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侍女
「お湯をお持ちしました」
ナギは立ち上がると、ドアの所まで行き
大きめの洗面器を受け取ると、ヒロインの元へと戻ってきた。
そしてさっきと同じ体勢で、ベッドに腰掛けるヒロインの前に膝をついた。
ナギ
「ホラ、足かせよ」
ヒロイン
「え?」
ナギはヒロインの右足をそっと掴むと、洗面器の中へと沈めた。
気持ちのいいぬるま湯で、じんわりと温かさが体を包む。
ヒロイン
「あ…自分で…!」
ナギ
「無理だろ? 屈むと傷口開くぞ?」
チャポッとナギの大きな手が、擦り切れた傷や汚れを落としてくれる。
その姿を見て、ヒロインはクスクスと笑った。
ナギ
「あ?」
ヒロイン
「ふふっ私、お姫様みたい」
ナギ
「…オレが召使いって事か?」
ヒロイン
「!! そ、そういう意味じゃなくて!」
一瞬不機嫌そうに顔をしかめたナギだが、すぐに「ふっ」と笑った。
ナギ
「…こういう態度、出しちまうからいけねぇんだな…」
ヒロイン
「え?」
ナギは顔を上げず、目線を下に落としたまま話し続けた。
ナギ
「…襲撃のあった日…お前とエドが話してるの少し立ち聞きした…
オレとつき合うのは面倒か?」
ヒロイン
「え? 何それ…」
ナギ
「お前、言ってただろ?
面倒臭いって…」
何の事を言っているのか分からずに、あの日の事を思い出す内に
ヒロインは「あっ!」と声を上げた。
ヒロイン
「あれは面倒臭いって思ったんじゃなくて、
エドさんが思う面倒臭い事も、ナギとだったらそんな風に思わないって…
ナギとだったら『面倒臭い』も『幸せ』に変わるって話したかったの…」
ナギ
「………」
ヒロイン
「? あれ?
ナギ?」
反応のないナギに、ヒロインは不安げに話しかけた。
するとナギは顔を赤めながら、照れた表情を見せた。
ナギ
「…それ…ホントか?」
ヒロイン
「ホントだよ!
ナギとつき合ってて、面倒臭いなんて思ったことないよ!」
ナギ
「そうか… てっきり…」
ヒロイン
「…まさか…それで襲撃の時、元気なかったの?」
ナギ
「………」
ナギが黙り込んだのを見て、ヒロインは驚いた。
ヒロイン
「!? ナギ?」
ナギは右足をタオルの上に置くと、左足を洗面器に浸けた。
ナギ
「…知らなかったんだ…お前がいる事がオレの中でこんなに大きくなってる事…
それに…」
ヒロイン
「? それに?」
言葉を止めたナギは、ヒロインの左足もタオルの上に乗せると
恥ずかしそうに見上げてきた。
ナギ
「お前に怪我までさせといて言えた事じゃないが…
あんな風に誰かに守られたの…初めてだった…」
信じられない。
あのナギが、いつも何でも器用にできて
怖いものなんて何もないって顔してるナギが
こんなに可愛い事を言っている。
見つめてくる茶色の瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
ヒロインは前に座るナギの両手を取った。
ヒロイン
「ナギ? …あの…勝手に飛び出してごめんなさい。
私はナギや皆みたいに強くはないから戦えないけど…
いつだってナギを守りたいよ?
それに、そうやって感情を現わしてくれると、ナギと近くなれたような気がして嬉しいの」
ナギ
「ヒロイン…」
ヒロイン
「だって、船に乗り始めの頃なんて
ナギ、ムスーってしてるだけで何考えてるか分からなかったし…」
ナギ
「しょうがねぇだろ?!」
ヒロイン
「ふふっうん! だから今はとっても嬉しいの!
ナギが怒ったり笑ったりしてくれるのが♡」
ナギ
「…そうか…
だが、もうあんな風にするのはやめてくれ…
お前を失ったらオレ…」
ナギの目が不安げに泳いだ。
ヒロイン
「うん、もうしない!
でも私もナギが思ってくれるように、ナギを失いたくないの…
だから、私もナギを守りたいしずっと一緒にいたい…」
ナギ
「ヒロイン…」
ナギは今まで、こんな風に思ってくれる人に会った事がない。
こんなにも大切に思ってくれる。
全く慣れていないナギは、どう返事をしたらいいか戸惑った。
しかし間違いなく、ナギの胸は温かく癒されていった。
こんな感情が湧くなんて驚きだ。
ヒロイン
「だから、これからもいっぱい話したり、ケンカしたり
一緒に色んな事感じていこうね?」
ヒロインの優しさがどこまでも愛しくて
ナギは自然と笑みが浮かんだ。
ナギ
「あぁ」
そしてナギの瞳が近づき、ふわっと唇が重なった。
ヒロイン
「ナギ…大好き…」
ナギ
「オレもだ…」
熱を帯びた目で見つめられたナギは、もうヒロインを感じずにはいられない。
背中の傷に気を使いながら、ゆっくりとベッドへ寝かせると
ギシッとベッドの上に乗り、覆いかぶさるようにヒロインを見つめた。
ナギ
「…ヒロイン…」
ヒロインは胸がドキドキと鳴りだした。
ナギと体を結ぶのはいつ振りだろう。
ヒロイン
「ナギ…」
そっと目を閉じた。
すると…
ソウシ
「はーいそこまで~!!」
メンバー
「「うわぁっっ!!!」」
突然部屋のドアが開き、シリウスメンバーがなだれ込んできた。
ヒロイン
「!!? み、皆…」
リュウガ
「こらソウシ!!!
いきなりドアを開けるヤツがあるか!」
ハヤテ
「そうだよ! いってぇ~」
シン
「早く起きろ! お前のクソ重い体をオレの上に乗せるな!」
ハヤテ
「あんだと!?」
入口で重なり合って倒れているメンバーを見て、ナギもヒロインもぼう然としていた。
そしてソウシは不機嫌そうに腕組みをしながらベッドまで歩いてくる。
ソウシ
「それ以上はまだダメだよ?!
あんな無茶しといて、これ以上傷口開いても
手当しないからね?」
いつにない剣幕のソウシ。
ベッドで固まったままのナギとヒロインは、慌てて体を起こした。
ヒロイン
「あの…これはその…」
トワ
「わわっ!こんなトコ覗いてちゃダメですよ!」
トワは両手を目に当てているが、指の間がかなり開いている。
ソウシ
「ナギ! 分かるよね?」
確かにそうだとナギはしょんぼりとするヒロインの頭にポンっと手を置いて優しく撫でると
ベッドから降りた。
リュウガ
「なんだよぉ、そこで引きさがんなよナギ!」
シン
「…見かけによらず、お前は従順だな?」
ハヤテ
「ホント! ヒロインの事心配で海賊に殴られたんだろ?
あのナギ兄が…信じらんねぇ!」
皆が好きなように、言いたい事を言っている。
だが、反論はできない。
ナギは決まり悪そうに「チッ」と舌打ちをした。
リュウガ
「オレだったら、そのまま続けてヤッてたな!
見たいヤツはそこで見てろってな!」
リュウガは何とも爽やかな笑顔で、さらりとスゴイ事を言った。
ヒロイン
「あっあの! たくさん心配掛けてすみませんでした。
もうあんな事しません!
でも…私もシリウスのメンバーとして、出来る事をしたいんです!
なので…女だからとか、守られてるだけは嫌なんです!」
いつも胸の奥で申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた言葉を吐き出した。
ナギ
「ヒロイン…」
真剣な眼差しに、メンバー全員が柔らかい笑顔を浮かべた。
リュウガ
「そうか。 そういう気持ちを持ってるんだったら心配ねぇな!
くははっ! 動揺しまくってるナギより、よっぽど度胸があるじゃねぇか!!」
リュウガは面白そうに笑う。
ナギはリュウガを睨みつけると、そのままヒロインの横に立ち肩を抱いた。
ナギ
「今回はオレも反省してる…
だが、覗きは許さねぇ!
今日の夕飯、ここの料理人と一緒に作ったスペシャルメニューだが
お前らいらねぇって事でいいな?」
リュウガ
「なっ! 何言ってんだ!」
ハヤテ
「そうだぞ! メシを持ち出してくるなんて汚ねぇぞ!」
シン
「子供みたいな事…」
ナギ
「どうせオレは、従順で動揺してるガキだからな」
リュウガ&シン&ハヤテ
「そっそれは!」
ソウシ
「ふふっ観念したら?
ナギ怒らせたら怖いって知ってるのに…」
ハヤテ
「なに他人事っぽく言ってんすか!?
ソウシさんだって、ヒロインの背中がキレイで…って言ってたじゃんか!」
その言葉にナギはキッとソウシを睨みつけた。
ソウシ
「ハヤテ…」
メンバー全員が何も言い返せなくなり、
どうしたものかと、考えていると
廊下を歩いてきたエドモンドが
ヒロインの部屋に集まっているメンバーを見つけ、陽気な声で話しかけた。
エドモンド
「やぁ皆! どうだナギとヒロインのいいところ見れたのか?!
私もぜひ参加したかった!!」
メンバー
「「!!!」」
そしてゴクリと唾を飲み、ゆっくりとナギを見ると
ナギは何とも恐ろしいオーラに包まれている。
ナギ
「お前ら、この先メシは自分で作れ!!」
シン
「船長!ここは船長がビシッと分からせるべきです」
リュウガ
「そ、そうだな!
ゴホン、ナギ海賊たる者覗きのひとつやふたつ…」
シン
「船長そういう事じゃ…」
そのいつものメンバーらしいやりとりに、
ヒロインは吹き出してしまった。
こうやって仲間や恋人は、話し合ってぶつかるから
絆が強くなっていくんだと、微笑ましく眺めていた。
ハヤテ
「!? ヒロイン!
お前なに笑ってんだよ!」
ヒロイン
「ふふっ、皆さん大好きです♡」
全員
「「!!?」」
その可愛い笑顔に、誰もが何も言えなくなり
この子がこうして笑ってくれるならと自然と優しい笑みを浮かべたのだった。
☆END☆ おまけ&あとがき⇒