シュガー☆ソウル
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ヒロイン
「この道戻ればいいんだもん…」
夜の山道がこんなにも真っ暗なんて知らなかった。
勢いで走り込んでしまったが、夜になると山賊が出るから
絶対に行っちゃいけないと言われていた。
いつもの道がまるで、別世界のように
大きな木も獣のように思えるし、通り抜ける冷たい風も
先が見えない程真っ暗な道も全部が恐怖心を倍増させた。
ヒロインは、怯えながら「大丈夫」「大丈夫」と言い聞かせて
来た道を引き返していった。
だが、いくら歩いても街の明かりが見えてこない。
ヒロイン
「ここ…さっきも通った…
どうしよう…」
こんな暗くては誰も見つけてなんかくれない。
もうずっとこのままで、いつか山賊か熊に襲われて
母親にも弟にも、もう会う事なんてできないんだ…。
そう考えると、涙が浮かんできた。
ヒロイン
「おかぁさぁ~~ん!!!」
大きな声で呼んでも、返事なんかない。
怖くて心細くて、ヒロインはその場で泣き出した。
すると、すぐ側にある木の葉が揺れた。
ヒロイン
「!!?」
ヒロインは驚いて泣くのを止め、暗闇に目を凝らした。
しかし闇は沈黙を守ったままで、何も変化は起きていない。
風の音…それとも…
ヒロインは恐怖のあまり、またしてもワンワンと泣き出した。
???
「…何でこんなトコに…」
ヒロイン
「!?」
今声が聞こえた。
ヒロインはキョロキョロと見渡すが、誰もいない。
オバケでもいるのだろうか…。
そんな最悪の事しか頭には浮かばない。
(お母さん助けて!!!)
ギュッと目を瞑り、今起こっている状況が夢である事を願った。
???
「なぁって! こんなトコで何してんだ?」
ヒロイン
「!? きゃああああ!!!」
声のする方を見上げると、木の上から黒い影が飛び降りてきた。
その拍子に尻もちをついた。
???
「…ガキがこんな時間に何してる?」
目の前に立っているのは、ヒロインよりも少し年上そうな
茶色の髪をした男の子だった。
ヒロイン
「………」
茶髪の男の子
「? なんだ?」
ゆっくり近づいてヒロインの顔を覗き込む男の子。
目にいっぱいの涙を浮かべて、安心したかのように見上げてくる。
茶髪の男の子
「チッ…迷子か?」
ヒロイン
「ふぇ…うわぁ~~ん」
茶髪の男の子
「!!?」
突然に泣き出したヒロインに戸惑う男の子。
茶髪の男の子
「街の子供か?」
ヒロイン
「ヒッ…ヒック…」
泣きじゃくるのに必死で声が出せないようだが、コクコクと頷いてきた。
茶髪の男の子
「ホラ、ついてこい!」
そう言って男の子は歩き出した。
ヒロインは置いて行かれないように慌てて立ち上がった。
ヒロイン
「?」
しかしハッとした。
さっきまで持っていた金平糖がない。
パッと足元をみると、最後の金平糖が全て地面に落ちていた。
茶髪の男の子
「オイ! 行かねぇのか?!」
ついて来ないヒロインに痺れを切らし、戻ってきた。
ヒロイン
「…ヒッ…落ちちゃった…」
茶髪の男の子
「あ?」
ヒロイン
「…魔法の…薬…全部なくなっちゃったぁ~~」
またしても泣き出すヒロイン。
茶髪の男の子は何の事を言っているか分らずに、ヒロインの足元をみる。
茶髪の男の子
「あぁ? この金平糖の事か?」
ヒロイン
「グズッ…違う~…」
茶髪の男の子
「何だか知らねぇけど、ついて来ねぇならオレは行くぞ?」
ヒロイン
「!! ヒック…行く…」
ゴシゴシと目もとを腕で拭うとヒロインは、茶髪の男の子の背中を追い掛けた。
滲む視界でよく見えない。
ヒロイン
「グズッ…お兄ちゃんはどうしてここにいるの?」
茶髪の男の子
「…ここに住んでるから…」
ヒロイン
「グズッ…す、住んでる?! …お父さんとお母さんも?」
茶髪の男の子
「…親はいない…」
ヒロイン
「…そうなんだ…私も父さんいないの…
それで今日クラスの男の子にイジメられてね?」
なんだか不思議な男の子だった。
口数も少ないし、山に住んでるなんて山賊に違いないのに
何でも話せちゃう…。
ヒロインは置いて行かれないように、必死で追い掛けたが
山道に慣れていないヒロインはドンドン男の子との距離が離れて、見えなくなってしまいそうだ。
茶髪の男の子
「…チッ、話してる余裕あんだったらついてこいよ…
ホラ!」
ヒロイン
「?」
怒りながらも男の子は、ヒロインの目の前に背中を向けてしゃがみ込んだ。
茶髪の男の子
「おぶってやる!
その方が早い!」
ヒロイン
「うん…ありがと…」
そっと背中に乗ると、男の子はゆっくりと歩き出した。
茶髪の男の子
「…さっきの金平糖、大事なモノだったのか?」
自分のせいで驚かせてしまった事を少し反省していた。
ヒロイン
「うん…夕方前に港でもらったの…」
今に至るまでの、今日あった不思議な出会いを話した。
男の子は、黙って聞いてくれていた。
ヒロイン
「…だからね? 明日男の子にイジメられたらあの魔法の薬飲んで言い返そうとしたの…
でも…もうなくなっちゃった…」
背中から聞こえる声がとても寂しそうで、男の子は思わず声を掛けた。
茶髪の男の子
「…そんなに大事なモノだったのか…
悪かったな…」
ヒロイン
「うーうん…」
それでもしょんぼりしているのが表情を見なくても分かる。
茶髪の男の子
「…なぁ、魔法の薬ってのは空にもあるんだぞ?」
ヒロイン
「え?」
茶髪の男の子
「ほら」
そう言って空を指す指先を見つめると、木々の隙間から満天の星空が見えた。
ヒロイン
「わぁ!!」
こんなに星がいっぱいの空は見た事がない。
ヒロインがあまりにも空を見上げるので、茶髪の男の子はよろけた。
茶髪の男の子
「チッ…お前いいかげんに…」
ヒロイン
「スゴイスゴイ!!
こんなにいっぱい! ホントだね?空にはいっぱいあったんだね」
励ます為に言った一言で、こんなに喜んでくれるとは…
そういえば、今までこんな風に頼りにされて
自分の話しを聞いてくれた人間は
この子が初めてかもしてない。
こんな話、幼なじみにもした事がない。
茶髪の男の子
「…アレだったら無くならないだろ?
朝んなっても見えないだけで、空にはずっと浮かんでんだ」
ヒロイン
「そうなの?! お月さまと一緒に無くなっちゃわないの?」
茶髪の男の子
「ずっとお前の頭の上にある。
だから、イジメられても負けんな」
ヒロイン
「…! うん!!!」
もう一度空を見上げてた。
今日は本当に色んな事があった。
でも考えたら出会った皆に勇気をもらった。
ヒロインはコテッと男の子の背中に顔をつけた。
茶髪の男の子
「…どうした?」
ヒロイン
「………」
茶髪の男の子
「…? そういえばお前名前は?
…オイ?」
呼びかけても返事がない。
肩越しに、覗き込むとヒロインは眠っていた。
男の子は驚いた。
こんなにも警戒心なく、自分に身を任せてくる人間は初めてだ。
周りにいるのは、いつも下品な話しをしたり
どこの屋敷に忍び込むだの、どこの女を無理矢理ヤッただの
汚い世界に染まった連中ばかりだった。
今この子には、自分しかいないんだ。
自分がいなかったら、この子は家に帰る事もできない。
そう考えると、何としてでも家まで送り届けるという使命感に燃え
支えている腕にギュッと力を込めた。
背中で気持ちよさそうに寝ている小さな女の子が
これからも泣かないで、星空を見上げたような笑顔がいつも溢れるように…。
男の子は星空に願いながら、山道を下っていった。