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船に着くと、ナギの言っていた通り
他のメンバーが揃っていた。
ハヤテ
「おせぇよ!!」
ヒロイン
「すみません! みなさん早くないですか?
もう手掛かりが…」
シン
「手掛かりも何も、思った通りだ…」
シンの言葉に、ナギは「チッ」と舌打ちをした。
リュウガ
「全員揃った事だし、いっちょお城へと行くか!」
リュウガの言葉に全員が頷く。
ヒロイン
「ちょ、ちょっと待ってください!
お城って…? 何しに行くんですか??」
歩き出そうとしているメンバーが全員振り返る。
一番近くにいたリュウガを不安そうに見上げると
頬に薄っすら口紅の跡がついていた。
ソウシ
「…そうだよね…
ヒロインちゃんには話しておかないと…」
トワ
「そうですね!! ヒロインさんが決める事ですし…」
ヒロイン
「え?」
トワもナギと同じような事を言っている。
一体何の事を言っているのだろう。
リュウガ
「ヒロイン、お前はこれから城で国王と会う」
ヒロイン
「えっ? 国王ですか!?」
ソウシ
「さっき港に着いた時言ったよね?
ここの国王がまだ若いって…」
ヒロインはコクリと頷いて、ナギに視線を送った。
ナギは腕組みをしながら、不機嫌な表情を浮かべている。
リュウガ
「その国王が、今結婚相手を探している」
ヒロイン
「? はい…」
それがなんだと言うんだろうか…
シン
「お前は国王に目をつけられたんだ」
シンの言葉の意味が分からず、ポカンとしていると
ポンッと頭に手を置かれ、リュウガが身長を合わせるように覗きこんできた。
リュウガ
「…ま、そういう訳だ。
聞き回っても同じだった… 嫁候補を探してるから
妙な噂を流して、オレ達をここへ来させたかったんだな」
ヒロイン
「で、でも! 国王ですよね?
私、海賊ですよ? 普通どこかのお姫様とかじゃないんですか?!」
ハヤテ
「落ち着けよ! お前が選ばれる訳ねぇだろ?」
シン
「そうだな… 国王は若い。
好奇心でお前を見てみたいんだろうな」
そう言われ少し心が軽くなった。
ナギが『お前が一番いいと思う事を選択しろ』ってこの事?
もし国王に見初められて、私もその気だったら、
止めはしないって事…?
(ナギは国王が私に会いたいって思ってる事、分かってたんだ…)
ヒロインはナギを見つめるが、ナギは俯いたままだ。
ソウシ
「まぁ、とりあえず城へ行って
妙な噂を立てないように言わなきゃね」
ハヤテ
「ついでにお宝も頂きたいとこだよな!」
トワ
「…ハヤテさんはのん気ですね…」
ヒロインの曇った表情を悟ったトワは、一緒に暗い気持ちになった。
チラリとナギの様子を伺ったが、ナギも深刻な顔をしている。
国王というのはどんな人物なのか…
ヒロインと一緒に、トワも無言で歩き出した。
・・・・・・・・・・・・・・・
城へ着くと、待ってましたとばかりに
すんなりと接見の間に通された。
海賊の自分達が、こうやって歓迎されてこういう場所にいるのは滅多にない。
ナギはこれから起こるであろう事を考えると
吐き気がする。
確かこの国の王は、早くして国王の座についた為
歳はヒロインと同じくらいではなかっただろうか。
そしてその歳の男なら誰でもある欲を
権力と品のある顔立ちで落とし続けている。
今日までにどれだけの女をこうして呼び寄せたかは知らないが、
なぜ海賊のヒロインまで候補に入るのだろうか…
考えると答えは1つ。
海賊のヒロインが王家に入るのは、あまりにも無理がある。
シンの言う通り、あのシリウス海賊団に女がいると聞き
どれほどの女か興味を持ったのだろう。
いつもだったらこんな場所に来た事に、ワクワクした顔で
色んな所を見上げたり、自分に興奮気味に話しかけてくるだろうに…
ナギは少し前で、緊張しているヒロインの横顔を見つめた。
ソウシ
「ナギ…大丈夫?」
ナギ
「…はい…」
ソウシの声が慰めるように囁かれた。
とても静かなこの空間に、コツコツと人の歩く音が近づいてくる。
ナギはスッとヒロインの横に立ち
耳元でこう言った。
ナギ
「…ヒロイン、大丈夫だ
オレが一番近くにいる…」
その声にヒロインの緊張の糸がほぐれ、ナギの顔を見上げると
優しく微笑み返してくれた。
キュッと胸が締めつけられ、ナギに話しかけようとした時
大きな扉が音を立てて開いた。
リュウガ
「ほぉ随分若ぇな…」
聞こえないくらい小さな声で呟くリュウガ。
執事と思える初老の男と一緒に入ってきた国王に、メンバー全員が見入ってしまった。
執事
「国王様、シリウス海賊団の皆さまが参られました。」
国王は優雅に豪華な椅子に座ると
ゆっくりとメンバーひとりひとりを眺めた。
それにしてもなんて綺麗で整った顔をしているのだろう。
少し長めの金髪の髪を片方だけ耳に掛けている。
次々とメンバーを見て行くが、フッとその視線が止まった。
真っ青なブルーの瞳が、上から下へとヒロインを見る。
そして「はぁ…」とタメ息がこぼれた。
国王
「…お前がヒロインか?」
ヒロイン
「!! は、はい!」
その声にピシッと背筋を伸ばす。
すると国王はゆっくりと立ち上がり、ヒロインの前へと歩いてくる。
国王
「ふ~ん…聞いてた雰囲気とだいぶ違うな…」
するとヒロインのアゴに手を掛けて、グッと上を向かすと吟味するかのように
まじまじと見つめる。
国王
「お前より綺麗な女は今までたくさん見てきた…
なんだか当てが外れたな…」
バッと手をはずされ、ヒロインはその勢いで
よろけて隣にいたナギにもたれかかった。
国王
「もう下がっていいぞ…
…そうだな、せっかく名高いシリウス海賊団がこうして揃っているんだ
夕食にご招待しよう、それまで部屋を用意する
ゆっくりしていきたまえ」
そういうと国王はなんとも残念そうな顔をして、部屋を去っていった。
執事
「…国王がご無礼を…お許しください。
お部屋はすぐにご準備致しますので、今しばらくお待ちください。」
執事が深々とお辞儀をして、静かにドアがしまった。
それと同時にリュウガが大声で笑い出した。
リュウガ
「がーはっはっ!!
ヒロイン! お前、国王にがっかりされてたぞ!」
ヒロイン
「なっ!」
シン
「ふっ、とんだ笑い者だな。
のこのこ城まで来て、がっかりされるなんて…」
トワ
「そんな! ヒロインさんの可愛さが分かってないんです!!」
ハヤテ
「ふははっ! 国王タメ息ついてたぞ!!」
国王に見初められず、嬉しいはずなのに
こんなに馬鹿にされると、なんだか悔しくなってくる。
ヒロイン
「ひ、酷いです!!
そりゃキレイじゃないですけど…」
ソウシ
「ほら皆! そんなに笑ったら失礼だよ?」
そう言うソウシの顔も少し笑いを堪えているように見える。
ヒロインはすがる様にナギを見ると、その光景を微笑ましく眺めていた。
ヒロイン
「ナギ! ナギも笑ってるの?」
ふくれっ面で見上げてくるその可愛い顔に、ナギは思わず笑ってしまった。
ナギ
「ふっ…」
ヒロイン
「あぁ~! ナギまでヒドイ!!!
もぉ皆知らない!!」
その怒っている姿でさえ可愛く思え、メンバー全員温かい笑みがこぼれた。
ナギは国王が興味を持たなかった事に安心した。
もし目に止まっていたら、何が何でもヒロインをものにしようと
必死で手を尽くしていただろう。
そしてこれだけ充分な環境を用意されたら、さすがにヒロインだって
悩むのではないか?
海賊の自分といるより、国王と過ごす事に…
目の前でいつもと変わらない光景が広がっていることに
心から嬉しく思った。