fireworks
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日の夜。
メンバーと夕食を終え、それぞれの部屋に入り
それぞれの時間を過ごしていた。
リュウガは部屋に女性と入っていく後ろ姿を見た。
ソウシは今日買った薬品を整理しているようだし、
シンは早々と寝ると言っていた。
ハヤテとトワは、まだ賑わう街に残り
酒場で遊んでいる頃だろう。
ヒロイン
「…ナギは行かなくて良かったの?」
部屋で2人きりになったナギとヒロイン。
外の涼しい風を入れようと、細く窓を開けた。
ハヤテとトワに声を掛けられていたが
ナギは「行かない」と断っていた。
ナギ
「…行って欲しかったのか?」
珍しいレシピ本を本屋で見つけたナギは
ソファーに座り読みふけっていた。
ヒロイン
「そうじゃなくて…
…私に気を使ってないかなって…」
つき合い始めてから、ナギはいつも傍にいてくれる。
そういうつき合いに全く行かない訳じゃないが
自分の存在が、ナギのつき合いを悪くさせているのじゃないかと
心配になる時がある。
ヒロインは、考えながらベッドに上がり
座りこんだ。
ナギ
「…人の多い所は好きじゃない…
それにハヤテとトワと飲むなんて、介抱するハメになるのが目に見えている…」
ヒロイン
「そ、そうだね…」
きっともうどこかで、ベロンベロンに酔っているだろう。
すると、パタンとレシピ本を閉じて
ナギがソファーを立った。
ヒロイン
「?」
どうしたのかと、ナギを見つめていると
ギシッと音を立てて、上がり込んできた。
ヒロイン
「あ…もう寝る?
明日はお宝情報を見つけなきゃだもんね?」
船の上とは違い、陸地ではゆっくり過ごせる。
ナギはポスッとヒロインの隣に寝転がり
片肘をついてヒロインを見つめた。
ヒロイン
「? どうしたの?」
ヒロインはナギを見下ろした。
ナギ
「…お前こそ、オレに気ぃ使ってないか?」
ヒロイン
「え…?」
何を言い出すのかと、驚いた顔で聞き返した。
ナギ
「…今日男達に会った時…
本当は怖かっただろ…?」
ナギから言われた言葉は意外だった。
ヒロインはすっかり昼の一件を忘れていたのに
ナギの頭にはまだ残っていた。
やはり、ヒロインが思っている程
ナギにとっての山賊時代は、相当なもので
未だにナギを苦しめているのだと、再確認した。
ヒロイン
「…んーん…ホントに怖くなかったよ?
船に乗ってても、あの人達みたいな海賊が乗り込んでくるのも見てるし
それにナギと一緒だったから…」
そう言っても、ナギは納得してないようで
困った顔をしている。
ヒロインはニコッと笑うと
ゴロリとベッドに横になり、顎の下に手を置いてナギを見つめた。
ヒロイン
「ん~… じゃあ…
スッゴイスッゴイ怖かった!!
ナギがあんな人達と知り合いなんてショック…」
わざとらしい声でそういうヒロイン。
ナギは何だとばかりに、片眉を上げた。
ヒロイン
「って言って欲しい?」
ナギ
「!?」
ヒロイン
「…ふふっ、ナギ?
大丈夫だよ? ひとりだったら確かに少し怖かったかもだけど
ナギと一緒だったから、本当に怖くなかったの!」
ナギ
「ヒロイン…」
ヒロイン
「私も強くなったでしょ?
そばにナギがいてくれるから、強くなれるんだよ?」
そう言って体を起こすヒロイン。
そっとナギの頬に両手を添えた。
ヒロイン
「だから、もう気にしないで?
過去のナギがいてくれたから、私達は会えたんだよ?」
ナギは胸の中が熱くなった。
きっと泣くって感情は、こうやって生まれてくるんだろうと思った。
ナギ
「…お前は…いつもオレを救ってくれるな?」
ヒロイン
「え…?」
ナギ
「オレになかった感情を与えてくれる…」
ギシッとベッドが軋み、ナギの手がヒロインの体を抱くと
仰向けに寝かされた。
ナギ
「…ホント…誰にもやりたくねぇ…」
ナギがベッドに手をついて、覗き込むようにヒロインの上に乗る。
これからされる事に意識して、表情が色っぽくなるヒロイン。
この顔が堪らない。
ヒロイン
「ナギ…」
ナギ
「ヒロイン…」
ナギの顔が近づき、唇が重なる。
何度かその感触を確かめるように、キスをされると
唇をこじ開けるように、ナギの舌が入り込んできた。
ヒロイン
「はぁ…ん…」
久しぶりにナギとこうしている。
それだけで、体が敏感に反応してしまう。
ナギ
「チュ…はぁ…ヒロイン…」
深いナギのキスに酔いしれていると、コンコンと
部屋のドアをノックする音が響いた。
ヒロイン
「!!?」
その音にパッと目を開けたヒロイン。
ナギは舌打ちをしながら、ヒロインの上から起き上がった。
ヒロイン
「…ナギ…」
不安そうに体を起こすヒロイン。
(こんな時間に一体誰だろう…。)
ナギはチュッとヒロインのオデコにキスをした。
ナギ
「お前はここにいろ…
オレが出るから…」
そう言ってベッドから降りるナギ。
コンコン
宿主
「お客さぁ~ん! 寝ちゃったかい!?」
ドアの向こうから声が聞こえる。
ナギは不機嫌にドアを開けた。
ナギ
「…何だ…」
宿主
「あぁ…良かったよ、起きてたかい。
アンタにお客だよ。
…アンタあいつらの仲間じゃないだろうね?」
ナギ
「? あいつら?」
宿主
「山賊だよ。
ここんとこ街まで降りてきて、悪さばかりして困ってんだ。
咎めるヤツは誰もいねぇから、やりたい放題…
アンタも気をつけなよ?
宿の入り口で待ってるよ」
それを聞いて誰だかすぐに分った。
ナギ
「ヒロイン、ちょっと出てくるから…」
ヒロイン
「えっ今から?!」
ナギ
「すぐ戻る…」
そう言って、部屋のドアを閉めると
ナギは入口を目指した。
いつまで関わってくるつもりだ。
だが、あぁいう連中は獲物を見つけると
執着心が強く、自分の手に入れるまで
どこまでもついてくる。
かつての自分がそうだったように…。
宿の外へ出ると、案の定
昼間絡んできた男のひとりだった。
男
「よぉナギ。」
ナギ
「……何しにきた…」
男
「なんだよ…つれねぇなぁ…
お前は本当にいつまで経っても可愛くねぇなぁ…」
吸い込んだ煙草の煙を吐きながら、男は言った。
男
「お前、まさか本当に忘れた訳じゃねぇよな?
山賊だったって事…」
ナギ
「あぁ…忘れてねぇ…」
男
「だったら、礼儀ってもんがあるだろ?
お前にゃ散々な目に合わせられたんだしよ?」
ナギ
「しつこいぞ…
お前らにやるものは何もない。
つきまとうな」
ナギの鋭い視線と、静か過ぎる物ごしに
男は思わず息を飲んだ。
男
「は、はん!
お前、オレが誰だか分ってモノ言ってんだよな?
山賊だぞ?さ・ん・ぞ・く」
ナギ
「…何が言いたい…」
わざととしか思えない挑発に、ナギは苛立ちを覚える。
男
「ふん、お前の大事なモノを手に入れるなんて簡単だって事だ…」
ナギ
「?」
男
「オレらがどうやって忍び込むか知ってるだろ?
屋根を伝って、鍵の掛かってない窓を開けて…ヒヒヒッ」
その言葉にハッとした。
ナギ
「お前!!」
ナギは目の前の男の胸ぐらを掴んだ。
男
「いいのかぁ~ お前の女が部屋にいるか確認しなくて…
まだガキだが、いい体してたなぁ~」
ジュルリと舌舐めずりをして、いやらしい表情を浮かべる男。
ナギ
「チッ!」
ナギは男を離すと、一目散に宿の中へと入って行った。
男
「オレ達はこの先の宿屋にいるからよ?
気が向いたらいつでも来いよ?
ヒヒヒッ…気が向いたらな?」
意味深な言葉が背後から聞こえたが、ナギはそれどころではない。
何故部屋にひとりで残してきてしまったのだろう。
そういうヤツらだと知っていたのに…
ナギ
「クソッ!!」
急いで階段を駆け上がり、全力で廊下を駆け抜けた。
ナギ
「ヒロイン!!!!」
バンッと勢いよくドアを開けると、
驚いた顔でベッドに座っているヒロインがいた。
ヒロイン
「!? ど、どうしたの?」
ナギの剣幕に驚き、ナギのレシピ本を読んでいたヒロインはハッと顔を上げた。
部屋を出る前となんら変わらない状況に、ナギは安堵のタメ息をついた。
ナギ
「はぁ…」
ヒロイン
「??? 大丈夫?」
ベッドを降りてナギの傍に行くと、力強く抱きしめられた。
ヒロイン
「ナ、ナギ!?」
ナギ
「…よかった…」
ナギはヒロインの肩に深く顔を埋めて、ヒロインの存在を確かめるようにさらにギュッと抱きしめた。
ヒロイン
「ん…ナギ… 苦しいよ…
どうしたの?」
ナギ
「………」
何も答えないナギ。
ヒロインは内心ドキドキしていた。
どうかバレないようにと…。
ナギが部屋を出て少ししてから、部屋の窓から
突然男が入ってきた。
声を上げる間もなく、口を手で覆われると
ナイフを突き付けられた。
男
「ははっ…相変わらずボサッとした男だな…
そんなんだから、濡れ衣着せられんだ…」
聞き覚えのある声に、眉をしかめて男を見つめた。
男
「そんな顔すんなよ?
昼間会っただろ? お前に何かする訳じゃねぇよ…
だが、騒ぐならコイツでどうにでも出来るって覚えておけ?」
ヒヤリとナイフの冷たい感触が首筋に走る。
男はゆっくりと口元から手を外した。
男
「ナギに言っておけ、お前の大事なモノを全て奪って
どん底に落としてやるってな?
お前が手に入れたもの全てオレ達がもらう。
…だが、もしお嬢ちゃん
アンタがオレらのモノになるんだったこの話はなかった事にしてもいい」
ヒロイン
「!? 何言って…!」
言い返そうと身を乗り出すと、ナイフはピタッと頬に当てられた。
男
「考えな。
オレらの仲間はざっと70人。
襲う事は簡単だ。 お嬢ちゃんがナギを救うか殺させるか…
どっちかだ。 明後日の夕暮れまでに答えを出しな。
オレらはこの先の宿屋にいるからよ」
そう言って窓へ身を乗り出す男。
男
「ナギの命はお前に掛かってる」
夜の闇に紛れ、男の姿は消えた…。
こんな事、ナギに話したら
絶対に争いになってしまう。
どれだけの腕前かは知らないが、70人もの山賊に襲われたら
さすがのシリウスメンバーもやられてしまうのではないか…。
ヒロインは、決してナギに話すまいと
顔に出ないよう、深くナギの胸に顔を埋めた。
ナギ
「…ヒロイン、この街を出るまでは
オレの傍を離れるな?」
ヒロイン
「う…うん…」
もう誰も傷つけたくない。
ナギもヒロインも考える事は一緒だった。