drunkard
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お昼前には目的の港に着いた。
久々の陸地という事で、今日は宿屋で一泊する事にしたシリウス一行。
リュウガ
「じゃあ夕飯まで自由行動な?
飯を食う酒場は分かってるよな?」
ハヤテ
「おぉう! ここの街って美味い肉あんだよなぁ」
トワ
「僕、武器屋さん見たいんですけど
ハヤテさんつき合ってくれます?」
ハヤテ
「しょうがねぇなぁ」
ソウシ
「私は薬品を仕入れてくるよ。
今日仕入れておけば、明日の買い出し手伝えるし」
シン
「オレは散策してお宝の情報を仕入れます」
それぞれが船を離れて、自由に過ごす事になった。
ナギとヒロインは、街の中心地にある市場へと向かった。
ヒロイン
「ナギはここの街初めて?」
ナギ
「いや、何回かある」
ヒロイン
「そっか! じゃあお昼ご飯美味しいトコで食べたいな♪」
ナギ
「ふっお前は食う事ばっかだな…」
ナギが小さく笑った顔を見て、ヒロインは少し安心した。
今朝部屋を出てから、ナギの様子がおかしい。
朝食の手伝いをしようとすれば、「座ってろ」と言われ
掃除や洗濯をしていると、「無理するな」と言われた。
なんだか妙に優しい…。
いつもしている仕事だし、今までそんな事言われた事なんてなかったのに…と
ヒロインは不思議に思っていた。
そしていつにも増して、不機嫌な感じがする。
ナギ
「…今日は何でも言う事聞いてやる。
他に何したい?」
ヒロイン
「!?」
本当に今日はどうしたというのだろう。
ナギがこんな事言ってくるなんて、珍しい。
不審に思ったヒロインは、ナギが嫌がるであろう事を
敢えて言ってみる事にした。
ヒロイン
「…ナギと手…繋いで歩きたいな?」
呆れた顔をするか、「なんでだ?」と無愛想に言われるかどっちだろうと思っていると…
ナギ
「ん…」
大きな掌を広げて差し出してきた。
(やっぱりおかしい…)
ヒロインは少し困った顔をして手を重ねた。
ナギは手を取ると、そんなヒロインの気持ちには気付かず
市場へと歩き出した。
賑わう市場をナギと歩く事は、いつもだったらこの上なく楽しい事なのに
今日はとてもそんな気になれない。
ナギは何か隠し事でもしているのだろうか?
美味しそうなフルーツも、いい匂いのする料理も
たくさん目に入るが、何も感じない。
少し前を歩くナギの背中を見つめた。
手を繋いで、距離はこんなに近いのに
ナギのいつもと違う雰囲気に、どうしても気持ちが沈んでしまう。
ナギ
「ヒロイン! ホラお前の好きな串焼きがあるぞ?」
ヒロイン
「うん…」
ナギ
「? どうした?」
ヒロイン
「………」
ヒロインは歩くのを止めて立ち止まった。
ナギ
「ヒロイン?」
ヒロイン
「……ナギこそ…どうしたの?」
ナギ
「あ?」
ヒロイン
「何かあったの? なんかいつもと違う…」
不安そうな瞳でナギを見上げた。
ナギ
「…別に…」
ヒロイン
「ウソ! なんか隠してる!」
痴話喧嘩とも思えるやり取りに、今まで気にもせず通り過ぎて行ってた通行人が
ザワザワと集まりだした。
ナギ
「チッ…」
ナギは繋いだ手を強く引き、人気のない路地裏へと駆け込んだ。
ナギ
「ヒロイン? 大丈夫か?」
何も言わずついて来てくれたが、怒っているのは顔を見なくても分かる。
ナギは観念したように、建物の壁に背中をつけ寄り掛かった。
そして目の前で眉をしかめて、こちらを見ようとしないヒロインを見つめた。
こんな状況だが、怒った顔も可愛いと思ってしまう。
それに自分が優しくした事で不安に思うなんて、
普段の自分がどれだけ愛想がないというのだろうか…?
ナギ
「ヒロイン…」
ヒロイン
「………」
ナギはヒロインの手を引いて、向かい合わせに立たせた。
そして両手をヒロインの腰に回した。
ナギ
「…そんな顔すんなよ…」
なんだか今にも泣き出してしまいそうに、潤んだ瞳で見つめてくる。
ヒロイン
「…私…なんかしちゃった?」
ナギ
「…いや…そうじゃねぇ…」
ヒロイン
「でも…」
暗い顔で俯く姿を見て、ナギはバンダナ越しにガシガシっと頭を掻いて
観念した様に話し出した。
ナギ
「…昨日…お前に無理な事たくさんしたから
体が心配だったし、
オレ優しくお前の事抱けなかったから…
詫びのつもりじゃねぇけど…
お前のしたい事に付き合おうって…」
ヒロイン
「!?」
ナギから出てくる言葉に驚いた。
確かに昨晩、驚くような事をたくさんした。
抵抗もあったが、ナギがとても熱くしてくるので
ヒロイン自身、受け入れて体を結んだ。
なのに、ナギはずっと気に病んでいたのだ。
ナギが止めるのも聞かないで、酔ったと勘違いされるまで飲んだ自分が悪いのに…
ヒロインの方こそ、申し訳ない気持ちになった。
ナギ
「…だから…」
ナギの手が頬に掛かり、そっと上を向かす。
そしてナギと目が合うと、ヒロインの胸は締めつけられた。
ナギ
「悪かった…
不安にさせた事も、あんな風に抱いた事も…
ちゃんと言葉にしなくて悪かった…」
ナギの方こそ泣いてしまいそうだ。
こんなに切ない瞳で見つめられたら、もう何もかも許してしまう。
ヒロイン
「ナギ…」
ナギ
「もうあんな風に抱いたりしねぇから…
嫌だったろ?」
ヒロイン
「…うーうん…
嫌…じゃなかったよ?」
少し恥ずかしそうな表情をしているヒロインを見て、
ナギは聞き間違いかと、目を見開いた。
ナギ
「お前何言って…」
ヒロイン
「朝も言ったけど、嬉しかったよ?
私の方こそ、ナギに絡んで無理矢理してくれて…
ナギ、宴の準備もあって疲れてたのにごめんなさい…」
ナギ
「!?」
ナギは何も言葉が出て来ない。
ヒロイン
「昨日はうまくナギに答えられなかったけど、
2人で気持ちよくなりたいから…
ゆっくり色々教えて欲しい…な…
…って、私こんな昼間から何言ってるんだろ!!」
恥ずかしさが頂点に達し、耳まで真っ赤になったヒロインは
ナギの胸に飛び込んだ。
大好きな彼女にこんな事を言われて歓ばない男がいるだろうか?
ナギは可愛くて、愛しくて、ギュウ~っと力強くヒロインを抱きしめた。
ヒロイン
「ん…ナギ苦し…」
ナギ
「…ありがとな…」
ヒロイン
「え?」
ナギ
「…大好き…だからな?」
ヒロイン
「!?」
ヒロインは驚いてナギの胸から慌てて顔を上げた。
ナギ
「なんだ?」
ヒロイン
「ナギ? まだ何か隠してるの?」
ナギ
「あ? 何でだよ?」
ヒロイン
「ナギがこんな所でそんな事言うのおかしいもん!」
またしても不安そうな表情に変わるヒロインを見て
ナギは「ふっ」と微笑んだ。
そしてヒロインの鼻をギュッと摘んだ。
ヒロイン
「いっ!!」
ナギ
「アホ! オレをなんだと思ってる?」
ヒロイン
「ごめんなさい~!!」
顔をしかめて謝るヒロインを見て、ナギは手を緩めた。
ヒロインは鼻を擦りながらナギに言った。
ヒロイン
「もぉ…痛よぉ。。
…でも…もう普通にしてね?
気にしたりしないで?」
上目使いに見上げる顔を見て、ナギは優しく笑った。
ナギ
「あぁ…
…だが、体…大丈夫か?」
気付かれないように普通にしているつもりだろうが、ふとした瞬間辛そうにしている表情が見え
ナギは一番心配していた。
ヒロイン
「…えと…少し筋肉痛…かな?」
ナギ
「………」
恥ずかしそうに言うヒロインを見て、昨晩の情事を思い出してしまうナギ。
ヒロイン
「!? ナギ…もしかして思い出してる…?」
ナギ
「…いや…」
ヒロイン
「うそぉ! 今絶対思い出してた!!」
見透かされてしまい、ナギは決まり悪く
照れた顔をした。
ナギ
「…悪いかよ…」
ヒロイン
「!?」
ナギはヒロインを見つめた。
ナギ
「お前はオレのもんだろ?
…オレがどう思おうが勝手だろ!?」
ヒロインは驚いた。
なんて理屈だろう…。
それでも開き直ったように言ってきたナギが
拗ねた子供の様でなんとも可愛かった。
ヒロイン
「ふっ…ふふっクスクス…」
ナギ
「あ?! もぅいい!!
オラ行くぞ! 飯食うんだろ?!」
グッと体を離し、市場の並ぶ通りへ出ようとするナギ。
ヒロイン
「あっ!」
ヒロインは慌てて引き止めた。
ナギ
「なんだ?」
ヒロイン
「手…繋いでくれるんでしょ?」
ヒロインは掌をナギに向けて広げた。
ナギ
「…普通にしろって言ったのはお前だろ?」
その通りだ。
普段のナギはこんな所で手を繋いでくれなんかしない。
ヒロイン
「うん。
でもこれだけは有効なの!」
ナギ
「ふっなんだよそれ…」
ナギは頑固な表情で、尚も手をズイッと差し出してくるヒロインを見て笑ってしまった。
ナギ
「…ったくお前は… …今日だけだからな?」
ヒロイン
「!! うん♡」
ナギの大きな手に包まれ、わだかまりの溶けた2人の心は
いつもよりもずっとずっと近くに感じる事ができた。