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コンコン
ナギ
「…オレです。 入ります」
リュウガの返事を待たずにナギは部屋へと入った。
リュウガ
「おう、来たか…」
いつもの様子と変わらないリュウガだが、放っている空気が怒っている。
ナギはリュウガのいる椅子の前に立った。
リュウガ
「ヒロインはどうだ?」
ナギ
「…ドクターが処置をしてくれて…」
ナギはヒロインの痛々しい姿を思い出し、言葉が詰まった。
リュウガ
「…そうか…
で? お前は?」
ナギ
「あ…オレは、別に…」
リュウガ
「どっちの頬やられた?」
ナギ
「…こっちです…」
スリッと右の頬を一撫でして見せた。
リュウガ
「…そうか…」
ゆっくりそう言うと、リュウガは突然椅子を立って
思い切りナギの左の頬を殴りつけた。
ナギ
「っ!!!!」
ナギはあまりの勢いに
入ってきたドアの所までよろけてしまった。
リュウガ
「…なんで殴られたか分かってるよな?」
ナギは口の中に広がる血の味を感じながら
口元を手で拭った。
ナギ
「…はい…」
リュウガ
「ヒロインが切られたのはお前のせいだ。
それにあのヒロイン、見ただろ?
切られてるのに、お前を守ろうと海賊の前に立ちはだかってた…」
それは嫌というほど目に焼き付いている。
誰かにああやって守られた事なんて一度もなかったナギ。
命と引き換えにしてでも、自分を守ろうとしてくれた。
リュウガ
「戦いに慣れてるお前とは違う。
どれだけアイツが怖かったか分かるか?」
それもよく分かっている。
前に立っていたヒロインの手も足も、恐怖で震えていた。
そして背中からジワジワと染み出していく赤い血。
ナギは思い出し、グッと目を閉じた。
全て鮮明に残っている。
ナギ
「…分かってます…」
リュウガ
「オレはお前らのつき合い方にどうこう言うつもりはねぇ…
ただ今回のお前は男としても、海賊としても許せねぇ!
反省しろ!!」
襲撃にきた海賊に殴られたより、遥かに痛い。
ズキズキと左の頬が痛み出す。
リュウガ
「…少し頭冷やしてこい!」
そう言うとリュウガは背中を向けてドカリと椅子に座った。
ナギは何も言えなかった。
リュウガの言っている事が正しい。
ナギ
「…はい…失礼します…」
船長室を出ると、ナギはそのまま船尾の方へと向かった。
荒れ果てた船内の掃除や片付けをしなくてはいけない所だが
とてもそんな気になれない。
ナギ
「…はぁ…」
ナギは船尾のデッキで、手すりにもたれうなだれた。
(オレは何をしてるんだ…)
ヒロインに『面倒臭い』と言われ、
自分がここまで落ち込む事に驚いた。
リュウガの言う通り、海賊としても男としても最低だ。
惚れた女に怪我をさせてしまった。
大事には至らなかったが、一歩間違えばヒロインを失う所だった。
考えれば考えるほど、体の震えが止まらない。
ヒロインのいない世界なんて考えられない。
決して恋愛だけに溺れている訳ではない。
だが、ヒロインと気持ちが繋がっている事で
どれだけ強い自分になれたか…
考えても考えても答えなんか出てこない。
あの時言っていた『面倒くさい』の真意を聞きださなくては…
ナギは気持ちを落ち着かせる為、久しぶりにタバコを取り出し火をつけた。
ヒロイン
「ヒロイン…」
(どんな顔をして会えばいいんだ。)
タメ息と一緒に、はき出した紫煙が潮風に吹き散らされた。
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ヒロイン
「ん… っ!!!!」
目を覚ましたヒロインは、背中に走る激痛に顔をしかめた。
一体どのくらい寝ていたのだろう。
痛む体をゆっくりと持ち上げて、ベッドの上に座りこんだ。
ヒロイン
「痛ったぁ… ?…ここ…どこ…?」
見渡した部屋の様子が初めてみる光景だった。
天蓋付きのフカフカのベッドの上にいるヒロイン。
レースのカーテンがふんわりと風になびき、気持ちのいい日差しが差し込んでいる。
外では小鳥の鳴く声がする。
なんてのどかな場所なんだろう…。
明らかにシリウス号の上でない事に戸惑いながらも
ヒロインはベッドを降りようと足を伸ばした。
ヒロイン
「あ…れ?」
いつの間にか、ノースリーブの綿素材で出来たワンピースに着替えていた。
作りもとても上品で、くるぶしまでスッポリと隠れるロングスカートのタイプだ。
とても清潔感がある。
ヒロイン
「…誰が着せてくれたんだろ…皆どこかな?」
ここがどこなのか、それを知る為にもヒロインは窓まで歩かなくてはと思った。
ヒロイン
「いっっっ!!!」
いつものように立ち上がると、背中の傷が引きつるように痛んだ。
くっつき掛けている傷が、衝撃でまた開いてしまった。
痛みに耐えながら、ゆっくりと窓へと歩いた。
考えてみれば、今日までおぼろげな記憶しかない。
襲撃に会った日に、気を失って
気がついた時、確かシリウス号の医務室にいた。
ソウシが背中を消毒してくれている感触を思い出した。
しかしとても話しをする元気がなく、そのまままた目を閉じた。
やっとの事で窓際に着くと、外の様子を伺った。
どこかで見たような景色だ。
するとカチャリとドアの開く音が聞こえ、振り返ると
そこにはエドモンドが驚いた顔で立っていた。
エドモンド
「ヒロイン! もう起きて平気なのか?」
広い部屋の為、エドモンドは小走りでヒロインの元へと駆け寄ってくる。
ヒロイン
「エドさん… あのここは…」
エドモンド
「私の城だ!」
どうりでエドモンドの服装が、王様らしい格好をしているはずだ。
ヒロイン
「どうして…?」
エドモンド
「お前が高熱を出してな…
ソウシが安静に出来て、薬品をすぐに手に入れられる環境がいいと言うので
城へと戻ってきたのだ」
ヒロイン
「そうだったんですか… あの皆は?」
エドモンド
「城の中にいるぞ?」
それを聞いて安心した。
今回無謀な事をしてしまい、置いていかれたのではと不安だった。
ヒロイン
「ナギは…ナギはどこにいますか?」
するとエドモンドは悲しい顔をした。
エドモンド
「…お前は、まだナギと言うのか?」
ヒロイン
「え?」
エドモンド
「…ナギのせいでお前はこんな事になったのだろう?!
なのに、そんな男の居場所をどうして知りたがる!」
悔しそうな怒りを浮かべながら、エドモンドは大声でそう言った。
ヒロイン
「エドさ…」
エドモンド
「もうあんな場所にお前を置いておくなんてできない!
私の傍にいろ!」
力任せに抱き寄せられ、ふんわりと香水の匂いが薫る
エドモンドの胸に埋まった。
ヒロイン
「エ、エドさっ…あの痛い…!」
背中に回した手が、傷に触れる。
離れようとエドモンドの胸を押し返そうとも、これまた傷が痛み、
とても力を入れる事ができない。
エドモンド
「ここにいると言うまで離さない」
どうしようかと戸惑っていると、救いの声が聞こえた。
ソウシ
「コラ! 怪我人に無茶をさせない事!」
そう言って新しい包帯とガーゼを持って、ソウシが部屋に入ってきた。
エドモンド
「…ソウシ!」
ソウシ
「やぁヒロインちゃん、おはよう!
気分はどう?」
なんとも爽やかな笑顔でヒロインの手を取ると
腰を抱いて支えるようにベッドへと連れて行ってくれた。
あっさりとエドモンドの胸から離れる事が出来た。
ソウシ
「エド? 執事さんが探してたよ?
何度も様子見に来てたでしょ?
エドが城にいない間に溜まった仕事が山積みらしいよ?」
エドモンドは決まり悪そうに顔をしかめると、
「また来る」と言って部屋を出て行った。
ヒロイン
「ソウシさん…ありがとうございました」
ソウシ
「大丈夫?」
ポスッとベッドの縁に座らされると、ヒロインはホッと安心した。
やはり立っているのは、少し体に堪える。
ヒロイン
「はい… ソウシさん!
あのナギは… ナギはどこにいますか?」
不安そうな表情を見て、ソウシは優しく笑った。
ソウシ
「うーん…ナギは落ち込んでるから、今は会いたくないのかも…」
ヒロイン
「え? 落ち込んでる?」
ソウシ
「うつ伏せに寝てくれる?
消毒するね?」
ソウシに支えられながら、そっとベッドへ寝かせられる。
フカフカのベッドに顔を埋めると、ヒロインは尚もソウシに聞いた。
ヒロイン
「ソウシさん! ナギが落ち込んでいるって…どうしてですか?」
ソウシはワンピースのチャックをジーっと腰まで降ろした。
医者だからそんな感情を持ってはいけないが、細く滑らかな色の白い肌を見ると
一人占めしたくなる衝動に駆られる。
ソウシ
「ヒロインちゃん…今回はこの程度で済んだけど
二度とあんな事しちゃいけないよ?」
ヒロイン
「…はい…」
ソウシ
「もしヒロインちゃんが命でも落としていたら、ナギは落ち込むどころか
どうなっちゃうか分からないよ…」
ヒロイン
「あっっぅ~~!」
ソウシが消毒液を浸したガーゼを傷口に当てた。
ソウシ
「ごめん! あ~ぁ、エドのせいで少し傷口開いてる!」
ヒロイン
「あっ違います! 私が起き上がる時…」
ソウシ
「そっか… うん、大分よくなってきてる!
でももう少し安静にしててね?」
ヒロイン
「皆さんはここに泊まっているんですか?」
ソウシ
「うん、2日前からね」
ヒロイン
「2日? 私2日も寝てたんですか?」
ソウシ
「時々うなされて起きたりはしてたけど、熱が出てたから覚えてないでしょ?」
確かに全然覚えていない。
ソウシ
「ふふっ、そろそろオナカも空く頃でしょ?
ナギに持って来させるね?」
ソウシに促され前を向いて包帯を巻かれているヒロインは、
その言葉に思わず振り向いた。
ヒロイン
「ホントですか!?」
下着をつけていないのも忘れて、ヒロインは振り返ってしまった。
ソウシの視線が胸の方へと降りる。
ヒロイン
「きゃっ!」
包帯が巻かれているので、しっかり見られたわけではないが
慌ててヒロインは胸を隠した。
ソウシ
「ふふっ可愛いねヒロインちゃん」
ソウシは包帯から溢れる柔らかそうな胸を見て
エドモンドのように抱きしめたいと思わずにはいられなかった。