糸
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部屋に入ったナギとチビヒロイン。
半分寝ているチビヒロインをパジャマに着替えさせ
何とか薬を飲ませると、チビヒロインはベッドへコテンと寝転んだ。
ナギ
「明日も熱なかったら、風呂入ろうな?」
チビヒロイン
「うん… ナギにぃちゃもねる?」
ナギ
「ん?」
チビヒロイン
「おきてもいる?」
ナギ
「!」
今朝起きて1人だったのが、よっぽど不安だったのだろう。
ナギは「ふっ」と微笑むと、チビヒロインの頭を優しく撫でた。
ナギ
「あぁ、どこにもいかない」
それを聞くと、安心したかのように
目を閉じ、すぐにスースーと小さな寝息が聞こえ始めた。
ナギ
「ふっ…よっぽど疲れてたんだな…」
あどけない寝顔を見ながら、ナギは大人のヒロインを思った。
熱が上がりだしてから、ヒロインは医務室で隔離状態になり
ここ数日一緒に寝ていなかった。
やっと一緒に寝れるというのに、子供のヒロインだなんて
何だか複雑な心境だ。
ナギ
「…ヒロイン…いつ戻ってくんだよ…」
可愛い寝顔に、そう問い掛けても
何も返ってくるはずもない。
ナギは重いタメ息をついた。
明日はどうかヒロインに会えるようにと願う事しかできなかった…。
==============
翌朝。
ナギは微かに感じる体への重みで目が覚めた。
ナギ
「ん…??」
ゆっくり目を開けると、満面の笑みを浮かべたチビヒロインがそこにいた。
チビヒロイン
「なぎにぃちゃおはよー!!
あさだよ! おきておきて!」
ボスボスとオナカの上に馬乗りになって飛び跳ねる。
ナギ
「う…わ、分かったから…
そんなに…跳んな!」
やっとの事でチビヒロインをどけると、ナギは体を起こした。
そしてチビヒロインを見つめた。
(…元に戻ってねぇのか…)
チビヒロイン
「なぎにぃちゃ! おふろはいっていーい?」
ナギ
「ん? 風呂?
あぁ、熱はどうだ?」
ナギはチビヒロインを抱き寄せて、コツッとオデコをくっつけた。
ナギ
「…大丈夫そうだな。
じゃあ風呂入れてやるから、ちょっと待ってろ」
チビヒロイン
「うん!」
嬉しそうな笑顔を見て、ナギも優しく微笑んだ。
小さくても風呂好きは変らない。
大人のヒロインは風呂が大好きで、陸地で宿泊すると
決まって一日何回も入ろうとする。
それに、ここ数日熱にうなされていた為
風呂には入らず、温かくしたタオルで体を拭いたくらいだった。
バスタブに湯を溜めていると、さっきいた部屋から
ガラ~ンと何かが床に落ちる音がした。
ナギ
「!!?」
慌ててチビヒロインの元へと駆け寄るナギ。
ナギ
「ヒロイン?! 大丈夫か?」
するとベッドの横の床に、たくさんのオモチャが散らばっていた。
チビヒロイン
「…おもちゃ…おふろであそぶやつ…」
ナギ
「風呂で遊ぶのを出したかったのか?」
ションボリと頷くチビヒロイン。
机の上に置いてあった紙袋を下から引っ張ったのだろう。
ナギ
「背が届かないなら取ってやるから…
欲しいのあったのか?」
そう言うと、チビヒロインはネットに入った
オモチャを手に取った。
ナギ
「? 何だそれ?」
チビヒロイン
「ここからおみずでるの」
水鉄砲だ。
しかし普通はアヒルとかイルカとかのような物なのに
チビヒロインの手に持っているのは見た事もないような生き物のオモチャだ。
ナギ
「…それなんだ?」
チビヒロイン
「はやてにぃちゃがかってくれたの…」
見れば見るほど不気味で、とても子供に買い与えるようなモノではない。
ナギはチビヒロインから水鉄砲のネットを受け取ると
ネットについているラベルを見た。
そこには『世界のモンスター』と書かれていた。
ネットの中には小さな水鉄砲が4個入っており
一個ずつキャラクターが違う。
ラベルには、イエティ・クラーケン・ドラキュラ・オオカミ男と書かれている。
こんなものを買い与えるハヤテのセンスを疑う。
チビヒロイン
「なぎにぃちゃ…あそんじゃだめ…?」
不安そうに見上げてくるチビヒロイン。
ナギはポンッと頭に手を置いた。
ナギ
「…いや… でも今度はもっと可愛いのを買ってもらえ」
チビヒロイン
「? これもかわいいもん!」
そう言ってイエティを掲げる。
子供はこうして色んな事を覚えていく。
こんなに小さくて可愛いチビヒロインが
かなり不恰好なイエティを可愛いと言い出した。
後でハヤテには、キツく注意をしなくては…。
ナギはそう心に決めた。
数分してバスタブに湯が溜まり、
ナギとチビヒロインは一緒に風呂に入った。
ナギ
「…! お前ぇ…」
チビヒロイン
「きゃは~♪」
何度も何度も、あの忌々しい水鉄砲でお湯を掛けてくる。
ナギ
「お前ズルイぞ? オレにもそれよこせよ」
チビヒロイン
「いやぁ!」
バスタブに浮かんだ水鉄砲を抱きしめるチビヒロイン。
ナギがぎゅうっと抱きしめると、嬉しそうにきゃっきゃっと笑う。
以前小さくなった時は、リュウガと風呂に入っている最中に元に戻った。
もしかしたらと期待をしていたが、とてもそんな雰囲気ではない。
今回は、そう簡単には元に戻らないのだろうか…。
ぼんやりと考えていると、ピュッと顔に水を掛けられた。
ナギ
「!!!」
チビヒロイン
「きゃははっ! くらーけんだぞ~~!」
ナギ
「………」
(ハヤテ…覚えてろよ…)
・・・・・・・・・・・・・・
シリウス号が港を出発したのは、それから数時間経ってからだった。
次の目的地に向かう途中の寄り道だったので
そう長くも滞在出来ないと
渋るリュウガを説得し、シンは船を動かした。
リュウガはもう少し長く滞在して、チビヒロインに色々な物を見せたかった。
リュウガ
「ったくシンは融通が利かねぇんだからよ…」
ソウシ
「ふふっだから舵取りを任せられるんですよ」
リュウガとソウシは船長室にいた。
ヒロインの容態と、今後の針路や予定などを話し合おうとしていた。
すると勢いよくドアが開いた。
リュウガ&ソウシ
「「!?」」
チビヒロイン
「せんちょ! あそぼっあそぼっ♪」
とびきりの笑顔で飛び込んできたのは、チビヒロインだった。
昨日リュウガが買ってあげたリュウガとお揃いの三角帽をかぶっている。
ソウシ
「ふふっ可愛いね?
小さい海賊さんかな?」
チビヒロイン
「うん! ヒロイン、かいぞくおー!」
昨日リュウガに何度も聞かされた言葉だ。
ソウシ
「あははっ強そうだね!
でもごめんね? 今大事な話…」
リュウガ
「いよぉし! ヒロイン!!
碇を上げろ~南に舵を取れ~面舵いっぱ~い!」
椅子に深く腰掛けていたリュウガが突然起き上がり
机に片足を掛けたかと思うと、迫真の演技を披露した。
ソウシ
「あの…船長…」
チビヒロイン
「あいあいさー!」
自分を海賊王と名乗ったのに、指図をされている事に分かっていないチビヒロイン。
いつの間に覚えたんだと聞きたくなる。
こんな姿ナギが見たら怒るんじゃないかと、ソウシは苦笑いをした。
リュウガ
「ヒロイン、3時の方向に敵船発見だ!
大きく舵を切れ~~!!」
チビヒロイン
「きゃ~~~あいあいさ~!」
立ち上がったリュウガはチビヒロインを肩車して
廊下へと飛び出していった。
ソウシ
「あんまり無茶しないでくださいよ!
まったく…ふっ」
あんなに小さな子供の相手をしている本物の海賊王。
あのリュウガを目指し海に出た男が巨万といるというのに…
ソウシは可笑しくて、リュウガとチビヒロインの姿を微笑ましく見送った。