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宿屋のドアを開けると、恐ろしいほど静まり返っていた。
だが気配で分る。
ここにいるだけでざっと20人はいる。
闇に紛れ、息を潜めている。
ナギ
「オイ、隠れてないで出て来い!」
ナギの声が宿内に響く。
男1
「…やっと来たな?
お頭に会ったのか?」
ナギ
「ヒロインはどこだ?」
男1
「…無事だよ。
ちゃんと大切に預かってるぜ?」
ニヤニヤした表情を浮かべる男。
どういう意味で、その言葉を言っているのだろう。
ナギ
「オレが来たからいいはずだ。
ヒロインを離せ」
男2
「オレらがそんな事すると思うのかよ?
素直に渡すと思ってたのか?」
ナギはジャラ…と鎖鎌を手に取った。
ナギ
「あぁ…知ってる。
お前らがどんなに卑劣で汚いヤツかって事」
男1
「ふん…それはお前も同じだろ?」
ナギ
「…違う…」
男2
「あぁん? 相変わらずボソボソ話す野郎だな?
聞こえねぇんだよ」
すると、男の耳の横でヒュッと風を切る音がした。
男2
「!? っ!テ、テメェ!!!」
男は耳からダラリと液体が滴るのを感じた。
その後襲った痛みに、右の耳がパックリと切れたと分った。
ナギの手元で鎖の音がジャラ…と鳴る。
ナギ
「…聞こえねぇなら、聞きやすくしてやる。
お前らは大きな間違いを犯した。」
男1&2
「「??」」
ナギ
「…オレはもう昔のオレじゃないという事…」
何度過去の闇に落とされようとも、その度ナギに手を差し伸べてくれる。
仲間達の言葉。
そしてヒロインの笑顔。
『ナギがいるから強くなれる』
ナギ
「…そして…」
その言葉を口にした瞬間、ナギの背後でジャリ…と土埃に覆われた
宿屋の床を踏みしめる音が聞こえた。
リュウガ
「…もうナギはひとりじゃねぇって事だ」
ナギ
「船長! みんなもっ!」
ナギも驚いた。
振り返ると、戦闘モードのシリウスメンバーが立っていた。
ソウシ
「ナギひとりにヒロインちゃんの救出横取りされちゃ堪んないもの」
シン
「まぁ…新しい銃を試すいい機会だな」
ハヤテ
「ナギ兄! オレ、特大の骨付き肉よろしくな?」
トワ
「僕はお菓子がいいです♪」
いつもと変わらないシリウス海賊団がそこにいた。
ナギは「ふっ」と笑った。
男1
「!? 何笑ってんだお前!」
男2
「分ってんのか?
こっちはお前らの10倍は人数がいるんだぞ?
それに今騒ぎを起こしてみろ?
宿の外にいる花火を見に来た客が
パニック起こして中止になるぞ!?」
リュウガ
「…なるほどな。
それでこの宿を使ってたって訳か…」
山賊と海賊が花火大会の会場の目の前で戦っていると知ったら
男達の言う通り、大パニックになるだろう。
外には千人以上の人でごった返している。
ハヤテ
「どこまでも汚ねぇヤツらだな?」
男1
「なんとでも言え。
こっちには人質もいる事を忘れんなよ?」
すると暗くて見えない廊下の奥から、ぼんやりと白い人影が見えた。
ナギ
「ヒロイン!!!」
ヒロイン
「ナギ!!」
現れた姿を見て、メンバーは目を見開いた。
着ているシャツが胸の辺りまで裂けて
両手を後ろで縛られている。
そして連れているのは、山賊の頭だった。
山賊の頭
「安心しろ。
まだ食ってねぇからよ?
お前を捕まえてから、お前の目の前で食ってやるよ」
ナギ
「チッ…」
ナギは鎖鎌を強く握り締めた。
男1
「さぁどうする?
大人しく降参するか?」
メンバー全員が同じ表情を浮かべていた。
ナギは不敵に笑った。
ナギ
「言ったろ?
お前らは大きな間違いを犯したって…」
男1
「あぁ?!」
ナギ
「…今日が花火大会だって事だ」
すると宿屋の外から、ヒュ~と花火の打ち上がる音が聞こえた。
それが合図だった。
轟音と共に夜空に大輪の花火が開くと、大きな歓声が上がり
宿屋で今行われている争いに気付く者は誰一人いない。
シリウスメンバーは襲いかかる山賊を次々と倒して行く。
リュウガ
「ナギ! 先に行け!!
ヒロインのトコへ!」
ナギ
「はい!」
メンバーが道を作ってくれる。
パーンと、すぐ横で銃声がしたかと思うと、階段の上から山賊が落ちてきた。
シン
「フン、あんな腕でよく銃を扱えるもんだ」
ナギ
「シン…」
ナギの背後でもドサリと男が3人倒れる音がした。
ハヤテ
「しつこいっつーの!
剣合わせた時に、こうなるって分るだろ?!」
ナギ
「ハヤテ!」
ナギを何としてでも行かせまいと、集中的に襲ってくる。
するとゴキッという鈍い音が聞こえた。
ソウシ
「あーぁ、動くから肩外れちゃった…」
トワ
「ソウシ先生…思いっきり関節キメてるからですよ…
ナギさん、僕こんなの持ってるんです!」
ナギ
「?」
トワ
「ヒロインさぁ~ん!!
僕コレ投げま~~す!!!」
ヒロイン
「!!?」
その声にシリウスメンバーは一斉に目を瞑った。
山賊
「うわぁぁあ!!」
山賊
「見えねぇ! 目がっ!!」
強烈な光が部屋を覆った。
トワお手製の閃光弾。
まともに見たら、しばらくは視力を失う。
男1
「お前ら…クッ!」
トワ
「ナギさん早く!」
ナギ
「あぁ」
目を覆ってても、クラッとする。
ナギは目を抑えながらもがいている山賊達をすり抜け
ヒロインの元へとやってきた。
山賊の頭
「随分派手にやってくれるな?」
ナギ
「もう勝ち目はないぞ?」
山賊の頭
「どうだろうな?
お前をまたドン底に落とすのは簡単だぞ?」
ギリッとヒロインを縛った縄を強く引き
ヒロインのアゴにナイフを突きつける。
ヒロイン
「っっ!」
恐怖のあまりにギュッと目を瞑るヒロイン。
ナギはこんな思いをさせてしまい、
どうしようもない罪悪感に見舞われる。
山賊の頭
「さぁどうする?
裏切りのナギ、仲間を裏切ってオレのトコへ戻ってこい」
その言葉に、ナギは気付かされた。
ナギ
「…そうだったな…
オレは裏切りのナギだったな…」
山賊の頭
「? なんだ?」
ヒロイン
「ナギ…」
裏切りのナギでもシリウスのメンバーは、自分を受け入れてくれた。
裏切りのナギでもヒロインは、恋人になってくれた。
どんな過去を持っていても、信じて分ってくれる人がいる。
ナギ
「…オレはお前を裏切ったのかもな…?」
山賊の頭
「あん?」
ナギ
「…お前の知ってるオレはもういない。
お前の期待してる山賊のナギはもういねぇんだよ!」
ナギの言葉に、ヒロインへ突き付けられたナイフが
グッと喰い込む。
山賊の頭
「言いてぇのはそれだけか?
…後悔しな! 目の前でお前の女殺してやる」
ヒロイン
「…だから言ったのに…」
男の手がピタリと止まった。
山賊の頭
「あぁ?」
ヒロイン
「間違ってるって…言ったのに…」
山賊の頭
「ふん、最後の言葉か…
そうだな、最後に恋人に何か言ってやれ!
オレだって少しは優しさってモンがあるんだ」
そう言うと男はナイフを降ろした。
抵抗する気がない事が分ったのだろう。
男は余裕の表情を浮かべている。
ナギも迷っていた。
今ここで鎖鎌を使えば、ヒロインに当たる可能性もある。
(…何だ?)
てっきり恐怖に怯えているかと思ったら、ヒロインの目は
何かを決意したような強い目をしている。
(何を考えてる…)
ヒロイン
「…あなた達の間違いは、私がナギの弱点だという事…」
山賊の頭
「あ? だから何だって…!!?ぐあぁ!」
ヒロイン
「動いたら… あ…外れちゃった…」
ナギは目の前で起きている事が信じられず
大きく目を見開いたまま
ゴキッという鈍い音が聞こえ
倒れ込んでいく男をスローモーションで見届けた。
山賊の頭
「こんのぉアマぁ~~~」
ヒロイン
「私はナギの弱点なんかじゃないです。
仲間で、ナギの恋人です!
あのシリウス海賊団の…あのナギの恋人なんです!
弱いと思いましたか?」
油断した隙をついての攻撃だった。
ハヤテから習った縄抜きと、ソウシから習った護身術。
仕事の合間に教えてもらっていた。
いつまでもナギに守られてばかりじゃいけないと…
ナギ
「お前…」
ナギが呆然としていると、周りが急に静かになり
シリウス海賊団が制圧した事が分った。
リュウガ
「ふぅ…ま、こんなもんか?」
シン
「フン、口ほどにもないヤツらめ」
床に寝転がった山賊を足で蹴るシン。
ソウシ
「あれ? 気失っちゃった?
山賊の頭のクセに、肩の関節外れたくらいで意識飛んじゃうなんて…」
ハヤテ
「お前、縄抜けんの遅ぇんだよ!」
トワ
「僕の渡したケムリ玉も、結構威力あったんですよ?
ヒロインさん、使わなかったんですか?」
自分を通り越して飛び交う言葉に、ナギは全くついていけなかった。