シュガー☆ソウル
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街がオレンジ色に染まり、ヒロインはようやく見慣れた市場へと戻ってきた。
なんだか随分と遠くまで行ってきてしまったようで
とても疲れていた。
いつも出会う事のないヒゲの男や、お医者さんを目指す青年。
そして冷たい口調の眼帯の男の子…。
まるで異世界に迷い込んだかのようだった。
さっき眼帯の男の子にいっぱい取られてしまった金平糖は
瓶の半分くらいになってしまった。
それでもヒロインは、大切に抱えながら歩いていた。
すると通りの向こうから、いつもイジメてくるクラスの男の子が歩いてきた。
ヒロインはどうしようかと慌てた。
会えばまたイジワルされる。
だが隠れる場所も見当たらない。
キョロキョロと当たりを見渡していると、クラスの男の子にしっかり見つかってしまった。
クラスの男の子
「あっ! ヒロイン!!
なんだよ、もう泣いてないのか?」
ニヤニヤと笑いながら近づいてくる。
ヒロインは嫌で嫌で、瓶をギュッと抱きしめて後ずさりした。
クラスの男の子
「お前、そうやって丸まってダンゴ虫みてぇ!
ダンゴむしーダンゴむしー♪」
面白そうに歌いながらからかってくる。
もう嫌だ。
いつもこんな事を言って困らせてくる。
無視して走り出そうと顔を上げた瞬間、見慣れない背中が目に飛び込んできた。
クラスの男の子
「なんだよ?」
???
「お前、嫌がってるのにそういう事してて恥ずかしくねぇの?」
何が起こったのかと、さらに見上げると
金髪の男の子がクラスの男の子の前に立ちはだかっていた。
クラスの男子
「な、なんだよ! 関係ねぇだろ!!」
こうやって言い返された事のないクラスの男の子は、
口調が弱くなった。
金髪の男の子
「ふ~ん、お前もしかしてコイツの事好きなんじゃねぇの?」
クラスの男の子
「ち、違うに決まってるだろ!
誰がそんなどんくさくて、ダンゴ虫のヒロインなんか好きになるかよ!」
そう言いながらもクラスの男の子の顔は、みるみる赤くなっていく。
金髪の男の子
「あははっお前、分かりやすいなぁ!
好きなんだったら優しくしろよ? オレは弱い者イジメするヤツ大っ嫌いだから
続けるなら買うぜ?」
そう言って、スラリと腰にさした2本の木刀を手に取った。
クラスの男子
「なんだよ!
ヒロイン!! お前、明日学校で覚えてろよ!!」
そう言って一目散に走り去ってしまった。
目の前で起きている事が信じられず、呆然と立ち尽くしていた。
金髪の男の子
「オイお前! 少しは言い返え…」
振り返った金髪の男の子は、ヒロインの顔を見て言葉が止まった。
ヒロイン
「? あの…」
一見王子様のように見える金髪の男の子。
同い年くらいだろうか…。
それにしても、こんな風に助けてもらうのは初めてだ。
ヒロインは嬉しくて嬉しくて、ニッコリ微笑んだ。
すると、金髪の男の子は顔を赤くしながら
ぶっきらぼうに言った。
金髪の男の子
「…なんで言い返さないんだよ!
言い返さないから図に乗ってくるんだよ!」
ヒロイン
「………」
金髪の男の子
「…そうやって黙って俯いてても何も解決しねぇぞ?」
ヒロイン
「!!?」
ヒロインはパッと顔を上げた。
さっきも眼帯の男の子に同じような事を言われた。
『そうやって逃げるのも、無視するのもやめろ。
お前には口があって、言いたい事が言えるだろ?』
今まで言い返そうなんて思わなかったし、我慢すれば誰かが気付いて助けてくれるかもって思ってた。
黙り込んでしまったヒロインに、金髪の男の子は
ガシガシと頭を掻きながら、少し反省した顔を見せ覗き込んできた。
金髪の男の子
「…泣いて…ないよな?」
ヒロイン
「…うん…助けてくれてありがとう」
しっかり言葉にして『ありがとう』って言えた。
すると金髪の男の子は、嬉しそうにニッコリと笑った。
そうだった。
今まで母親に対しても、自分の気持ちをしっかり話した事が無い。
父親がいなくて、苦労している母親に、イジメられてるなんて
心配掛けそうで、情けなくて…そんな事言えないと思ってた。
金髪の男の子
「お前家この辺なの?」
ヒロイン
「うん、大通りを渡ってちょっと行ったトコ」
金髪の男の子
「そっかぁ…」
すると金髪の男の子のオナカからギュルギュル~と音が聞こえた。
ヒロイン
「オナカ…空いてるの?」
金髪の男の子は、オナカを擦りながら顔をしかめた。
金髪の男の子
「朝から食ってねぇからな…
剣術の特訓してて食うの忘れてた」
朝から何も食べてないなんて…。
ヒロインは家に連れて行ってあげたいと思ったが
とても王子様のようなこの男の子をもてなすような物が
うちにはないと思った。
すると金髪の男の子の視線が、ヒロインの抱える瓶に釘付けになった。
金髪の男の子
「お前の持ってるそれ何?」
ヒロインはハッとして、素早く後ろに隠した。
ヒロイン
「コレはダメ!」
金髪の男の子
「何だよ! 見るぐらいいいだろ?」
確かに見るだけならいいが、この食いつき様は絶対食べようとしている。
どうしようかと迷ったが、助けてもらった恩もあるしと
ヒロインはしぶしぶ瓶を出した。
金髪の男の子
「おっ!金平糖じゃん!!」
ヒロイン
「違うもん! 内緒だけど、『魔法の薬』なの!」
金髪の男の子
「はぁ?」
何を言ってるんだという表情が見え、ヒロインはムッとした。
ヒロイン
「…絶対絶対あげない!!!」
ヒロインは瓶を抱きしめて、体の向きを変えた。
金髪の男の子
「だぁ~悪ぃ!!
信じた! 魔法の薬!!
なぁ少しでいいからくれよ!」
すがる様な声と、オナカから聞こえるギュルギュルという音に
ヒロインは仕方なく分けてあげる事にした。
ヒロイン
「全部はダメ! 少しだよ?」
金髪の男の子
「やっりぃ♪」
少しと言っているにも関わらず、男の子はガッツリと瓶の中から取り出した。
ヒロイン
「あぁ!!」
そう言ってももう無駄だった。
既に男の子の口に入ってしまっている…。
金髪の男の子
「うめぇ! 久しぶりに食ったぁ~!!」
ヒロインは残り少しになってしまった金平糖を見て
涙がジワッと浮かんだ。
ヒロイン
「少しって言ったのに…」
金髪の男の子
「!! な、泣くなよ!」
ヒロイン
「うぅ~」
今にも泣き出してしまいそうなヒロインに、金髪の男の子は慌てて言った。
金髪の男の子
「泣くなって! そうだな…じゃあお前が困った時は必ずオレが助けてやる!」
ヒロイン
「え?」
金髪の男の子
「覚えておけよ?
オレ二刀流のハヤテって言うんだ!!
ぜってぇ強い剣士になって、世界中の悪いヤツらを倒すんだ!
だからそん時は、必ずお前を助けてやる!」
ヒロイン
「ハヤテ…?」
ハヤテ
「そう! 忘れんなよ?
じゃあな!!」
そう言ってハヤテと名乗る男の子は、人混みの中に消えていってしまった。
結局『魔法の薬』を食べられてしまったが、いつかあの子が助けに来てくれる時が来ると、
ヒロインは何だか気持ちが強くなった気がした。