それだけの知能と戦略の賜物だ。
リュウガ
「…今度の狙いはシリウス号って訳か…」
ロッシュ
「ご明察」
シン
「…お前の手下は、航海室で何をしてる」
ぼんやりと航海室からランプの灯りが漏れており
シンはとても不快な気分になった。
ロッシュ
「何って出航の準備に決まってる。
もう少し帰りが遅いと思ってたからね」
ハヤテ
「はぁ!? お前何言って…」
ハヤテが身を乗り出そうとすると、それをリュウガが手で遮った。
リュウガ
「随分面白れぇ冗談言うじゃねぇか」
ロッシュ
「冗談? どこがです?
今の状況分かりませんか? あなたたちに選択の余地はないんですよ?」
丁寧な言葉遣いだが、どこまでも冷たく
感情を微塵も感じない話し方に、息を飲む。
すると船内へと続く階段から、手下の男に連れられてヒロインが姿を現した。
ナギ
「ヒロイン!!!!」
ロッシュ
「おっと、動かないでくださいよ?
ふふっこのお嬢さんの命は、オレの手の中なんですからね?」
両手を後ろ手縛られ、口には布で猿ぐつわをされている。
遠目で見る限り、乱暴はされていないようだ。
こんな状況だが、ナギはそれだけで少し安心した。
リュウガ
「…おめぇ何が望みだ」
ロッシュ
「もちろん、この船をいただく事ですよ!
まぁもう頂いたも同然ですけどね? ククッ」
リュウガ
「…なるほどな…
ロイの船の改装をしてやったのも、テメェの仕業か」
ロッシュ
「気付くのが遅いんですよ…
クスクス…思惑通りに事が運んで愉快でしたよ」
憎らしい笑い声が甲板に響き、シリウスメンバーはグッと拳を握った。