cure
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甲板に着くと、メンバー全員に睨まれた。
ヒロイン
「あの…」
ソウシ
「ここにいたんだね」
ハヤテ
「お前ふざけんなよ!?
昨日の今日で、走らせんなよ!」
トワ
「とにかく良かったです!
ホント、船長に何かされる前に見つかってよかったです!」
ヒロイン
「!?
もしかして捜してくれてたんですか?」
メンバー全員の顔を見ると、皆額に汗が浮かんでる。
そんなにも必死で捜してくれたなんて…。
ヒロイン
「あのっ本当にすみません!!
私…私…」
深く頭を下げた。
昨日の事も謝りたいが、ナギのいる前で
そんな話をする事は出来ない。
するとリュウガがナギに話し掛けた。
リュウガ
「そうだ!
ナギ、お前厨房やりっ放しだったぞ?
宴の時間が無くなる、お前は準備の続きをしろ!」
ナギ
「……はい…」
少し納得してないような顔を見せたが、ナギは船内へと向かった。
その背中を見届けると、ヒロインはもう一度お辞儀をした。
ヒロイン
「皆さん、すみませんでした。
昨日の事…自分の気持ちでいっぱいいっぱいで
皆さんを危険な目に合わせておきながら、当たり前のように助けてもらって…」
「やはり…」と落ち込んでいた理由が何となく分かっていたソウシとシン。
そして驚くハヤテとトワ。
ハヤテ
「お前、そんな事で落ち込んでたのか?」
ヒロイン
「…はい…」
ハヤテ
「バッカじゃねぇの?!
昨日の事なんて、いつもの事と変わんねぇだろ?
お前のせいじゃねぇし…」
ヒロイン
「でも!
…私がひとりで乗り込むって、聞き分けなく言ったから…
ナギを助けたいって気持ちばかりで…
皆さんが怪我をしたり、嫌な目に会うかもなんて考えなくて…」
ヒロインの優しさが温かくて
メンバー全員が、今までに感じた事のないような気持ちを抱いた。
ナギはいつもこういう気持ちでいるのか…。
いや、ナギへの想いは桁違いだろうが
こんなにも心配して、大切に思ってくれる人がいるというのは
何とも愛おしい気持ちになる。
目の前で泣き出しそうに反省しているヒロインが
可愛くて、思わず抱きしめたくなる。
誰もがそう思った。
ヒロイン
「…本当にごめんなさい…」
ソウシ
「…ふっ…ヒロインちゃん、顔上げて?」
シン
「やっぱりお前はくだらない感情に流されるな?」
ヒロイン
「…え?」
トワ
「そう思ってくれるのは、スッゴク嬉しいです!
でも僕たち仲間ですよ?
そんな気遣い無用です!!」
ハヤテ
「誰かが無茶しても、他のメンバーが全力で助けるっつーの!」
ヒロイン
「…皆さん…」
さっきマストの所でリュウガが話してきた事と一緒だった。
皆しっかりリュウガの意志を理解している。
そう思うと、胸がいっぱいになり
ヒロインはニッコリと微笑んだ。
ヒロイン
「ありがとうございます!
私…海賊としてまだまだですけど、皆さんのお役に立てるよう頑張ります!!
…なので、これからもお願いします!」
そう言い切った顔が、なんとも可愛くて
胸がキュンと締めつけられた。
リュウガ
「オイヒロイン、いいのか?
お前の大切なナギは、全然納得してねぇ顔して厨房行ったぞ?
あのままだと、宴の料理が心配なんだが…」
意味深な笑みを浮かべながらそう言うと
リュウガはアゴで『行け』と合図した。
ヒロイン
「はい! 行ってきます!」
ヒロインはもう一度メンバーにお辞儀をして
ナギのいる厨房を目指した。
ソウシ
「…はぁ…結局はナギのモノなんだよね…ふふっ」
トワ
「でも何かスッゴイ嬉しいですね!
僕たちの事もナギさんのように思ってくれてるなんて!」
シン
「チッ…ガキが…」
皆が嬉しそうな表情を浮かべ、そう話している横で
いつもだったら調子良く乗ってきそうなハヤテが黙り込んでいた。
リュウガ
「ん? ハヤテどうした?」
腕組みをしていたリュウガは、ハヤテを覗き込んだ。
するとハヤテは、真っ赤な顔をしていた。
ハヤテ
「!! ど、どうもしねぇッスよ!
トワ、宴の準備再開するぞ!」
トワ
「はっはい!」
トワを引きずるように連れて、ハヤテは甲板を後にする。
残ったメンバーは呆れたように笑った。
シン
「…ガキにも程があるな…」
ソウシ
「ふふっ嬉しかったんだね~!
全く素直じゃないんだから…クスクス」
誰かにそう思ってもらうのが照れ臭いハヤテを思うと
その青臭い感情が羨ましくも思う。
リュウガはヒロインのお陰で、前にも増して穏やかで
さらに強い絆で繋がったシリウスメンバーを心から嬉しく思った。
そして目を細めながら、ズンズンと歩いていくハヤテを見つめていると…
シン
「そういえば船長。
ナギに話しに行くのはヒロインだけじゃないんじゃないですか?」
リュウガ
「あ?」
ソウシ
「そうだね、このままだと船長
宴に参加できないと思いますよ?
…というか、船にすら居れないかも…」
リュウガ
「どういう事だ?」
シン
「誰を怒らせたと思ってるんです?
…ヒロインにアレだけちょっかい出して、当たり前のように参加出来ると思ってるんですか?」
リュウガ
「あっあれはだな!」
慌てて弁解をしようとするが、ソウシもシンも
何とも冷たい視線を投げかけてくる。
ソウシ
「…言い訳はナギに直接どうぞ…」
シン
「メシ抜きか、鎖鎌の餌食か…
見物ですね? クククッ」
リュウガ
「!!?」
そう言ってリュウガをひとり甲板に残し去っていくソウシとシン。
リュウガはその光景を想像し、ブルッと身震いがした。
リュウガ
「オ、オイ!
ソウシとシン!! 頼む援護してくれ~!!」
慌てて2人の後を追いかけるも、何とも冷たい背中を向けている。
リュウガ
「仲間想いのシリウス海賊団はどこにいったんだぁぁ~~!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・
ヒロイン
「…ナギ…入ってい?」
厨房のドアから顔だけ出し、ナギにお伺いを立てるヒロイン。
ナギ
「………」
ナギからの返事はないが、ヒロインはドアを開け
厨房へと入った。
きっとナギは全てを知っている…。
ヒロインはそう思った。
人の感情に誰よりも敏感なナギ。
朝別れてから、初めて顔を合わせたが
きっと分かっているだろう。
背中を向け、料理に集中しているフリを貫くナギ。
ヒロインはそっと近づき、後ろからギュッとナギを抱きしめた。
ナギ
「…やめろ…料理が作れない…」
ヒロイン
「…うん…」
嫌がるのは分かっていた。
それでもヒロインは離れなかった。
ヒロイン
「…ナギ…?
ナギの事だから、きっと全部分かってると思うから…」
そう言うと、ガンッと勢いよくステンレス性のボールを調理台へと叩き置いた。
ナギ
「…どうして…
どうしてお前が落ち込む必要がある!!
オレの事だろ!?
オレのせいでお前まで…」
やはりそう思わせてしまったかと、声を荒げるナギに
さらにギュッと抱きついた。
ヒロイン
「ごめんなさい!
…本当に…ごめんなさい…
私ずっとナギを過去から救いたくて、ひとりで背負いこまないでって
いつもいつも言ってた…。
でも…でもね? 初めて分かったの…
自分のせいで仲間を巻き込む怖さを…」
ナギ
「…だから、お前のせいじゃ…」
ヒロイン
「んーん、誰のせいとかじゃなくて…
ナギがどうして過去から私たちを遠ざけて、ひとりで解決しようとしていたか…」
ナギ
「!?」
ヒロイン
「…私…ナギの事だけ考えてた…
だけどそうじゃなかった…
ナギは私もそうだけど、シリウスの皆をちゃんと大事に思ってる。
昨日、ナギを過去から助けられたとしても
もし誰かがやられたりしてたら…
そんな事考えもしなかったの…」
ナギ
「ヒロイン…」
オナカに回る手にギュッと力が入る。
ヒロイン
「ナギがいつも私達を巻き込まないようにしていたのは
守る為だったんだね…。
なのに私… 今もこうしてナギにツライ思いさせてる…」
ナギはこんなにも不安でツライ気持ちを
いつも胸の中にしまっていた。
他のメンバーが、どんなに気にしないよう言っても
それでも頑なに自己解決をしてきた理由がハッキリ分かった。
ヒロイン
「…でも、昨日言った事は本当!
ナギはもうひとりじゃないし、色んな事を一緒に感じていきたい!
だけど、やっぱり守ってもらうだけは嫌。
これからも無茶しちゃうかもだけど…それでもナギといたい。
シリウスの皆と一緒に旅したい。
…自分勝手だけど… ナギ…呆れた?」
オナカに回した手を少し緩め、ヒロインはナギの背中から顔を離し、見上げた。
すると、ゆっくりとナギが振り返った。
ヒロイン
「!」
ナギはなんとも複雑な顔をしていた。
ナギ
「…オレにあんな過去がなければ、お前はこんな思いしなくて良かった…。
昨日のような怖い思いも、メンバーを傷つけるかもって思う事も…」
ヒロイン
「ナギ、それはっ!」
ナギ
「だから…だから怖いんだ。
大切なモノが、自分のせいで傷つく事が…」
やはり身勝手な想いと思われてしまったのだろうか…。
ヒロインも不安げにナギを見つめた。
ナギ
「…お前は…そんな事知らなくて良かったのに…」
ナギは申し訳なさそうに目を逸らす。
ヒロイン
「…よくないよ…」
ナギ
「…?…」
思いもよらない強い声に、ナギは目を見開いた。
ヒロイン
「全然良くないよ!
ナギがどれだけの気持ちでいたかも、メンバーの皆が
どれだけの想いで戦って、仲間でいるのかも
私は今日までちゃんと分かっていなかった!
ナギと一緒にいたいって思っているのに、私は分かったフリをしてた…」
そして決意したかのような、あの強い眼差しでナギを見つめた。
ヒロイン
「もう落ち込んだり、弱音は吐かない!
誰もこんな気持ちを持たないように
私の出来る精一杯で、皆を支える!!
…だから、ナギも今日の事…気にしないで欲しいの…
また勝手だけど…やっぱり一緒に前を見て歩きたいから…」
段々と語尾が弱くなり、見つめてくる瞳には薄っすらと涙が浮かぶ。
ヒロイン
「…あれ? …おかしいな…」
ナギ
「ヒロイン…」
ナギが今まで心の奥に閉じ込めていた想いが分かった今、
なんだかとても切ない気持ちになった。
どうしてもっと早く分かってあげられなかったのかと…。
ポロッとこぼれた涙を、ナギの指が拭ってくれる。
ナギ
「…泣くなって…」
ヒロイン
「…ヒッ…うん…泣かない…」
しかし涙は後から後からこぼれてくる。
やっぱり大好きだと、ナギの大きな手が頬に触れ
改めてそう思った。
ナギ
「…オレの前では強がんなくていい…
どんなお前でも、オレは一緒にいたい」
ヒロイン
「ナギ…」
ナギ
「オレも昨日で過去は消えた。
まだこれからも過去が追いかけてくるかもしれないが
お前といれば平気だって昨日ハッキリ分かった。」
驚いたように、潤んだ瞳を大きくしてナギを見つめるヒロイン。
ナギ
「…何だ…?」
ヒロイン
「あ…グズ…ナギがそう言ってくれるなんて…
意外というか…」
言葉でそう言ってくれるなんて、思いもしなかった。
ナギ
「…じゃあもう言うのはやめる…」
ヒロイン
「!!! えっ!?
何で?!」
そう言うとトンッとオデコを人差し指で押された。
ナギ
「…そんなに驚かれると、これから言おうとしていた事聞いたら
お前倒れそうだから…」
ヒロイン
「!!!? 何!?
何それっ! 聞きたい聞きたい!
絶対倒れないから!!」
あまりにも必死に食いついてくるので、ナギは戸惑った。
そして意地悪く微笑んだ。
ナギ
「…お前が船長と取り交わした
いかがわしい約束をオレに話せたらな?」
ヒロイン
「!!? な、何でそれをっ!」
ナギ
「ふっ、山賊上がりの海賊をナメんなよ?」
そう言ってトントンと、耳を指で叩く。
ヒロイン
「べ、別にいかがわしくなんか…」
モジモジと気まずそうにしながら話すヒロイン。
ナギはいつもの空気に戻り、優しく微笑んだ。
ナギ
「…ヒロイン、料理手伝え」
ヒロイン
「えっ…う、うん…」
ナギの話が気になって仕方がないが
リュウガの話をする事も出来ない。
ヒロインはしょんぼりと手伝い始めた。
それを横目で見ていたナギは、「ふっ」と小さく笑った。
(可愛いやつ…)