protect love
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
しばらくすると、予想通り
大勢の海賊たちがシリウス号に乗り込んできた。
襲撃されるのは久しぶりの事だ。
倉庫の天井をギシギシと音を立てながら歩いていく足音や
雄叫びや銃声が船内に響き渡っている。
いつもこの時間ほど苦痛な時間はない。
何も出来ず静まり返るまでじっと身を潜めているしかできない。
女の自分が見つかれば、皆の足手まといになる。
エドモンド
「…皆は大丈夫だろうか…」
ヒロイン
「皆さん強いですから…」
そう言いながらも、いつも祈っている。
皆が怪我をしないで、無事にすみますようにと。
エドモンド
「それはそうだが…」
海賊1
「誰かいるのか!?」
乗り込んできた海賊の一人が倉庫まで来たらしい。
エドモンドとヒロインは思わず息を飲んだ。
海賊は一通り倉庫の中を見渡すと、酒の瓶をひとつ掴み階段を登って行った。
海賊1
「おぉーい!! ここに酒が沢山あるぞ~!!」
大きな声が聞こえた。
という事は、この後他の海賊が来る可能性があるという事だ。
ヒロイン
「エドさん、ここは危険かもしれません。
場所移りましょう!」
エドモンド
「そうだな」
用心して階段を登ると、甲板の方から争う声が聞こえていた。
心配で立ち止まっていると、船尾の方の入り口から
大柄な海賊が乗り込んできた。
海賊2
「おぉお!! なんだよシリウスには女がいるのか?!」
海賊3
「まだガキじゃねぇか?」
見つかってしまった。
ハヤテ
「オイお前ら! よそ見してんなよ?」
更に後ろからハヤテがやってきた。
ひとりの海賊はハヤテと争っているが、もう一人の海賊がヒロインをさらおうと手を伸ばしてくる。
ハヤテ
「ヒロイン!! 逃げろ!」
その声よりも早く、海賊の剣がヒロインに振り下ろされる。
ヒロイン
「!!!」
ギュッと目を瞑っていると、カキンっと金属のぶつかる音がした。
そしてゆっくり目を開けると、細い剣を手に持ったエドモンドが海賊の剣を弾き返していた。
ハヤテ
「おぉ! エドやるじゃねぇか!」
エドモンド
「私だって、剣術くらい訓練を受けているのだ!
見くびるな!」
そう言ってハヤテとエドモンドは、あっさりと2人の海賊をやっつけてしまった。
ハヤテ
「お前スゲェな!」
エドモンド
「ハヤテもな! 剣を2本も操るとは大したものだ!」
似た者同士の2人は笑い合うと、そのまま甲板へと飛び出して行った。
ハヤテ
「お前はそこで隠れてろよ!?」
ハヤテにそう言われ、近くの部屋に入り
窓からそっと甲板の様子を伺った。
やはり圧倒的にシリウスメンバーが押している。
このままの流れなら、勝てるはずだ。
そう思って、暴れる男たちの中からナギを探しだした。
そしてヒロインは驚いた。
ナギはいつになく気迫がなく、2人の海賊に追い込まれていた。
ヒロインは思わず窓に食い入る様に顔を押し付けた。
ヒロイン
「ナギ?」
もういてもたってもいられなかった。
ほとんど無意識と言ってもいい。
ヒロインは部屋を飛び出し、暴れ狂う海賊たちの中へと走りだした。
シン
「ヒロイン?」
ソウシ
「ヒロインちゃん!!」
メンバーは驚いて声を掛けるが、ヒロインは止まらない。
今目に映っているナギは、右の頬を海賊のひとりに拳で殴られているところだ。
それでもナギは抵抗すらしてないように見える。
海賊1
「ははっ何だコイツ!
シリウス海賊団ってのは、こんな弱いヤツでもなれるのか?」
海賊2
「殴られ続けるのは痛ぇだろ?
そろそろ楽になりな!」
そう言ってナギに向かって大型の剣を振り下ろした。
ヒロイン
「ダメぇ!!!!!」
ヒロインは咄嗟にナギを守るように覆いかぶさった。
ナギは何が起きたのか、目の前が真っ白になった。
ナギ
「ヒロイン…?」
ナギは自分を抱きしめているヒロインのぬくもりを感じ
そこで意識が戻った。
ナギ
「ヒロイン!」
動かないヒロインに声を掛ける。
するとヒロインはゆっくりと立ち上がって、ナギに背中を見せると
両手を広げて海賊たちを睨みつけた。
海賊1
「おいおいおい、なんだいお嬢ちゃん?」
ヒロイン
「…もうやめて…」
海賊2
「あぁん? なんだ?
コイツを助けに来たのか?」
ヒロイン
「ナギを傷つけないで!」
ナギは前に立つヒロインを見上げて、目を見開いた。
ヒロインの背中が真っ赤な血で染まっている。
さっき自分を守る為に、切られたのか?
海賊2
「ひゃはは! オイ、お前!
こんなガキの女に守られて、恥ずかしくねぇのかよ!」
海賊1
「ガキでも上物じゃねぇか!
船に持って帰って可愛がってもいいな!へへっ」
痛みと恐怖で体がガクガク震える。
すると後ろでナギが立ち上がる気配がした。
ナギ
「…あぁ…そうだな…
オレが守ってやらなきゃいけねぇのに…」
ナギはヒロインの肩を掴み、後ろに下がらせると
思い切り睨みつけた。
ナギ
「ここに来た事を後悔しろ!!」
ナギの背中を見ながら、ヒロインは意識が遠のいていった。
ナギは怒りに任せて海賊たちを殴り続けた。
ソウシ
「ナギ! ストップ!!!
それ以上したら死んじゃうよ!」
ソウシに体を止められ、やっと正気に戻った。
海賊たちはもはや話す事が出来ないくらい、打ちのめされ
意識も朦朧としているようだ。
他の海賊たちも勝ち目がないと感じたのか、やられた海賊たちを抱えながら
そそくさと引き上げて行った。
息が切れ、肩を上下しながらナギは立ちすくんでいた。
とても振り返る事ができない。
ヒロインはどうなっているんだ。
ソウシ
「ヒロインちゃん!? 聞こえる?」
ソウシの声に返事はない。
ソウシ
「ナギ! ヒロインちゃん医務室運んで!
背中の出血、早く止めないと!!」
・・・・・・・・・・・・・・・
それからどれだけ時間が経ったのだろう。
ナギは医務室の外で、壁にもたれながら床に座り込んでいた。
手と服にはヒロインの血がベットリとついたままだ。
トワ
「…ナギさん…タオル濡らしてきましたよ?
拭いてください。
頬も冷やさないと…」
トワが気を利かせてタオルを差し出したが、ナギは微動だにしない。
トワは戸惑いながらもタオルを引っ込めた。
(オレは一体何をしてるんだ…)
ナギは頭を抱えて俯いた。
すると医務室のドアが開いた。
ソウシ
「…終わったよ?
ナギも頬の手当てしないとね」
ソウシに促され、ナギはフラフラとしながら医務室に入った。
ベッドにうつ伏せの状態で眠っているヒロインがいた。
背中から胸に掛けて包帯でグルグルと巻かれている。
その姿を見て、ナギの胸は痛んだ。
ソウシ
「…大丈夫だよ。
傷は右の肩から左の肩甲骨の下までで長いけど、そんなに深くないから…
ほら、ナギ座って?」
言われるがまま椅子に腰を下ろす。
ソウシは腫れた頬と、切れた唇の手当てをした。
ソウシ
「…心ここに有らずって感じだね?」
その言葉にやっとナギは反応した。
ナギ
「…オレが…ヒロインを…」
ソウシ
「…そうだね。
今日のナギはおかしかった。
戦いの場で気を抜くなんてナギらしくない。
何を考えていたの?」
ナギ
「それは…」
ナギはチラリとベッドに寝ているヒロインを見た。
その視線に気づき、ソウシは「やっぱり」とタメ息をついた。
ソウシ
「ナギ? 何があったかは知らないけど…」
コンコン…
ソウシの言葉を遮る様にドアをノックする音が部屋に響いた。
シン
「ナギ、船長がお呼びだ」
ナギはのっそりと椅子から立ち上がった。
何を言われるかくらい分かっている。
ソウシ
「ナギ、頬は腫れてるだけみたいだけど
ちゃんと冷やしてね?」
ナギ
「…ありがとうございます…」
ナギは医務室を出るとリュウガのいる船長室へと向かった。