シュガー☆ソウル
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街に引き返す途中も、ヒロインは何度も瓶を眺めてはニコニコを笑った。
もうイジメてくる男子も怖くない。
この魔法の薬があれば、負けるはずがない。
無敵になれたヒロインは、今にもスキップをしそうな勢いで歩いていた。
家まではまだ大分距離がある。
近道をしようと路地に入ると、そこには人だかりが出来ていた。
近道はこの道しかない。
どうしようかと迷ったが、ヒロインは人混みを縫って通り過ぎようとした。
しかしやっぱり好奇心が疼き、人混みの中心に出ると
何が起きているのかと覗き込んだ。
そこには中年の男が道に倒れていて
若い青年が、その男の手首を取って脈を調べているようだ。
長めの黒髪に白い合わせの胴着、黒い袴といった出で立ちで
ヒロインは、ヤマトの者かと眺めていた。
街の男
「兄ちゃんどうだい?
助かりそうかい?」
倒れた男の連れだろうか?
心配そうに青年に向かって話し掛けている。
倒れている男は意識はありそうなものの、なんだかぼんやりとしていて
自分で動く事が出来ないようだ。
すると青年は持っていたカバンから聴診器を出して
倒れた男のシャツを脱がし始めた。
青年
「私はまだ見習いの身なので、大した事はできないかもしれませんが
出来る限りの事はします!」
真剣なその表情に、面白半分で見ているのが悪いような気がした。
それに人が倒れているなんて、なんだかとても怖い事のように思えた。
青年
「この方、何か病気をお持ちですか?」
街の男
「いやぁ、オレはよく分からねぇが
なんだか薬は飲んでいたようだったな…」
その言葉を聞くと、青年は倒れた男のズボンのポケットや
持っていたカバンをあさり始めた。
しばらくその動作が続いたかと思うと
青年はハッと目を見開いた。
青年
「あった!
やはりそうか…」
見つけた薬の袋を見て何かが分ったようだ。
青年
「この方は恐らく低血糖症です!
砂糖やジュースを持ってる方いませんか?」
人だかりに声を掛けるも、貧しい街だ。
そんなモノ気軽に持っている人なんてそういない。
青年
「アメ玉でもいいんです!
どなたかいませんか?」
必死に声を掛けているが、誰も名乗りでない。
街の男1
「この先に菓子屋があるから、そこからもらってくるよ!」
街の男2
「もらってくるったって、菓子屋まで片道15分は掛かるだろう?」
青年
「15分!?
あまり時間を掛けると、この方の意識がなくなります。
そうなると病院にいくか、家に薬があればそれを飲ませないと」
街の男1
「コイツのうちはここから1時間は掛かるよ!」
青年
「そんな…」
青年はそれでもあきらめきれない様子で、人だかりを見渡した。
そしてその視線がヒロインの前で止まった。
ヒロイン
「!!?」
青年が立ち上がって、近づいてくる。
ヒロインはどうしたらいいのか怖くて、走り出そうとした。
すると、青年の手がガシッと両腕を掴み
ヒロインを正面に向かせた。
青年
「君! 君が持っているのって金平糖?」
ヒロイン
「…コンペイ…トウ?」
何を言われているのか分らない様子のヒロインに
青年は諭すように話しだした。
青年
「君の持っている金平糖であの人を助けられるかもしれないんだ。
大事なものかもしれないけど、私に分けてくれるかい?」
よほど大切に持っていたのだろう。
青年には大事なものだとすぐに見抜かれてしまった。
青年の剣幕に圧倒されてしまい、頷く事も返事をする事も出来ず
ヒロインは青年に瓶を差し出した。
青年
「ありがとう」
青年はニッコリと微笑むと、瓶を受け取り倒れている男の元へと走った。
そして金平糖を数十粒手に取ると、男の口へと入れた。
ヒロインは何が起きるのかと、ドキドキしながらその光景を眺めていた。
しばらくすると、倒れていた男がゆっくりと体を起こし
青年に支えられた状態で話しが出来るようになった。
人だかりから拍手が送られて、青年はにこやかな笑顔を見せていた。
ヒロインは金平糖の所在が心配で、ちゃんと返してもらえるか
じっと青年を見つめていた。
青年は倒れた男に、病院に行く事を勧めて
一緒にいた連れの男にも、家まで送るように言っていた。
人だかりが薄れ、ようやく青年がヒロインの存在に気付き
慌てたように戻ってきた。
青年
「やぁごめんね?
本当に助かったよ! まさか金平糖を持っているなんて」
ヒロイン
「…おじさん助かったの?」
青年
「うん、低血糖症と言ってね?
あの状態だったら、お砂糖とかジュースを飲ませてあげると
症状がよくなるケースが多いんだ」
ヒロインはずっとずっと疑問に思っていた事を青年に聞いた。
ヒロイン
「…コレお砂糖なの?」
青年
「? そうだよ?
食べた事ないの?」
ヒロインはコクリと頷いた。
さっきのヒゲの男は、『魔法の薬』と言っていたのに…。
コレが砂糖なら、イジメてくる男子に負けてしまう。
何だかしょんぼりとしているヒロインに、青年は瓶の蓋を開けて金平糖を一粒取り出した。
青年
「ほら、食べてごらん?」
そう言われ恐る恐る口に入れると、柔らかな甘さが口いっぱいに広がった。
そして少しすると、割れてあっという間になくなってしまった。
青年
「ね? 甘くておいしいでしょ?」
ヒロイン
「…うん…」
元気のないヒロインを不思議に思い、青年はどうしたのかと尋ねてきた。
ヒロイン
「あのね? コレさっきもらったの…魔法の薬だよって
強くなれる魔法のお薬だって…」
青年はそれを聞いて、一瞬目を見開いたが
すぐに優しい笑顔を浮かべた。
青年
「…そう… そうだね。
それは魔法の薬なのかも」
ヒロイン
「!? でもお砂糖だもん!
私も食べて分ったもん!」
泣き出してしまいそうなヒロインに、青年はそっと頭を撫でた。
青年
「さっき見たでしょ?
君の持っていた魔法の薬で、さっきの男の人が助かったって」
ヒロインは顔をしかめながら頷いた。
青年
「きっと強くなれるおまじないが掛かっているのかも!
だって、コレを食べた君スッゴク美味しくて嬉しそうな顔してたよ?」
青年にそう言われ、確かに口の中に入れた瞬間幸せな気持ちになった。
ヒロインは青年から瓶を受け取ると、ニコッと笑った。
ヒロイン
「うん! きっとおまじないが掛かってる!
お兄ちゃんありがとう」
その可愛い笑顔に青年も笑顔になった。
青年
「こちらこそありがとう!
大切な魔法の薬を分けてくれて、本当に助かった!」
ヒロイン
「お兄ちゃんはお医者さん?」
青年
「まだ勉強中なんだ。
早く立派な医者になって、困ってる人を助けたいんだけど…」
そう言われヒロインは不思議そうに青年を見つめた。
ヒロイン
「さっきのおじさん助けたのに、お医者さんじゃないの?
立派じゃないとダメだから?」
無垢なヒロインの瞑らな瞳に、青年は心を打たれた。
青年
「…そうだね…
立派じゃなくても、いいお医者さんはいっぱいいるね。
ふふっ、私もまだまだだなぁ…」
ヒロイン
「? お兄ちゃんはいいお医者さんだよ?
さっきのおじさんも、私の事も元気にしてくれたもん!」
こんな小さい子に諭されてしまい、青年は少し苦笑いをした。
するとヒロインは慌てて瓶のフタを開けた。
ヒロイン
「コレ、あげる!
お兄ちゃんの夢が叶うように」
青年
「!!」
小さい掌に、色とりどりの金平糖が握られていた。
青年はとっても優しい気持ちになり、「ありがとう」と言って受け取った。
ヒロインは嬉しくて、スキップをしながら青年にバイバイをして家路についた。
青年の連れ
「ソウシ! ここにいたのか…
みんな先に行ってるぞ?」
ソウシ
「あぁごめん、すぐ行く」
ソウシは掌に乗る金平糖を見つめた。
ソウシ
「…魔法の薬か…」
そして「ふっ」と笑うと、金平糖を口に放り込んだ。