糸
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シン
「ヒロイン、お前いつまでもそんな態度とってるという事は
ナギの作ったフレンチトースト、食わないんだな?」
意地の悪いシンの言葉にピクリと小さな肩が上がった。
シン
「美味そうだな…
まぁヒロインが食わないんだったら、オレが食ってもいいよな?」
すると、あれだけ頑なにしがみついていたナギの肩から
パッと顔が上がった。
チビヒロイン
「たべる!!!」
メンバー
「「!!?」」
驚くメンバーをよそに、シンは勝ち誇った様な笑みを浮かべて言う。
シン
「だったら、さっさと席に座って食え」
チビヒロイン
「うん」
ナギの腕から降りたそうに、モソモソと動き出す。
ナギ
「降りるのか?」
ヒロイン
「うん! なぎにぃちゃのフレンチトーストたべる!」
まだ泣いた名残がある顔で、ワクワクしながらテーブルの上を覗いてる。
ナギはそんな天の邪鬼な態度に、「はぁ…」とタメ息をつきながら
そっとチビヒロインを降ろした。
するとチビヒロインは、メンバーの前をトトトッと走り
シンの座る席へと向かう。
ソウシ
「ふふっ、ナギの料理はスゴイ威力だね?」
リュウガ
「ホントだな!
それに、シンのガキの扱いの上手さも驚きだな?」
ナギも同じ意見だった。
以前ヒロインが小さくなった時も
一番気に掛けて、しかもヒロインが喜ぶものを与えていたのはシンだった。
胸に沸いてくる、何だか分からないモヤモヤした感情。
シンの元に辿り着いたチビヒロインは
シンに向かって両手を広げた。
シン
「…なんだ?
抱き上げて欲しいのか?」
チビヒロイン
「うん」
ナギ
「!?」
シン
「…ふっ、よし」
ナギの反応を面白がるような笑みを浮かべ
シンはチビヒロインを抱き上げた。
ナギ
「チッ…」
ナギは何とも面白くない表情を浮かべ
料理を取りに厨房へと戻った。
ハヤテ
「なんだ?
ナギ兄、何機嫌悪くしてんだ?」
ソウシ
「クスクス、子供になってもナギのヤキモチ妬きは変わらないね」
トワ
「でも良かったです!
ヒロインさんの機嫌が直って!」
シンの膝に座り、フレンチトーストをキラキラした目で眺めているチビヒロインを見つめ
トワはニッコリ微笑んだ。
リュウガ
「オイヒロイン!
オレの事覚えてるか?」
チビヒロイン
「うん! せんちょ!」
その可愛い笑顔と、まだ「船長」としっかり言えない幼さにまた会えて
リュウガは顔が緩んだ。
リュウガ
「がははっ! いい子だ!
今日は昼頃港に着くからな?
お前の欲しいモノ買ってやる!」
チビヒロイン
「ほんと?」
リュウガ
「あぁ本当だ!」
ソウシ
「ふふっ船長は、小さいヒロインちゃんに弱いですね?」
シン
「小さいヒロインだけじゃないだろ?」
ハヤテ
「そうだよ! 船長はいつだってヒロインに甘いもんな」
リュウガ
「そんなことねぇぞ? な?ヒロイン?」
グリグリ~とチビヒロインの頭を撫でるリュウガ。
すると料理を運んできたナギが、シンの膝の上に座っているチビヒロインを見つけた。
ナギ
「…ヒロイン、お前の席はこっちだ」
何だか様子の違うナギに、子供ながらにも不安げな表情を浮かべるヒロイン。
シン
「どこで食ってもいいだろ?
それとも、お前の横じゃなきゃいけないのか? クククッ」
ナギ
「!」
シンの挑発的な言い方に、カチンときたナギ。
それを見たチビヒロインは、オロオロしていた。
ソウシ
「ほら2人共!
ヒロインちゃんが困ってるよ?
じゃあこっちおいで?
私が食べさせてあげる」
そう言ってシンの膝からヒロインを抱き上げるソウシ。
ナギ
「…ドクター…」
ソウシ
「あははっこの作戦、ダメだったかぁ…
でも可愛いなぁ!
私の事覚えてる?」
腕に抱かれたチビヒロインは、
ソウシと顔を合わせながら言う。
チビヒロイン
「そうしにぃちゃ! しんにぃちゃに、はやてにぃちゃ!」
ひとりひとり指をさしながら、名前を言っていく。
トワ
「!? あれ?僕は??」
慌ててトワが声を上げる。
チビヒロイン
「とあにぃちゃ! ぎゅ~~ってしてくれる、とあにぃちゃ!!」
一番嬉しそうな笑顔を見せてそう言われ、
トワは嬉しくて、溶けてしまいそうだった。
トワ
「うん!! 僕がぎゅ~ってするの覚えてくれてたの?
嬉しい♪」
その嬉しいそうなトワを見て、チビヒロインもまた
ソウシの腕の中で「キャ~」と言いながら笑ってソウシの胸に顔を埋めた。
ソウシ
「ふふっ可愛いなぁ~
恥ずかしかったの?」
チビヒロイン
「はずかしかったの! きゃはっ」
ギュッと抱き付くヒロインに、その場にいる誰もが可愛さのあまりキュンと胸が締め付けられた。
ナギ
「…早く飯食わないと冷めるだろ?
ヒロイン、早く座れ」
チビヒロイン
「はぁい」
その甘い空気を壊すかのようなナギの言葉に、ヒロインの顔は一気にションボリとした。
ハヤテ
「ナギ兄はさっきから何怒ってんだよ?
ヒロインがビビってんぞ?」
ソウシとナギの間に座っているヒロインを心配そうに見つめるハヤテ。
ナギ
「…別に怒ってねぇ…
気に食わないなら食わなくていい」
ハヤテ
「!? べ、別に気に食わないとかじゃねぇよ…」
ナギ
「だったら黙って食え」
明らかに一人だけ面白くないというオーラが全開だ。
ソウシ
「大丈夫だよヒロインちゃん。
フレンチトーストにメープルシロップかける?」
チビヒロイン
「うん♡」
ソウシが気を利かせて尋ねると、チビヒロインもまた嬉しそうに答えた。
そしてソウシがたっぷりと掛けるシロップをキラキラした目で見つめた。
リュウガ
「ナギ、少し落ち着け!
さっきから顔が怖いぞ?」
ナギ
「…いつもと同じです。」
誰もが「全然違う」と突っ込みたい所だった。
ナギ自身だって分かっている。
こんなに苛立ってしまう原因が…。
大人のヒロインだったら、メンバーの皆もこんな風には接しないのに
子供になった途端、当たり前のように抱き上げたり
頭を撫でたりする。
ヒロインだけど、でも子供で…
なかなか割り切れない感情に、ナギはいつも戸惑ってしまう。
それに今回も前の時と同じように、いつ戻るのか分からない。
そういう不安もある。
だから他のメンバーのように、手放しに喜べない。
子供のヒロインは、また会いたくなるくらい可愛い。
だからこうなった時、正直少しだけ嬉しかった。
でもこうまで全員に愛されてしまうと、何だか自分だけのモノではなくなったようで不安になる。
前回と違うのは、もう皆を知っているから
自分にあれだけ甘えていたのに、機嫌が直った途端に
ナギの手から簡単にも抜け出してしまった。
隣で無邪気にフレンチトーストを頬張っている姿は
何とも嬉しいモノだが、その分複雑だった。
リュウガ
「どうだヒロイン! 美味いか?」
チビヒロイン
「うん! すっごくすっごくおいしい♡」
ニッコリ微笑んで見上げてくるチビヒロイン。
あれだけ難しい感情が渦巻いていたのに
ナギの胸の中のモヤモヤはパンッと弾けた。
ナギ
「ふっ、あんまり慌てて食うな?
まだたくさんあるから…」
チビヒロイン
「うん!!」
ナギはチビヒロインの頬についたシロップを指でふき取りペロッと舐めた。