fireworks
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ヒロイン
「ん~… スッゴイ花火の煙の匂いする~」
大量の花火をようやく終えたのは、23時を過ぎていた。
あれだけの量の煙を浴びていれば、そうだろう。
服にも煙の匂いが染みついてしまった。
ヒロインはナギと一緒に宿屋の部屋に戻ると
バスタブにお湯をはり始めた。
ナギ
「髪も煙の匂いがするぞ?」
ヒロイン
「!? やっぱり?
はぁ~…
あんなにたくさんの花火やったの初めて!」
ナギ
「ふっ…楽しかったか?」
ヒロイン
「うん! 大きい花火を一緒に見れたのも嬉しかったし
みんなでした花火も嬉しかった!」
その笑顔を見ると安心する。
ナギは堪らずにギュッとヒロインを抱き寄せた。
ヒロイン
「! ナギ?
私…煙臭いよ?」
ナギ
「…いい… それより…」
ヒロイン
「?」
ふと顔を上げると、ナギは羽織っていたジャケットを脱がせた。
ナギ
「…シンの匂いがする…」
ヒロイン
「!? ふっふふ…」
シンの香水が染み込んだジャケット。
確かに着ていても、ずっとシンの香りを感じていた。
ようやくジャケットを脱がすと、裂かれたシャツが露わになり
ナギの胸は痛んだ。
さっきようやくネガティブな思考が晴れたというのに…。
しかしナギは何も言わず、抱きしめる手に力を入れた。
ヒロイン
「…ナギ…」
ナギ
「…ん?」
ヒロイン
「…大好き…」
ナギの胸に深く顔を埋める。
こうしてまた抱きしめてもらえる事が嬉しくて
安心する。
ナギとこうしてるだけで、胸の中がキュッと締めつけられて
『好き』という言葉だけじゃ足りないくらい、愛しい感情が溢れてくる。
ナギ
「ふっ…またお前はぁ…
そうやってオレを挑発してんだろ?」
ヒロイン
「ち、違うよ!
…でも本当に…その…好きって思ったの…
ナギにこうされるとホッとする…」
気持ちよさそうに目を閉じているヒロインを見て
ナギもまた同じ気持ちになった。
腕の中にいる大切な子が、こんなにも嬉しい事を言ってくれる。
ナギはヒロインのアゴに手を掛けて、そっと上を向かせた。
ナギ
「ヒロイン…」
ヒロイン
「ナギ…」
見上げるヒロインの瞳が少し潤んでいて、
可愛くて体が熱くなった。
ゆっくり目を閉じるヒロイン。
ナギは唇を重ねた。
何度キスをしても、この痺れるような甘い感覚は慣れる事がない。
そのまま深いキスをしようかと思ったが、
ちゃんと話しをしなくてはと思った。
唇が離れると、ナギはヒロインの黒い瞳を覗き込んだ。
ナギ
「ヒロイン…風呂一緒に入ろう」
ヒロイン
「え…?」
ナギ
「…話しもしたいし…」
ヒロイン
「…うん…」
本当はスゴク恥ずかしいが、ヒロインもナギに話さなければと思っていた。
まさか風呂の中で話しをする事になるなんて…
ナギに手を引かれ、風呂場へと向かう。
緊張してドキドキと心臓が音を立てる。
ナギ
「…先入るから…」
ヒロイン
「あ…うん…」
そう言って目の前で、服を脱ぐナギ。
思わず目を逸らしてしまう。
ナギの気配が消え、バスタブに浸かる音が聞こえると
ヒロインも服を脱ぎ始めた。
なんだか手が震えてしまう。
裸になったヒロインは、脱衣所に置いてあった鏡で
全身を写した。
服を脱いで気がついたが、ナギに心配させてしうような跡がいっぱいだった。
手首には縄の跡があり、首筋にはナイフの切り傷。
覚えはないが腕と肩にもアザが出来ていた。
『一緒に風呂に入ろう』というナギの言葉には
もしかしたら、こういう真意があったのかもしれない。
でも隠しはしない。
これは自分で選んだ事だ。
ヒロインは「よし!」と気合を入れて
風呂場のドアを開けた。
ヒロイン
「ナギ…あの…恥ずかしいから目…閉じてて?」
ナギ
「! ふっ…分った…」
いつまで経ってもこの初々しい反応に、いつだってナギはやられてしまう。
薄っすら微笑みながら目を閉じていると、
チャポッとお湯に浸かる音が聞こえた。
ナギ
「…もういいのか?」
ヒロイン
「うん…」
ゆっくり目を開けると、目の前に恥ずかしそうに顔を赤く染めているヒロインがいた。
一緒に風呂に入るのは、もう何度もしているが
こんな反応をされると、理性が吹っ飛びそうだ。
しかしナギは、向かい合わせのヒロインに言った。
ナギ
「…ヒロイン…
お前…やっぱ怪我…アザも…」
ヒロインが思っていた通り、ナギにすぐバレてしまった。
ヒロイン
「うん… でも全然痛くないよ?」
ナギ
「…聞いていいか?
どうしてひとりで行った?」
するとヒロインは、少し俯いた。
ヒロイン
「…ナギが昨日の夜、呼ばれて部屋を出て行った時に
もう一人の男の人が部屋に忍び込んできたの…」
ナギ
「!? なっ何で言わなかった!?」
ナギは目を見開いた。
ヒロイン
「…言えなかった…
男の人にナギの大切なもの全部奪ってやるって…そう伝えろって言われて…
もしその話したら、ナギはひとりで行ってたでしょ?」
ナギ
「…あぁ…」
ヒロイン
「…だから…
もうナギひとりで、過去を背負って欲しくなかったから…
ナギ、昔の事になると私や皆を巻き込まないように
ひとりで何でもしちゃうから…
でも、やっぱり怖かったから
船長に話しに行ったの。 ソウシさんに薬もらうって部屋を出て行った時…」
ナギはようやく全てが繋がり、納得した。
しかしヒロインがそこまで考えていてくれたとは…
確かにヒロインが言うように、過去の事は誰も巻き込みたくないと思っている。
自分のせいでどれだけシリウスのメンバーが、海軍や追手に絡まれたか数えきれない。
ナギ
「そうか…」
ヒロイン
「ナギ…怒った?」
ナギ
「?」
ヒロイン
「…私…勝手に危ない事したから…」
ナギ
「怒ってねぇよ…
そうさせたのはオレだ…
オレのせいで…」
ヒロイン
「! ナギ!
『オレのせい』じゃないよ?」
必死な表情で訴えるヒロイン。
ナギは「何だ?」とばかりに、眉をしかめた。
ヒロイン
「ナギ…?
そんな風に思わないで?
『オレのせい』じゃなくて、ナギと一緒にいたいの…
だから、ナギをひとりにしたくない。
確かにナギにしか分らない過去だけど、私も一緒に共有したいよ…?」
ナギ
「ヒロイン…」
ヒロイン
「多分…シリウスの皆も一緒だよ?
皆ナギと一緒に船に乗りたいの…
だからこれからもナギの過去が襲ってきても、皆で戦おう?
ナギはひとりじゃないから…」
こんな言葉を言ってもらえるなんて、信じられなかった。
ヒロインは、か弱くて海の事も船の事も何も知らない
ただの女の子だと思っていたのに
いつの間にか本当に強くなっていた。
守ってやらなきゃと思っていたのに、
守られていつも元気をもらうのは、ナギの方だった。
ナギは優しく笑った。
ヒロインと一緒にいたい。
どんな過去があっても、受け入れてくれる
そんなヒロインを離したくないと…。
ナギ
「…ありがとな?
そんな風に言ってもらえるなんて思わなかった…。」
安心したような、とても安らいだ表情をしているナギを見て
ヒロインは確信した。
山賊達が言っていたナギの過去の話は、ウソだと…。
仮に本当だったとしても、あの頃のナギはもうここにはいない。
ヒロイン
「ナギ、知ってる?
花火って、上から見ても下から見ても
どこから見ても同じ形に見えるんだって!」
ナギ
「あぁ…?」
急に何の話だと、ナギはキョトンとした表情をした。
ヒロイン
「もし…ね、私と離れちゃったり
シリウスの皆と離れちゃったとしても
同じ花火を見てれば、ちゃんと繋がっていれるから…
どんな角度から見ていても、ナギと同じ花火を見てるからね?」
ナギは胸がキュンと締めつけられた。
ヒロイン
「だから、もうひとりで過去を見るのはやめてね?
…って、今日花火上がってる時思ったの!」
急に恥ずかしそうに目線を逸らすヒロイン。
その動作にナギは「ふっ」と笑って
ヒロインを引き寄せると、足の間に座らせ
後ろから抱きしめた。
ヒロイン
「!? ナギ?」
ナギ
「…ありがとな?」
ナギは長い間、心を覆っていた闇の中で膝を抱えて
塞ぎこんでいる自分に、温かい手が差し伸べられたのを感じた。
ナギ
「…やっぱお前は、いつだってオレを救ってくれる…
ちゃんと届いたからな?」
ヒロイン
「え?」
ナギはピッタリとヒロインの背中に体を寄せ
耳元で囁いた。
ナギ
「お前の手がちゃんと届いた…
ありがとうヒロイン…大好きだからな?」
ヒロイン
「!!!」
一気に体温が上昇した。
耳元にあったナギの唇が、首筋に落ち
チュッと音を立てる。
ヒロイン
「んっ…ナギ…ダメ…」
ナギ
「はぁ…無理…チュッ…」
ナギの与える刺激に我慢が出来ず、甘い声が漏れる。
しかし、ふと思った。
ナギがキスしてくれている場所は、怪我やアザがある場所だ。
ヒロイン
「ナギ…ぁん…」
ナギ
「チュッ…全部オレが癒すから…チュッ…」
前に背中を切られた時の傷もそうやって癒してくれた。
ナギにキスされるだけで、怖いかった事や痛みが消えていき
愛しい感情だけが残る。
ヒロイン
「んぁ…ナギ…も…いい…
あっぁ…」
なんとかナギの腕から抜けて、荒い呼吸を整えるように
ナギを見つめた。
ヒロイン
「はぁ…もぉ…ナギぃ…」
ナギ
「…まだ終わってねぇけど?」
ナギの激しさに感じ過ぎているヒロインは、
その真剣なナギの視線に負けてしまいそうになる。
ヒロイン
「…今日のナギ…スゴイんだもん…」
するとヒロインはナギの右手を取り、自分の胸に押し当てた。
ナギ
「!?」
思い掛けない柔らかな感触に、ナギは驚いた。
ヒロイン
「…コレはナギのせいだよ?」
手から伝わるヒロインの心臓の鼓動。
ナギは「ふっ」と優しく笑った。
ナギ
「あぁ…そうだな…
オレのせいだな…?」
ヒロイン
「そうだよ?
ちゃんと責任とってくれる?」
はにかむような笑顔に、ナギは思い切り微笑んだ。
ナギ
「あぁ…嫌って程な?」
その答えに、微笑み合うと
どちらとなく寄り添い、夜の甘い空気に溶けていった。
☆END☆ おまけ&あとがき⇒