シュガー☆ソウル
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ヒロイン
「急がなきゃ!」
カチャカチャと少なくなった金平糖が瓶に当たり
走る度に音がする。
家まではあと少し、学校から一度も帰らずに
こんな時間まで外にいるのは初めての事だった。
きっと母親が心配しているに違いない。
ヒロインは急いで大通りを横切って、家へと続く路地へと入った。
すると、自分よりも小さい男の子が
グーにした手を目に当てて、ワンワン泣いていた。
この通りは人通りも少なく
誰一人この子の存在に気付いていないようだ。
ヒロインは悩んだ。
もしこの子の相手をしたら、日が暮れて真っ暗になり
母親にしかられる。
そのまま通り過ぎてしまおうか…。
しかし自分の弟の事を考えた。
もし弟がこうして1人で泣いてたら…。
ヒロインはそっとその子に声を掛けた。
ヒロイン
「…どうしたの?」
するとその子は、しゃくり上げながら顔を上げた。
大きな目がウルウルと潤んでおり、大粒の涙が頬をつたっていた。
ヒロイン
「迷子になっちゃった?」
男の子はフルフルと首を振った。
ヒロイン
「ひとりなの? もうすぐ日が暮れちゃうよ?」
男の子
「ヒック…頼まれたの…ヒッ…買い物…ヒック」
ヒロイン
「お買い物?」
呼吸を整えるように息を吸うと、男の子は大きく頷いた。
男の子
「父さんに…ヒッ…ランプの油頼まれたの…ヒッ
でも…」
そう言って通りの隅を指差した。
そこには割れたガラスの破片が置いてあった。
ヒロイン
「入れ物割れちゃったの?」
そう聞くとコクコクと頷いた。
男の子
「入れ物…買うお金なんてヒッないし…
…でも油がないと…ヒック父さん困るから…」
そういう事かと、ヒロインは泣いている男の子の手を取った。
ヒロイン
「もう泣かないで平気だよ?
コレ! この瓶あげるね?」
残りわずかになった金平糖の瓶を男の子に見せた。
男の子
「グズ…ほ、本当?」
ヒロイン
「うん! だからもう泣かないで?」
男の子は嬉しそうに大きく頷くと、ゴシゴシとシャツの袖で
涙を拭き取った。
しかし、男の子が立っている横の油屋は
もう閉店してしまったようだ。
ヒロイン
「…お店…しまっちゃってる…」
それを聞いた男の子は、せっかく泣き止んだ瞳に
また新しい涙を浮かべた。
男の子
「僕…グズ…どうしよ…」
ヒロインもどうしようか困った。
本当は山道の近くにある油屋を知っている。
道もここをまっすぐ行ったところで、分かりやすいが
そこまで行ってしまうと、もう夜になってしまう。
でもこの子をこのまま置いてはいけない。
急いで行って、戻ってくれば大丈夫なはずだ。
##NAME##
「ここの道まっすぐ行った所に油屋さんあるよ?
一緒に行ってみよ?」
そう言って手を握った。
男の子は「うん」と言って、涙を我慢しながら一生懸命ついてきた。
ヒロイン
「この街に住んでるの?」
男の子
「んーん、父さんがお仕事でヤマトに行くからついてきたの」
ヒロイン
「そうなんだ。 もうすぐ着くよ?」
油屋の看板に明かりが灯っており、開いている事に安心した。
ヒロインは店の前に着くと、金平糖を掌に出して
瓶を男の子に渡した。
男の子
「ありがとう!」
ヒロイン
「あとコレ少しあげる。
魔法の薬なんだよ? 強くなれるおまじないがかかってるの」
ヒロインよりも小さな手に、パラパラと金平糖を落とした。
男の子
「わぁ! キレイ!!」
キラキラと目を輝かせている姿を見て、ヒロインも嬉しくなった。
男の子
「コレ食べていいの?」
ヒロイン
「うん!」
男の子が口に入れようとした時だった。
???
「トワ! ここにいたのか!」
トワ
「父さん!」
息を切らしたトワの父親が、駆け寄ってきた。
トワの父
「あぁ良かった…どこにもいないから心配した」
トワ
「ごめんなさい…油を入れる瓶が割れちゃったの
でもそのお姉ちゃんが瓶をくれて、開いてる油屋さん教えてくれたの」
不安そうに見つめてくるヒロインに、トワの父は優しい笑顔を向けた。
トワの父
「トワを助けてくれてありがとう。
優しい子だね?
こんな時間なのに、つき合わせてしまって…おうちの人が心配してるね」
『おうちの人』という言葉を聞いて、ヒロインは一気に泣きたい気持ちになった。
もう怒られるに決まってる。
母親の怒った顔を思い浮かべると、胸が詰まる。
トワの父は優しく頭に手を乗せた。
トワの父
「大丈夫だよ?
ちゃんと理由話してあげるから…
こんな優しい子、おじさんが怒らせたりしないから!」
ヒロイン
「ホント?」
トワの父
「あぁ、油すぐ買うから、急いでおうちへ行こう!」
それを聞いてホッと安心した。
一緒に店に入るかと、トワの父に聞かれたが
外で待っていると答えた。
トワとトワの父親が店に入ると、ドアのすぐ横の壁に寄り掛かり
掌の金平糖を眺めた。
こんなに少なくなってしまったが、明日イジメてくる男の子に言い返すくらいの分は残ってる。
ヒロインは今日であった不思議な出会いを思い出していた。
すると急に目の前が暗くなった。
まだ夕日が少しだけ街を照らしていたのに…。
どうしたのかとゆっくりと顔を上げると、
そこには海軍の制服を着た男が2人立っていた。
海軍の男1
「…お前、さっき港で海賊王リュウガと話していなかったか?」
ヒロイン
「かいぞくおう…?」
そう言えばさっき髭の男がそう言っていた。
海軍の男2
「そいつから何かもらっただろう?!
盗品の一部かもしれない、私達に渡しなさい」
とうひん? 一体なんの事だろう。
この『魔法の薬』がその「とうひん」というものなのだろうか?
もしそうだとしても、もう手の中にあるだけしか持っていない。
ヒロインは悪い事をしてしまったのかと、とても怖くなった。
正直に言おうにも、大人の男に囲まれて
恐怖のあまり言葉も出てこない。
海軍の男1
「どうした? 何かもらっただろ?」
ヒロインは精一杯首を振った。
海軍の男2
「嘘をつくとヒドイ目にあうぞ?」
そう言われても絶対に『魔法の薬』は渡さない。
手を後ろに隠し、後ずさりする。
海軍の男1
「ん? 何隠してる?
手を前に出せ!」
それでも首を振る。
すると力ずくでヒロインの手を掴み取り、掌を広げさせる。
ヒロインも必死に抵抗して、ギュッと握りしめたが
無駄だった…。
海軍の男2
「あ? 金平糖?!」
海軍の男1
「チッ、違うガキか…
無駄な時間だったな。 オイ、この辺でお前ぐらいの歳の…ッオイ!!」
ヒロインは勢いよく走り出した。
怖くて怖くて、とにかくここには居たくなくて…
家に向かって走りたかったのに、海軍の男達から離れていくには
山道の方へと入らなくてはいけなかった。
こんな時間に山に入るなんて初めてだし、
いけない事だとは分ってる。
それでも走って走って…
ヒロインは暗い山の中へと入り込んだ。
その頃油を買い終わったトワと父親は
店の外にいるはずのヒロインがいず、キョロキョロと辺りを探していた。
トワの父
「いないなぁ… 帰ってしまったんだろうか…」
しばらくその場で探したが、ヒロインの姿は見つからず
探しながら仕事場のある港へと引き返していった。
トワ
「お姉ちゃん帰っちゃったのかな?」
トワの父
「そうだな… こんな時間だし、家の人が心配して迎えに来たのかもな…」
手を繋ぎ歩いているトワを見下ろすと、なんだか寂しそうな顔をしている。
トワの父
「どうした?」
トワ
「んーん…お姉ちゃんにちゃんとありがとう言いたかったな…」
トワの父は優しく頭を撫でた。
トワの父
「またいつか会えるさ!
その時ちゃんとお礼をいいなさい」
トワ
「うん♪」
トワはヒロインからもらった金平糖を口に入れると
甘く優しい味が広がり幸せな気持ちになった。