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エドモンド
「よし、ではこの件はそなたに任せよう」
エドモンドはようやくまとまった話しに、ふぅと一息ついて
窓の外を見た。
今日は一日なんていい天気だったのだろう。
今夜はヒロインも一緒に、夕食を食べる事ができるだろうか?
そんな事をぼんやりと考えていると、ガサガサと樫の木が大きく揺れた。
エドモンド
「!!!!?」
そして目に飛び込んできたものは、裸足でワンピースの裾を捲り上げたヒロインの姿だった。
執事
「国王様? どうなさいました?」
エドモンド
「い、いや! なんでもない!!
少し休憩をしよう! 席を立つぞ?」
エドモンドは勢いよく部屋を飛び出した。
・・・・・・・・・・・・・・・
ソウシ
「ヒロインちゃん? そろそろ薬飲む時間だよ?
ゴハン少し食べられ…」
薬を持ってきたソウシは、ベッドにいないヒロインを探したが
大きく開け放たれた窓を見つけた。
ソウシ
「まさか…」
ソウシが窓へと歩きだそうとした瞬間、勢いよくドアが開き
エドモンドがなだれ込んできた。
そしてエドモンドは窓まで一目散に走ると
下を覗き込んだ。
エドモンド
「なんて事だ!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・
ヒロイン
「ん…っと… はぁ…後もう少し…」
なんとか木の枝に足を掛けながら降りてくる事が出来た。
ズキズキと背中が痛むが、ナギに会う為だ。
気合を入れて、次に足を掛ける枝を探したが
どこにも見当たらない。
いつもだったら太い幹に抱きついて、ズルズルと降りる所だが
今の体ではとてもそんな事はできない。
かといって、飛び降りる事も登り直す事も出来ない。
考えなしに降りてきてしまったが、ここからどうしたものかと
ヒロインは立ち止まってしまった。
すると、何も知らないナギが樫の木に向かって歩いて来ている。
ヒロイン
「ナギ!!!!」
ナギ
「?!!」
ナギはヒロインの声が聞こえキョロキョロと辺りを見渡した。
こんな場所でヒロインの声が聞こえるなんて、どうかしてる…
ついに幻聴が聞こえ出したかと、「はぁ…」と重いタメ息をついた。
ヒロイン
「ナギ!」
ナギ
「?! …!!!! ヒロイン!?
お前何してんだ!!!!」
もう一度名前を呼ばれ、ナギは声のする方を見上げると
樫の木の枝に、小さくなって座っているヒロインがいた。
白いワンピースを着ているせいか、本物なのか天使でも見てしまったかと
一瞬頭の中がクラクラした。
木の下に行くと、ようやく本物のヒロインだと確信する事が出来た。
ヒロイン
「あの…降りられなくなっちゃったの…」
ナギ
「降りられなくなったって…どこから降りてきたんだ?!」
そう言うと、ヒロインは黙り込んでしまった。
ナギ
「…まさか、3階の部屋からじゃねぇだろうな?」
ヒロイン
「う…そう…です…」
ナギ
「アホ!何やってんだ!!
傷口ちゃんと塞がってねぇんだろ?!」
久しぶりに会ったというのに、怒ってばかりのナギ。
ヒロインも堪らずに言い返した。
ヒロイン
「ナギがいけないんだもん!
私の事避けるから…」
ナギ
「それは… それは後でいい
手ぇ伸ばせるか?」
ヒロイン
「ん…」
下でナギが見上げながら手を差し出してくれる。
ナギ
「飛べるか?」
ヒロイン
「うん…でも…」
ナギ
「大丈夫だ。 受け止めるから」
ナギの顔を見るまで、恐怖心なんて湧かなかったのに
安心したせいか、こんな高さですら怖いと感じてしまう。
ナギ
「ヒロイン?」
ヒロイン
「い、行くよ?」
ナギ
「あぁ」
ギュッと唇を噛み、ナギの手を掴もうとしたが
ピキッと背中の傷が引きつり
そのまま落ちてしまった。
ヒロイン
「きゃぁ!」
ナギ
「ヒロイン!!!!」
ドサッという音と共に、そのまま芝生へと倒れ込んだ2人。
ナギ
「ってぇ… 大丈夫か?」
ヒロイン
「………」
ナギの胸の上に抱かれるように倒れ込んだヒロイン。
どこも痛いところなんてなかった。
ナギ
「? どうした?
どこか痛くしたか?」
返事が返ってこない事に不安を感じ、
ナギはヒロインの髪をかき上げ、顔を覗いた。
ヒロイン
「…ナギだぁ… やっと会えた…」
ギュッとしがみつくヒロイン。
ナギはその可愛さに胸が締めつけられた。
会いたかったのは自分も一緒だ。
こんな事なら、悩まずに会いに行けば良かった。
ナギはヒロインの髪を優しく撫で、そっとオデコにキスをした。
ナギ
「…ごめん…な?」
ヒロイン
「…良かった…ナギが無事で…」
芝生の上で抱き合う2人を、大慌てで駆けつけたソウシとエドモンドは
物陰からそっと見つめていた。
ソウシ
「あーぁ、安静にって言ったのに…
しょうがないなぁ…クスクス…」
エドモンド
「…ヒロインが海賊だという事を忘れていた…」
ソウシ
「ん?」
今まで会ってきた女が、こうして木を降りたり
裸足で傷だらけになりながらも
好きな男に会いにいくなんて見たことも聞いた事もない。
エドモンド
「…あんなじゃじゃ馬…とても城で大人しくなんかしていないな…」
今回の事で、どれだけ危険と隣り合わせで船に乗っているのかが分かり
ヒロインがどんなに拒んでも、城で生活をさせようとエドモンドは決めていた。
ソウシ
「ふふっ…そうだね。
海賊の私達だって驚く事いっぱいしてくれるからね」
エドモンドは初めて味わう失恋の痛みに、胸の辺りのシャツを握りしめた。
エドモンド
「…それでも気持ちはすぐに消えない…」
顔をしかめながら、エドモンドは抱きしめ合う2人を見つめた。
・・・・・・・・・・・・・・
ヒロイン
「ナギ…は、恥ずかしいよ…!」
ナギ
「しょうがねぇだろ? 裸足で降りてきたお前が悪い」
ナギに抱きかかえられながら、ヒロインは部屋へと向かっていた。
通り過ぎる使用人たちに、驚きの表情とクスクスと笑う声を向けられながら
廊下を歩いていた。
恥ずかしくてギュッと首に回した手に力を入れて
ナギの肩に顔を埋めた。
久しぶりに抱きしめるヒロインを充分に感じているナギは
その行動すら可愛く思えてしまう。
またこうして出来て本当に良かった…
ナギもまた優しい笑みを浮かべ、コツンとヒロインの頭にオデコをつけた。
ナギ
「もうすぐ着くからな?」
ヒロイン
「うん…」
部屋に着くと、ナギはドアの前にいる侍女に足を洗う為にお湯を持ってきて欲しいと頼んだ。
そしてゆっくりとベッドへヒロインを降ろすと、
ナギはその前に膝をついて座った。
ナギ
「大丈夫か?」
ヒロイン
「うん… 重いのにごめんね?」
ナギ
「別に重くねぇ…」
それから沈黙が流れた。
お互いに話さなきゃいけない事があるのに、どちらもなかなかキッカケが掴めず
押し黙ってしまった。
ナギ
「オレ…」
ヒロイン
「私…」
言葉がかぶってしまった。
ナギ
「先に…」
ヒロイン
「先に…」
またしても言葉がかぶり、ナギは堪らず吹き出してしまった。
ナギ
「ぷっ!ふははっマネすんなよ!」
目の前で楽しそうに笑うナギを見て、なんだか泣きたい気持ちになってきたヒロイン。
ナギ
「!?? な、何で泣いてる?
笑った事か?」
ヒロインはふるふると首を振った。
ヒロイン
「んーん…違くて…」
今度は困った表情を浮かべながら見上げてくるナギ。
ナギのひとつひとつの行動が愛しくて、胸がキュンと締めつけられた。
ヒロイン
「ナギとまたこうして笑えて良かった…」
ナギ
「ヒロイン…」
ナギが話しだそうとしたその時、部屋のドアをノックする音が響いた。