糸
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ナギ
「眠れそうか?」
チビヒロイン
「…いっしょにねてくれるの?」
ナギ
「当たり前だ」
嬉しそうに枕に顔を埋めるチビヒロイン。
ナギもベッドに上がり、小さな体を抱き寄せた。
チビヒロイン
「…なぎにぃちゃ…なぎにぃちゃはすきなひといる?」
ナギ
「……いる…」
「お前だ」と言いたいが、こんなに子供も本当の事を伝えても
分かるはずもない。
そんな風に考えての発言だったが、チビヒロインの反応は違った。
チビヒロイン
「それってだぁれ?」
腕の中で顔を上げて、必死な表情をする。
ナギ
「誰って…」
何だか恥ずかしくなってしまい。
ナギは誤魔化した。
ナギ
「秘密だ」
チビヒロイン
「ひみつなの…?」
ナギ
「…あぁ…もぅ寝ろ。 疲れただろ?」
チビヒロイン
「………」
納得してないような顔をしていたが、すぐにギュッと目を閉じたチビヒロイン。
明日は大人のヒロインに会えるだろうか…
ナギはチビヒロインの小さな寝息が聞こえるまで
ずっと寝顔を見つめていた。
大人のヒロインに戻ったら、小さくなった時の記憶は消えてしまう。
ナギがどんなに嫉妬心を燃やしていたかも、
どんなに心配で過保護になったかも
全てなかった事になる。
あんな姿を覚えられていたら、たまったもんじゃない。
だが、いつも突然いなくなってしまうチビヒロインを思うと
少し寂しく思えてしまう。
矛盾しているが、どちらにしてもヒロインが大切で
好きだという気持ちは変わらない。
そんな事を考えていると、「スースー」と小さな寝息が聞こえ始めた。
あっけなく眠りについたチビヒロインを見つめ
ナギは「ふっ」と微笑んだ。
ナギ
「おやすみ、ヒロイン…」
小さくそう呟いて、ナギはそっとベッドを抜け
出し
風呂へ入りに行った。
風呂に向かう途中、ソウシに出くわした。
ソウシ
「あぁナギ! ヒロインちゃん寝たの?」
ナギ
「はい」
ソウシ
「体調的には大丈夫そうだね。
早く元に戻るといいんだけど…」
ソウシにもヒロインがいつ元に戻るかなんて分からない。
ナギ
「ドクター、ずっとこのまま…なんてないですよね?」
ソウシ
「…ないと思うけど…
ただ症例がないから、絶対とは言えない。」
ナギ
「…風呂行ってきます…」
ソウシ
「あぁ…うん…」
表情は変えないものの、ナギは相当不安だろう。
他のメンバーは小さくなったヒロインを純粋に可愛がっているが
恋人のナギとしてみれば、それだけでは済まない。
もしこのままだとしたら、ナギとの年齢差が20以上離れているし
成長していくにしても、またナギを好きになるか分からない。
それにナギ自身も子供のように育てたヒロインに恋人のような恋愛感情が湧くのだろうか…。
ソウシと同じことを考えながら湯船に浸かっていたナギは
バシャッと顔に手ですくった湯を掛けた。
(ヒロインは戻る!)
何の根拠もないが、そう思うしかない。
思わず長湯になってしまいそうだったナギは、風呂から上がると
そっと部屋のドアを開けた。
部屋のドアを開ける度、目を開ける度に思う。
『元に戻っていてくれ』と…。
ベッドに眠るヒロインに近づく。
そして気持ち良さそうに眠るヒロインを見つめた。
ナギ
「…早く戻ってこい、ヒロイン…」
屈託のない寝顔にそう話しかけ、起こさないようにナギも一緒にベッドへと入った。
==============
ナギは自然と目が覚めた。
いつも起きる時間だ。
目覚ましが鳴らなくても体に染みついている。
まだ夜が明けておらず、窓の外にも星が浮かんでいる。
今朝もとても冷える。
慣れているとはいえ、やはり布団から出るのは至難の業だ。
隣ではまだヒロインの寝息が聞こえる。
それでもナギは意を決して、起き上がろうと決め込むと
そっと起き上がった。
クンッ
ナギ
「!?」
何か分からないものに引っ張られた。
何だ?と思い、ナギは感触を頼りに左手を触った。
すると小指に何か巻き付いている。
部屋が暗くてよく見えない。
ナギはもう一度左手を引いてみる。
何かに引っ掛かっているような重みを感じた。
すると、隣で「ん…」と声を上げて
もそもそとヒロインが動いた。
ナギはヒロインを起こしてしまったかと
申し訳ない気持ちを感じていたが、ふと気が付いた。
今の声…
ヒロイン
「…ん… ナギ…もぉ起きる時間?」
寝返ったヒロインが、向かい合わせにナギを見つめる。
まだ眠たそうなトロンとした目だ。
ナギ
「!!!」
ナギは驚いてそのまま固まってしまった。
ヒロイン
「ナギ…もぅ少し一緒にいて…?
あったかいから…」
そう言って半身だけ起き上がっているナギに寄り添ってきた。
ヒロイン
「…? え…?」
何だか不思議な感触に、ヒロインはハッと目を開けた。
すると何故か裸で寝ていた。
ヒロイン
「えっ?えっ?
ど、どうして?? 私昨日ナギと…?」
全く身に覚えがない。
どうして裸で寝ているのだろう。
訳が分からず戸惑っていると、突然ギュッとナギが抱きしめてきた。
ヒロイン
「わっ! ナ、ナギ?
あの…コレどういう…ナギ?」
ナギ
「……ヒロイン…」
ヒロイン
「???」
何故こんなにもナギがキツク抱きしめてくるのか分からない。
だが、ナギからただならぬ空気を感じる。
ヒロイン
「…ナギ?」
静かにそう呼びかけてみる。
ナギはヒロインの存在を確かめるように、何も言わず抱きしめていた。
その呼びかけに、ようやく体を離すと
ナギはヒロインを見つめた。
ナギ
「…会いたかった…」
右手をそっとヒロインの頬に触れた。
ヒロイン
「ナギ… 私…」
不安そうに見上げる目。
その目には、もう幼さはなかった。
ナギは優しく微笑んだ。
ナギ
「お前、しばらく高熱にうなされてて
ドクターとオレの判断で、強い解熱剤を飲ませた」
そういえばナギとソウシが、世話を焼いてくれているのをボンヤリと覚えている。
ナギ
「…その薬の副作用で、2日間子供になってた…」
ヒロイン
「え…? 子供って…」
状況が呑み込めないようで、ヒロインは目を丸くしている。
ナギ
「ドクターの話だと、前にククススの実を食べた事があると
強い副作用で、そういう事もあるそうだ」
ヒロイン
「……じゃあ私また…」
ショックを受けたように俯くヒロイン。
はやり何も覚えていないのだろう。
ナギはヒロインの背後に、クシャッとなっている子供用の前開きのワンピースのパジャマを見つけた。
元に戻る時にボタンが弾けて脱げたのだろう。
そしてそっとヒロインのアゴに手を掛け、上を向かす。
ナギ
「ヒロイン…」
ナギの目が「お帰り」と言っている。
会えて嬉しそうに、優しく微笑んでいる。
何故だか分からないが鼻の奥がツンとして、涙が浮かんでしまいそうだった。
ナギ
「ふっ…久しぶりに会えたのに泣くな…」
ヒロイン
「うん…」
そう言って、少しだけ浮かび上がった涙を拭おうと左手を上げると
ヒロインもまたクンッと何かに手を取られた。
ヒロイン
「?」
その感触はナギにも伝わり、2人はお互いに左手を差し出した。
少しずつ明るくなりだした空のお陰で、ボンヤリと屋への中にも光が届いた。
ヒロイン
「…コレって…糸?」
ナギの小指とヒロインの小指が、赤い毛糸で結ばれ繋がっていた。
ヒロイン
「コレ…ナギがしたの?」
ナギ
「いや…」
ナギにも全く分からないが、結び目を見た途端
思わず微笑んでしまった。
蝶々結びをしたかったのに、結局グジャグジャの固結びになったような形をしている。
糸を巻き付けた犯人がすぐに分かった。
そして床の上には、シンがチビヒロインに買ってやった赤い毛糸の手袋が
無残な姿で残っていた。
ヒロイン
「…なんだか運命の赤い糸みたい…」
ヒロインの言葉にナギはハッとした。
『なぎにぃちゃはすきなひといる?』
そう聞いてきたチビヒロイン。
ナギはヒロインの手を掴むと、そのまま抱き寄せた。
ヒロイン
「あっ! ナギ?
何? 私さっぱり意味が分かんないよ…」
ナギ
「…お前が大好きだって事だ…」
ヒロイン
「んっ!」
突然ナギに塞がれた唇。
ヒロインはナギ以外何も考える事が出来なくなり
ナギの溢れるほどの愛情に酔いしれた。
リュウガ
「オイ、オメェらこんなトコで何してんだ?」
廊下を歩くリュウガは、ナギとヒロインの部屋の前に群がっているメンバーを見つけた。
そして全員が「シ~」と人差し指を口に当てた。
リュウガ
「ん? なんだ?
もぅ飯の時間だろ?」
ソウシ
「食事はもっとずっと後になりそうですよ?」
リュウガ
「あ?」
朝食の時間をとっくに過ぎているのにも関わらず
姿を現さないナギを心配して来てみれば
こんな状況だった。
ナギの体内時計が正常に稼働するのは
もう少し時間が掛かりそうだ。
☆END☆ おまけ&あとがき⇒