シュガー☆ソウル
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なんて心地のいい日なんだろう。
まだしっかりと夜が明けきらない
朝もやに包まれた甲板で、ヒロインはデッキに座り
ユラユラと揺れる船体に体を預けていた。
ナギは既に朝食の準備をしているが、ヒロインは甲板に置いてある食材を取りに出てきていた。
しかし、清々しくひんやりとした空気に
眠気の飛んでいなかったヒロインは、
リュウガにもらった瓶を眺めている内に
いつの間にかウトウトと眠りに落ちていた。
そして、久しぶりにあの夢を見た…。
しばらく見ることはなかったし、思い出しもしなかった。
きっとリュウガにもらったコレのせいだろう。
*****
*****
*****
あれは確か8歳くらいだったはず…。
ヒロインは、またクラスメイトの男の子に泣かされて
何だか泣き顔を母親に見せるのが嫌で、トボトボと街を歩いていた。
もうすぐ夕方で、街は賑わっていて
誰もこんな子供の泣いてる所を構ってくれるはずもなかった。
どうしようもなく歩いていると、いつの間にか港まで歩いてきてしまった。
いつも母親から港には海賊がいるから絶対ひとりでいかない事と
何度となく言い聞かされていた。
それを思い出し、急に不安になり
とても悪い事をしているようで走って家に帰ろうと振り返った。
だが、ついさっき入港した船から荒々しい姿の男達がゾロゾロと降りてきて
ヒロインはあっという間に、その波に飲まれてしまった。
右を見ても左を見ても、体中に傷やタトゥーの入った腕が見え
怖くなり後ずさると、ドンッと誰かにぶつかってしまった。
男
「オイオイ! ガキ!!
どこ見て歩いてるんだ!?」
ヒロイン
「!!!」
こんな怖い顔の男は今まで見た事もない。
パン屋のおじさんも、八百屋のおじいさんも怖いけど
こんなに恐ろしいと思う男は初めてだ。
ヒロインは声も出ず、目にいっぱい涙を浮かべて立ち尽くしていると
人混みの中から陽気な声がした。
???
「やめろって!
ホラ、お前のツラ見てビビってんじゃねぇか!」
派手な鳥の羽をつけた三角帽をかぶり、白いシャツは胸元まで開いており
そこからジャラジャラと宝石が覗いる。
影になり顔がよく見えないが、その男がいきなりヒロインの手を掴むと
グッと引き寄せ、抱き上げてくれた。
???
「どぉした~?
こんな可愛いお嬢ちゃんが、こんなトコにひとりか?」
抱き上げられて初めて見たその男の顔は、なんとも優しく
顎鬚がよく似合う青年だった。
ヒロイン
「………」
ヒゲの男
「んー? なんだ泣いてたのか?
悪い男にでも泣かされたか?」
二カッと笑顔を見せるも、ヒロインはこんな風に抱き上げられるのも初めてだし
知らない男にこんな事をされてしまい固まっていた。
ヒゲの男
「ふはっそりゃ怖いよな?」
男はそう言うと、そっと地面に降ろしてくれた。
そして膝を曲げて目線をヒロインの高さに合わせてくれた。
ヒゲの男
「泣くな? 誰かにいじめられたのか?」
心配してくれる男の優しさが伝わり、ヒロインはやっと口を開いた。
ヒロイン
「…クラスの男の子がイジワル言うの…」
すると男はニッコリ笑って、ガシガシッと頭を撫でてきた。
ヒゲの男
「がぁはっはっ!
そいつはお前の事好きなんだ!」
ヒロイン
「そんな事ないもん!
いっつもイジワル言って、からかうんだもん」
ヒゲの男
「そうか… そんじゃお前が泣かなくていいように
とっておきの魔法の薬をやる」
ヒロイン
「魔法の薬?」
涙目のヒロインが何だろうと首を傾げると、男は中くらいの瓶を取り出し
ヒロインに渡した。
中にはカラフルな金平糖がぎっしり入っていた。
ヒロイン
「コレ…なぁに?」
貧しいヒロインには、金平糖は初めて見るものだった。
ヒゲの男
「それは、お前が困った時や泣きたい時に
強くしてくれる薬だ。
今度いじめてきたら、コイツを食べて言い返してやれ!」
子供のヒロインは、本当に魔法に掛かったように
空に瓶を掲げて、キラキラと輝く金平糖を見つめた。
ヒゲの男
「ふっじゃあな?」
男はそう言うと立ち上がって歩き出そうとした。
ヒロインは慌ててその男のズボンを掴んだ。
ヒゲの男
「ん? なんだ?」
ヒロイン
「ありがと…」
泣いていた顔が、ぱぁっと周りに花が咲いたようににこやかに笑い
可愛く男を見上げていた。
男は優しくポンッと頭に手を置くと、笑いながら言った。
ヒゲの男
「お礼ならあと10年したら会いに来て言ってくれ?
海賊王って言って探し回ればすぐ見つかるぞ?
お前ならとびきりの美人になりそうだ!」
???
「オーイ、リュウガー!
一体このオレ様をどれだけ待たせる気だ!
この優美なオレ様を街の女たちがどれだけ待ち侘びているか知っているだろう」
その声に苦笑いを浮かべると
男はそのまま人混みに紛れ、どこかへ消えてしまった。
ヒロイン
「かいぞくお…?」
何の事だろう。
意味はさっぱり理解出来なかったが、魔法の薬を手に入れた今
ヒロインの心は躍っていた。
知らない人からモノをもらってはダメと言われていたが
コレは誰にも言わない秘密にしようと決めた。
(だって魔法の薬だもん!)
ヒロインはギュッと瓶を握りしめて街へと引き返して行った。
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