糸
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しばらくすると、リュウガは甲板の床にヘタリ込んだ。
チビヒロイン
「せんちょ! もういっかい!」
リュウガ
「はぁ…もぉ勘弁してくれ…
オイ、ハヤテ! 交代だっ!」
ハヤテ
「オ、オレッスか?!」
リュウガ
「これ以上やったら足がヤバイ…はぁ…
オラ、船長命令だ」
甲板掃除をしていたハヤテは、面倒臭そうな声を出したものの
顔には「嬉しい」と書いてあるのがハッキリ分かる。
ハヤテ
「しょうがねぇなぁ…」
そう言ってハヤテがチビヒロインを抱き上げた瞬間…
ドゴーン!!!
シリウス号のすぐ傍に大きな水柱が立った。
ハヤテ
「!! リカー号だ!」
リュウガ
「チッよりによってこんな時に…」
チビヒロインは突然の事に訳が分からず
そのままギュッとハヤテに抱き付いた。
シン
「このバカ猿が!
甲板にいて何故敵船が見えない!?」
舵取りのデッキから大声で叫んでくる。
ハヤテ
「あぁ?! テメーこそそんだけ高い所にいんのに
何で見えねぇんだよ!」
ナギ
「バカ野郎! ハヤテ!
ヒロインが怯えてんだろっ!」
ハヤテ
「! あ…」
甲板に出てきたナギは、ハヤテの元に駆け寄るとチビヒロインを抱きしめた。
ナギ
「大丈夫だ。
オレ達がいるから安心しろ」
大きな音にも驚いたが、ハヤテとシンの言い合いにも驚き怯えていた。
ナギの胸に顔を埋めると、ナギはギュッと抱きしめてくれた。
ロイ
「待たせたなシリウスの諸君!
しばらくぶりだから寂しかっただろう?」
リカー号が寄り添うように並走すると、ロイは大きな声でそう呼びかけた。
リュウガ
「ナギ、ヒロインを船内に隠せ!
知られたら面倒になる」
ナギ
「はい!」
しかし一足遅かった。
ロイ
「さぁて、今日こそは私の真珠ちゃんを…
ん?
バンダナ…お前それ…」
ナギ
「チッ…」
甲板に飛び込んできたロイは、簡単にもチビヒロインを発見した。
そしてズカズカとナギの傍までやってきた。
ロイ
「バンダナ…この子供まさか…」
チビヒロインはナギの胸に顔を埋めていてロイは顔を見ることができない。
ロイ
「まさかヒロインとの…」
蒼白した表情を浮かべるロイ。
甲板へと出る階段から、ソウシが上がってきた。
ソウシ
「そんな訳ないでしょ?
ほら怖がってるから…ナギ、早く中に入れてあげな?」
ソウシの計らいで、何とかロイにバレずに済んだ。
不審がっているロイだったが、本来の目的を思い出し
スラリと腰から剣を抜いた。
ロイ
「今日こそはこの俺様が勝って見せるぞ!」
ハヤテ
「…その言葉、いつも聞いてるけどな…」
ロイ
「ぬぬぬっ、うるさい!
さぁさっさと始めるぞ!!!」
ロイの言葉を皮切りに、リカー号からロイの手下が乗り込んできた。
リュウガ
「面倒臭ぇなぁ…」
ファジー
「ロイ様ぁ! シン様だけは傷つけないでくださいよ!」
シン
「フン、あんなヘナチョコに傷なんてつけさせるかよ…」
シンも舵を固定させると、ノロノロと銃を取り出した。
船内に入ったナギは、チビヒロインを部屋に降ろした。
ナギ
「いいかヒロイン、オレがいいって言うまでここにいろよ?」
チビヒロイン
「やだぁっ! ヒロインもなぎにぃちゃといっしょいる!」
ナギ
「ダメだ。 外は危ないからここにいろ。」
チビヒロイン
「やだぁ!!!」
ギュッと足にしがみつき、離れようとしない。
こんなにも聞き分けがないのは珍しい。
ナギ
「ヒロイン、すぐ戻ってくるから」
チビヒロイン
「やぁ!」
ナギ
「ヒロイン…」
チビヒロイン
「やだぁ! いっしょいく~~」
ついに泣き出してしまったヒロイン。
ロイがヒロインの存在に気付く前に追い返したいナギは
ついその焦った感情が勝り、チビヒロインに怒鳴ってしまった。
ナギ
「いい加減にしろ!
話を聞け! すぐ戻ってくるからいい子にしてろっ!」
ビクッと体を跳ねさせ、チビヒロインは目にいっぱい涙を浮かべ
怯えたように見上げた。
そして足にしがみ付いていた手がパッと緩んだ。
ナギ
「……すぐ戻ってくるから……」
何とも後味が悪く、ナギはそのまま部屋を飛び出していった。
甲板へ向かうも、悲しげなチビヒロインの顔がチラつき
戦闘意欲が丸で湧かない。
そして甲板に出ると、いつもの荒々しい光景が飛び込んできた。
圧倒的にシリウス海賊団が優勢だが
例の如く
粘り強く抵抗をしているリカー一味。
ソウシ
「あれっ? ナギ、ヒロインちゃんどうしたの?」
ナギ
「あ…部屋に…」
ソウシ
「独りにしてきたの?
あんなに怯えてたのに…」
ナギ
「………」
そう言われると益々罪悪感に見舞われる。
堪らなくなり、ナギは傍にいたトワを呼んだ。
ナギ
「トワ! 悪いが、ヒロインを…」
そう言った瞬間、トワが驚いたように船内へと続く階段を見つめた。
トワ
「ヒロインちゃっ…!」
ナギ
「!?」
その声に振り返ると、泣きはらした目をしたチビヒロインがそこにいた。
ナギ
「お前部屋に…!!!」
思わず怒鳴りつけようかと思った矢先、リカー一味の船員がシンの銃弾を避けるように
チビヒロイン目掛けて、足をもつれさせながら倒れ込んできた。
トワ
「危ない!!!」
咄嗟に駆け寄ったトワに抱き寄せられたチビヒロイン。
リカーの船員はトワの上に倒れ込んだ。
ナギ
「ヒロイン! トワ!」
慌ててナギは駆け寄り、トワの上に乗った船員をどけると
トワを引き起こした。
ナギ
「大丈夫かトワ!?」
トワ
「…っ…はい…
ヒロインちゃん…大丈夫?」
トワの胸にスッポリと包まれていたヒロインは、傷ひとつ負っていなかった。
コクリと小さく頷くのを感じると
トワは安心したかのように、ホッと息をついた。
トワがゆっくり立ち上がり、抱き締めていたチビヒロインを離すと
怯えたようにギュッとセーターの裾を掴み、ナギから目を逸らしていた。
ナギ
「…ヒロイン、何で部屋にいなかった…」
チビヒロイン
「………」
ナギ
「約束したよな? 部屋にいろって」
ナギのただならぬ空気に、トワは慌てて間に入った。
トワ
「ナ、ナギさん! そんなに怒らなくても…」
ナギ
「お前は黙ってろ! ちゃんと聞こえてるだろ?ヒロイン!」
その声にまたしてもビクッと肩を上げ、
しかめっ面でナギを見つめた。
こんな怖い顔のナギ、見たことがない。
怖くて、悪いことをしてしまい
もうナギには嫌われてしまったと、小さなヒロインはどうしていいか分からず泣き出してしまった。
チビヒロイン
「なぎにぃちゃ…ヒッ…こわい…ワァ~~ン」
ナギ
「!?」
その騒ぎに、今の今まで争っていた大人たちは
何事かとピタリと手を止めた。
ナギ
「ヒロイン…!」
チビヒロイン
「いやぁ~~!」
あまりにも泣きじゃくるチビヒロインを宥めようと手を伸ばしたが
怯えたようにスルリと避けて、初対面のファジーの元へと走って行った。
ナギはものすごくショックを受けた。
ファジー
「なんだってシリウスに子供がいるんだい?」
ロイ
「さっきの子供か…」
ロイもファジーも全く理解出来ず、佇んでいると
優しい声でソウシが話しかけた。
ソウシ
「こっちにおいで?」
チビヒロイン
「いやぁあ! こわいこわい~」
こうなるとソウシでもダメなようだ。
リュウガ
「オラヒロイン!
もぅ怖いことねぇから、こっちに来い」
チビヒロイン
「いやぁ!!」
ロイ&ファジー
「「ヒロイン?」」
ピクリと反応した2人を見て、リュウガはしまったと顔をしかめた。
ロイ
「今、ヒロインと言ったのかリュウガ…」
リュウガ
「…いや…その…なんだ…」
ファジー
「そういや今日はヒロインを見かけないね…」
ロイとファジーは顔を見合わせ、足にしがみつく子供を見つめた。
シン
「…結局バレちゃうなら、変に隠さなきゃ良かったな?
どっかの誰かさんが、しっかり躾してないから
こうなるんだ …フン」
シンの言葉を腹立たしく思うが、あまりにも的を得ていて
言い訳もできない。
ロイ
「…ちょっと待て!
本当にヒロインなのか!?」
ソウシ
「…本当だよ…
高熱を抑える薬の副作用で、昨日からこの姿になってる…」
信じられないとでもいう様な表情をしているロイとファジー。
しかし何となく面影もある。
ナギ
「…ヒロイン、もう怒んねぇからこっち来い」
チビヒロイン
「うぅ~~ヒッ…」
ファジーの足にしがみついたまま、必死に首を振る。
ファジー
「何だかよく分かんないけど、落ち着くまでこの子の面倒をリカー号で見るよ」
ナギ
「!? そんな事させる訳にはいかない」
ヒロインをこよなく愛しているロイの元に、子供になったとはいえヒロインを置いておく訳にはいかない。
それどころか、ロイの変態っぷりを考えると
子供のヒロインの方が好みかもしれない…。
ナギは何としてでも阻止しようとした。
ナギ
「ヒロイン、こっちに来い!」
そう言ってナギが一歩足を踏み出すと、今度はロイの足にしがみつき
大声で泣き出した。
ロイ
「…ますます嫌がってるぞ? バンダナ…
ここはひとまずリカー号で面倒を見よう。
船は横付けしておくから、心配ならいつでも見に来ればいい」
いつになく冷静に物事を決めていくロイ。
完全にグズリスイッチが入ってしまったチビヒロインはとても手に負えない。
ファジー
「安心しなよ!
アタイがちゃんと世話するから」
ソウシ
「…ナギ、少しの間お願いしたら?
今の状態だとヒロインちゃんも興奮しちゃってるし…」
何とも不本意だが、こうなってしまったのは自分のせいだ。
ナギは渋々頷いた。
ロイ
「そうかそうか!
任せろ! オレ様にかかれば泣き止まない女は1人もいない!!」
隠しきれない嬉しさの笑みが、今にもこぼれ出してしまいそうなロイ。
ナギは鋭く言い放った。
ナギ
「…そのニヤけたツラ…信用出来ねぇ…
ヒロインに何かしたら、ただじゃおかねぇからな…」
いつも以上の凄味を感じ、ロイは思わずキュッと顔を締め付けた。
ロイ
「あ、当たり前だろう!
いつものオレ様の行動を見れば分かるだろ!」
その言葉に、その場にいたメンバーは全員不安がよぎった。
『いつものオレ様の行動』
この場で殴り飛ばしてやろうかと、ナギのグッと拳を握りしめた。