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リュウガ
「おぉうナギ! ありがとな!
お前もここ来て飲め!!」
ナギ
「船長…飲み過ぎですよ」
手にツマミを乗せた皿を持ちながら、呆れ顔でリュウガを見つめた。
部屋が酒の匂いで充満している。
机の上にはワインのボトルが2本も空いていた。
机にツマミを置き、転がった空のボトルを手に取った。
そして近くの椅子に腰を降ろした。
リュウガがこうやってこんな時間にツマミを頼む時は
自分に話があるか、誰かと飲みたい時だ。
本当は部屋に残したヒロインの元へすぐにでも行きたい所だが…。
リュウガ
「…仲直りしたのか?」
そう言ってナギを見る目は、とても酔っているものとは思えなかった。
ナギ
「…船長、酔ってませんね?」
リュウガ
「ふっ当たり前だろ?
このオレがワイン2本で酔うかよ!」
ナギ
「トワは信じ切ってましたよ?」
リュウガ
「わははっ! オレの演技もなかなかのもんだろ?」
満足そうに笑い、手元のグラスからまた一口ワインを飲む。
ナギは罠に掛かった気分だ。
ヒロインとの事を聞きたかったに違いない。
ナギ
「…仲直りしました」
こんな事まともに答えているのが恥ずかしい。
そのナギの表情を見て、リュウガは微笑んだ。
リュウガ
「ナギ…お前もそんな顔できるようになったんだな…」
そういうリュウガの目もとても優しい。
自分を拾ってくれた時に見たあの目と一緒だ。
リュウガ
「ふっ、そんなにヒロインが大事か?」
ナギ
「そう…ですね…
アイツといると驚かされます」
それはナギだけではないだろう。
この船に乗っているメンバーは、みんなヒロインという存在が
とても大きなものになっている。
リュウガ
「…そうか…」
リュウガはワインの入ったグラスを手の中で軽く回した。
そういうリュウガもその1人だ。
あの小娘に翻弄されている。
リュウガ
「悪かったな…夜中に呼んで…」
ナギ
「………」
なんだか今日のリュウガはいつもと雰囲気が違う。
ナギ
「…船長…やっぱり一杯もらいます」
その言葉にリュウガは一瞬驚いたが、すぐに微笑み
グラスにワインを注ぎ、ナギに渡した。
ナギ
「…何が聞きたいんですか?」
リュウガ
「ふはっクククッ…ホント、ハヤテとトワ以外は感が鋭くて困るな!」
リュウガはナギのまっすぐな言葉に、思わず笑ってしまった。
無愛想だが、人一倍仲間を大切に思っている。
リュウガはそんなナギとヒロインが一緒になった事が
何よりも嬉しい。
しかし今回のソウシもそうだが、男の中に女のヒロインがひとりいれば
そういう感情が嫌でも沸いてくる。
この状況が果たしていいものなのかリュウガは悩んでいた。
リュウガ
「オレはヒロインの事も、大切なシリウスの仲間の一人と思っている。
だが、こうしてここにいる事はお前たちの関係を悪くしてないか?」
ナギ
「…そんな事…」
リュウガ
「お前はよくても、ヒロインはどうだ?
アイツは要領よく割り切ったりできねぇだろ」
ナギ
「………」
確かにそうだ。
今日みたいに、色んなちょっかい全部に反応して
悩んだりしてたらどうしようもない。
そこがヒロインのいい所でもあるが…。
リュウガ
「もしまた誰かが何かして、アイツはおまえに話せなくて悩む…」
真剣に話しているには違いないが、
『誰かが何かをして』の代表人物はリュウガではないだろうか…
ナギ
「船長もその誰かに入ってますよね?」
リュウガ
「ん? …まぁそうだな」
決まり悪そうに視線を逸らすリュウガ。
確かにもしヒロインが自分の彼女じゃなかったら…
他のメンバーのように手を出したりしてただろうか?
あの可愛いさを知った今、とても放っておくなんて出来るわけがない。
ソウシだって、きっと同じ感情だ。
無防備に見せる可愛さに、正気でいれる男はそういない。
ナギ
「…ヒロインはオレがどうこう言って
言うこと聞くヤツじゃないですから…」
リュウガ
「ふはっ! 違いねぇ」
リュウガとナギはヒロインの顔を思い浮かべながら
小さく笑った。
それから一時間近くリュウガと話をし
ナギはやっと部屋へと戻って来た。
案の定、寝息を立てたヒロインが
気持ちよさそうに寝ている。
ナギは起こさないようにそっとベッドへもぐり込み
いつものようにヒロインを抱きしめた。
そして可愛い寝顔に唇を寄せて、オデコにキスをした。
ナギ
「…誰にもやらねぇからな…」
返事が返ってくるはずのないヒロインの寝顔を見つめ
ナギはゆっくりと目を閉じた。
・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
昨日のリュウガと夜中まで飲んだせいか、
いつもより遅く起きたナギはキッチンのドアをあけると
食堂からソウシの声が聞こえた。
ソウシ
「おはよう」
ナギ
「…おはようございます」
ヒロインからキスの事を聞いて、ナギはどうやって切り出そうか悩んでいた矢先
張本人が現れてしまった。
いつもよりそっけなく返事を返すナギを見て、
ソウシはふっと笑った。
ソウシ
「ヒロインちゃんから何か聞いた?」
昨日仕込みした材料を調理台に置こうとした所で手を止めた。
ナギ
「…聞きました…」
ゆっくりと材料を台の上に置くと、ソウシの方を振り返った。
ソウシはにこやかな笑みを浮かべて、テーブルにつき
ナギを見つめていた。
ナギ
「ドクターが…珍しいですね?」
ナギの知っている限り、そういう事をバレるようにするのは珍しい。
もししたとしても、水面下で分からないようにできる要領のいいタイプだと思っていた。
ソウシ
「ふふ、なんか余裕だね?
…私なんかヒロインちゃんに嫌われちゃったかなって
大人気なく不安になっちゃったよ」
ナギは驚いて目を見開いた。
ナギ
「…ドクター…ヒロインの事…」
ソウシ
「ん? …どうかな…
でも、ヒロインちゃんにいいお兄ちゃんでいるように釘刺されちゃったからな…クスッ」
ソウシは昨晩の事を思い出し、思わず笑ってしまった。
ナギ
「ヒロインに?」
ソウシ
「あれ? 聞いてないの?
昨日の夜、私の部屋に来て思いっきり純粋な事言われて
…もぅあの子のアレは何なんだろうね? あはっ」
大人な考えでは想像もできない程まっすぐで、
それでいて周りを一生懸命気にしている。
ナギ
「…ドクター、もし本気でヒロインを好きだとしても
オレは何も言いません。
ただ黙って渡さない…
それにドクターの事だってそうい風に思いたくないから…」
ナギの言葉を聞いて、ソウシは優しく微笑んだ。
どうしてヒロインがナギを選んだかよく分った。
ナギとヒロインはよく似ている。
自分が欲に流されて、ナギとヒロインを振り回したにも関わらず
2人とも関係が壊れないように、ぶつかってきてくれた。
本当にどうでもいい相手なら、こんな言い方もしないだろう。
ソウシ
「ナギ…良かったね?
ナギがそういう気持ちを持てるようになったのは
ヒロインちゃんのお陰だね?」
ソウシの眼差しが、昨日リュウガから受けたものと似ている。
リュウガとソウシは、自分が一番荒れていた時代を知っている。
ソウシ
「…でも、私も男だし?
ふふ、ちょっかい出したらごめんね?」
ナギ
「!!?」
ヒロイン
「おはよ~ 遅くなっちゃった」
ナギがソウシに言い返そうとしたと同時に、キッチンのドアが開き
少し眠たそうなヒロインが入ってきた。
ヒロイン
「あっソウシさん! 今日も早いですね!
おはようございます!」
いつもと変わらない朝の風景に、ソウシは微笑んだ。
ソウシ
「おはようヒロインちゃん」
この子は本当に正直でいい子だと、改めて感じた。
ソウシ
「私はちょっと医務室の整理してこようかな。
ご飯できたら声掛けてくれる?」
ヒロイン
「はい!」
気を利かせてヒロインと2人にしてくれたとナギは感じた。
ヒロインはいつものように、嬉しそうにナギの隣に並び
朝食の準備を始めた。
ナギ
「…お前、昨日ドクターのトコ行ったのか?」
ナギはまな板でサラダ用のキュウリを切りながら
話し掛けた。
ヒロイン
「え…」
ヒロインはドキリと胸が鳴り、人数分のお皿を並べている手を止めた。
ナギ
「…普通あんな事された後で行かねぇだろ?
なんで黙って行ったんだ…」
ヒロイン
「…それは… 自分できちんとしたかったから…」
ナギ
「…! ッて…」
ヒロインの言葉に反応して、思わず指に包丁が当たってしまった。
ヒロイン
「ナギ! 大丈夫?」
ナギ
「あぁ…かすっただけだ…」
ヒロイン
「でも血が… ソウシさん呼んで…!」
走り出そうとするヒロインの手を掴んだ。
ナギ
「あとで行く… それよりどうしてドクターのトコ…」
ヒロイン
「あ…だって…同じ船に乗ってるのに、気まずくなるの嫌だったし…
それに、誰かに言ってもらう事でもないから…」
ナギは驚いた。
誰かが言ったり、守らなければ何もできない子だと思ったのに
自分で解決しようと頑張っている。
リュウガと心配していた事は、一体何だったのだろう。
ヒロイン
「ナギ?」
心配そうに見上げるヒロイン。
自分が思っていたより、いい女だ。
ナギ
「…お前、ホント可愛いやつ…」
思いがけず、ギュッとナギに抱き寄せられた。
ヒロイン
「ナ、ナギ! 嬉しいけど…誰か来たらっ!」
そう言うと腕が緩み、ナギはヒロインを見つめた。
ナギ
「…あんまり可愛い事すんな…
オレがいるんだから、無理に大人になろうとすんな」
いつもナギの言葉は自分を甘やかしてくれる。
でもそれに甘えちゃいけない事は分かってる。
ヒロイン
「…うん… でも、私もナギに追いつけるように
出来る事は自分でするよ?
ナギと一緒に歩けるように、もっと頑張るから!」
ニッコリ笑うその顔が、何とも可愛い。
ナギ
「ふっ、オレも…
お前が離れて行かないように頑張らなきゃな?」
ヒロイン
「?」
キョトンとした顔のヒロインを見て、ナギは笑ってしまう。
ナギ
「ふはっ、まぁその感が鈍いのがお前のいいトコだな?
オレがどれだけ好きか分かってるか?」
ポンッと頭に手を置かれ、ナギがなんの事を言っているのか分からないが
どれだけ好きかって… どれくらい好きなのだろう?
ヒロインはそっちの方が気になって、期待した目でナギを見つめた。
ナギ
「お前…もぅオレから離れたいって言っても無理だからな?
一生側にいるって、覚悟しろ?」
ヒロイン
「ナギ…」
プロポーズにも取れるナギの言葉と、とびきりの笑顔にノックアウトされ
ヒロインは、ナギの唇が重なっている事に気付いたのは
ほんの少し後のことだった…。
☆END☆ おまけ&あとがき⇒