糸
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シリウスメンバーが寝静まった深夜。
ナギとソウシは医務室にいた。
ソウシ
「…どうする? ナギ…」
ナギ
「………」
ソウシ
「…このままだと、もう…」
ナギ
「……お願いします…」
ソウシ
「…うん、分かった」
・・・・・・・・・・・・・・
その日の明け方。
自分の部屋で寝ていたナギは、静かにドアが開くのを感じた。
ナギ
「ん…? ヒロインか?
…どうだ、体調は…」
無言でモソッとベッドの中に潜り込んでくる。
そして、そっと抱き寄せた。
ナギ
「っ!」
その感触ですぐに分かった…。
しかし眠たそうに、すぐに目を閉じたヒロインを見て
ナギは優しく抱きしめ、そのまま起きる時間まで一緒に眠る事にした。
・・・・・・・・・・・・
陽が昇り、朝食の時間となった。
いつもと同じように、仕上がった料理を食堂のテーブルに出していると
一番乗りにソウシがやってきた。
ソウシ
「おはようナギ、ヒロインちゃんどう?
医務室にいなかったようなんだけど…」
心配そうに話しかけてくる。
ナギは何も答えず、視線を逸らした。
ソウシはそれだけで分かったようだ。
ソウシ
「!? えっ…」
慌ててナギに詰め寄ろうとすると、食堂のドアが勢いよく開き
ハヤテとトワ、そしてその後ろからシンが入ってきた。
ハヤテ
「おはよ! 腹減った~!
今日朝ごはん何?!」
シン
「チッ…朝っぱらから声がデケぇんだよ!
バカザルがっ!」
不機嫌な表情を浮かべながら席に着くシン。
ハヤテ
「あ? お前こそそのいちいち嫌味な言い方どうにかしろよ?
朝っぱらからムカつくんだよ!」
こんな早朝から、ケンカのゴングが鳴った2人は
今にも掴みかかりそうな勢いで、お互いを睨みつけている。
トワ
「お、落ち着いてください!
ヒロインさん、まだ寝てるんですよ?
そんな大きな声出したら起きちゃいます!」
その言葉に、2人とも納得しないような表情を浮かべながらも
気持ちを静めた。
トワ
「…ヒロインさん…まだ良くならないんですか?」
さっきのソウシと同じように、トワもまた心配そうな顔をしている。
いつもだったら食事の準備を手伝っているのに
もう何日も姿を見ていない。
ソウシ
「…あ…それが…」
シン
「フン、弱いヤツめ…
お陰で陸地の病院に寄るようになった」
目的地を大幅にズレて、一番近い港へ急遽寄る事になった。
ハヤテ
「大丈夫なのかよ?
ソウシさんが見てるから心配はないと思うけど…」
そんな話を食堂に集まったメンバーでしていると
突然どこからか大きな声で泣く、泣き声が聞こえた。
ハヤテ
「!!!?
な、何だ?!」
トワ
「この船からですよね?」
聞こえるはずのない声に、動揺するハヤテとトワ。
ナギ
「…起きたな…」
ナギは手に持っていた皿をテーブルに置くと、
食堂を出て行った。
・・・・・・・・・・・・・・・
それから数分後…。
ナギの帰りを心待ちにしているハヤテとトワ。
ハヤテ
「あの声なんだったんだ?
なぁソウシさん何か知ってんスか?」
今この場にいて冷静なのは、ソウシとシンだけだ。
ソウシ
「…ナギが戻ってくれば分かると思うよ…」
シン
「…また面倒な事になりそうですね…」
何も知るはずのないシンが、冷たくそう言った。
そしてギィッと食堂のドアが開き、ナギが入って来ると
その姿にハヤテもトワも驚いた。
ハヤテ
「ナ、ナギ兄!! 誰だよそれっ!!!」
トワ
「!!!!」
ナギの腕に抱き上げられた小さな子。
ダボダボの洋服を着て、ナギの首に手を回し
力強くギュッと抱き付いている。
ナギ
「…ヒロインだ…」
ハヤテ
「!! はぁ!?
何でまた小さくなってるんだよ!?」
トワ
「風邪のせいでこうなっちゃったんですか??」
ナギもソウシも質問攻めにあい、落ち着いて話を聞いてくれなさそうなハヤテとトワを
少し困った顔で見つめた。
するとシンは「はぁ…」とタメ息をついた。
シン
「…またククススの実を食ったのか?」
ハヤテ&トワ
「えっ!?」
ククススの実とは、以前ヒロインが
立ち寄った港で、怪しげな男から買った実だ。
ヒロイン自身は、肌荒れを治す為に購入したのだが
ククススの実には、若返りの効果もあって
どういう訳か、その時ヒロインは今のように
2、3才の子供になってしまったのだ。
ナギ
「…いや、食ってない…ただ…」
ソウシ
「…薬をね…」
シン
「薬?」
ソウシ
「こんなに高熱が続いて、しかも陸地まで時間も掛かる…
本当は禁じ手なんだけど、ナギと相談して強い薬を調合したんだ」
シン
「…なるほど…そういう事か…」
ハヤテ
「??? 何で強い薬飲むと、子供になるんだよ!?」
シン
「チッ、鈍いヤツめ…
薬の副作用に決まってるだろ」
トワ
「副作用ですか!?」
ソウシ
「…うん…一度ククススの実を食べた事があると
強く副作用が出ちゃう事もあるんだ…
でも、熱はどう?」
そう言って、ソウシはナギの方へと歩き出す。
ナギ
「大分下がったみたいです。
ヒロイン、もぅダルくないだろ?」
ナギの肩に顔を埋めたまましがみついているチビヒロイン。
ナギがそう問いかけても、答えはしない。
ナギ
「ほら、お前の知ってるヤツらだぞ?
顔上げて見てみろ」
サラサラの髪を撫でたが、チビヒロインは
さらにギュッとナギにしがみつき、首を振った。
ナギ
「ハヤテやトワもいるぞ?」
ソウシ
「ね、ヒロインちゃん?
私にお熱計らせてくれないかな?
それにヒロインちゃんの可愛いお顔も見てみたいんだけど…」
それでもナギの肩から顔上げず、スンッという鼻をすする音がしたが
相変わらずしがみついたままだ。
誰もが子供の扱いに慣れていない上に、ここまで機嫌を損ねた子供をあやすなんてできっこない。
どうしたものかと困り果てていると、突然食堂のドアが開き
眠たそうにアクビをしながらリュウガが入ってきた。
リュウガ
「朝っぱらから、派手な声が聞こえたが一体…っ!」
ナギが抱き抱えている、ダボダボの洋服を着た子供を見て
リュウガは驚いて目を見開いた。
リュウガ
「ナギ…まさかそれ…」
ナギ
「…ヒロインです」
リュウガが現れても、ヒロインは何ら変わらない。
リュウガ
「まぁた小さくなっちまったのか?!
体調はどうなったんだ?」
ソウシ
「昨日いつもより強い薬を飲ませたので落ち着いたみたいです。
…ただ、この調子で…
まだ顔すら見れてない状態です…」
困った笑みを浮かべながらソウシが言う。
どうしてまた子供になってしまっているかは聞かなかったが
そんな事よりも、また小さくなったヒロインを抱きたくてリュウガは手を伸ばした。
リュウガ
「どれ! ヒロイン!
船長だぞ? こっちきてみろっ!」
ナギに抱きついているチビヒロインの脇の下に手を入れて
抱き上げようとした。
…が、
チビヒロイン
「やぁっ!!」
ナギごと引っ張られてしまうのではと思うくらい
ヒロインは必死にナギにしがみついた。
ソウシ
「船長! 逆効果ですよ!」
リュウガ
「んぅ? なんだよ…今日は機嫌悪りぃな…」
何気にものすごくショックを受けたリュウガ。
前はあんなにも懐いていたのに…
ナギ
「朝起きた時、1人だったから機嫌悪いんです…」
ハヤテ
「どーすんだよ?
さっきから、ずっとそのまんまじゃん?」
トワ
「ヒロインちゃーん?
ほら、美味しいゴハンがあるよ?
………ダメですね…」
どんなに声を掛けても反応しない。
頑固な所は、大人のヒロインといい勝負だ。
すると、今まで黙っていたシンが口を開いた。
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