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初めは船に迷い込んできた普通の女の子だった。
誰に対しても抱くような、そこら辺の女性と同じ感情しかなかったはずなのに…
いつの間にか自分の中で大きな存在になっていたのだ。
自分が出来ないくらい、素直に感情を表現して
ナギの横でいつも可愛く笑っている。
ナギのもののはずなのに、一生懸命な姿を見る度に
その先まで知りたくなる。
ナギはきっと知ってるであろう、その先を…
これを「恋」というのだろうか?
それとも長い船の上の生活で、身近にいる女性がヒロインしかいない為に沸いてくる
男としての性だろうか?
この歳になって、「恋」と「欲」の区別もつかない事に呆れる。
こういう感情を抱く、ナギ以外のメンバーを微笑ましく見ていたのに…
まさか自分がこうなるとは…
ヒロイン
「ソウシさん? …大丈夫ですか?」
ソウシ
「…うん…」
顔を上げたソウシの表情は、いつもと変わらない優しい顔だった。
ソウシ
「キスした事は本当にごめんね?
でも可愛いと思ったのは本当…
ヒロインちゃんに嫌われるのは嫌だから
もうしない」
結局答えは、「いいお兄ちゃん」でいるしかないって事だ。
ヒロイン
「…ソウシさん…」
ソウシ
「ん?」
ヒロイン
「私…大人の感情とか、男の人の事よく分らないですけど…
ソウシさん…ありがとうございます」
ソウシ
「えっ?」
ヒロイン
「…かわいいって、やっぱり言われると嬉しいです!
嘘でもお世辞でも嬉しいです!」
照れながらニッコリ笑う顔が堪らなく可愛くて、
ソウシは抱きしめたい衝動に駆られる。
ソウシ
「…まいったなぁ…
大人でいるって結構ツライな…」
ヒロインの悪気のない言葉がソウシを挑発する。
もう嫌われてもいい、いっそ押し倒してしまおうか…
ソウシの中で黒い感情が沸く。
ヒロイン
「? じゃあ…もう遅いので失礼します!
おやすみなさい」
ソウシと元の関係に戻れた事に満足したヒロインは、
嬉しそうに部屋を出て行った。
部屋に残った石鹸の香りがソウシの鼻をかすめる。
ソウシ
「はぁ…」
ギッと音を立てて背もたれに寄り掛かるソウシ。
目の上に腕を乗せ、あの可愛い笑顔を思い出す。
このままだといつか無理矢理奪ってしまいそうだ。
もしかしたら自分が一番ヒロインに対して感情が強いのではないか…
ソウシは胸の中に広がるヒロインへの想いに
不安を感じていた。
しかしキスをした後のあの悲しそうな顔はもう見たくない。
ソウシ
「…大人って面倒臭いな…」
ヒロインの去ったドアをチラッと腕の間から見つめた。
・・・・・・・・・・・・・
急ぎ足で部屋へ戻ったヒロイン。
体はすっかり冷え切ってしまった。
ヒロイン
「ナギ、ただいま!」
ソウシときちんと話ができ、なんだか嬉しくてナギに抱きつきたい気分だ。
ベッドで背中を向けて寝ているナギ。
珍しく返って来ない反応に、ヒロインはそっとベッドへ近づいた。
ヒロイン
「ナギ?」
ナギの顔を覗き込むと、いきなり手を引かれ
胸に抱き寄せられた。
ヒロイン
「びっくりしたぁ! もぉ起きてたなら返事して!」
怒った声を出してはみたが、ナギに抱かれると安心する。
ナギ
「…遅かったな… 体冷えてる」
ヒロイン
「あ…うん…」
本当はソウシの部屋に行った事を話そうかと思ったが
それよりもこうしてナギの鼓動を聞いている事の方が大切に思えてしまう。
ナギ
「…? どうした?
眠いか?」
ナギの声が体に響く。
ナギに抱かれると、女の子である事が嬉しくなる。
ヒロイン
「ナギ…今日はずっとこうして抱っこしててくれる?」
そう言うと、ナギは胸からヒロインを離し
ポスッとベッドへと寝かせた。
ナギ
「…そうするつもりだったけどな」
ヒロイン
「え!?」
驚いてナギを見つめると、ナギは体の向きを変えて
向かい合わせになった。
ナギ
「言われなくても毎日そうしてるだろ?」
ヒロイン
「そ、そうなの!?」
ナギと体を結んだ後、そうしてくれているのは知っていたが
ナギより先に寝てるときも抱いていてくれたということを初めて知った。
ナギ
「…知らなかったのかよ?」
ナギは驚いた声を出した。
ヒロイン
「うん…だってナギいつも言わないとしてくれないから…」
ナギ
「それはオレがする前に、お前が言うからだろ?」
恥ずかしさを隠す為か、少し強い口調で言う。
その態度が可愛くてヒロインはクスクスと笑ってしまう。
ナギ
「あ?!」
ヒロイン
「ふふっナギ大好き♡」
ギュッとナギの胸に抱きついた。
ナギ
「ふっ、お前ズルイな?」
ヒロイン
「ん?」
ナギ
「…大好きでごまかしてる」
ナギを見上げる。
ヒロイン
「? だって大好きなんだもん!
じゃあナギは違うの?」
ナギ
「違わねぇけど…」
ヒロイン
「違わないけど何?」
ナギはしまったと思った。
思いっきり墓穴を掘ってしまった。
この流れで行くと、自分も「好き」と面と向かって言わなくてはいけない…。
もちろん心の中は「好きだ」という感情で溢れているが
それを言葉に出すのはかなり恥ずかしい。
ヒロイン
「…ナギ?」
(そんな可愛い顔で見つめるな…!)
毎日一緒にいるのに、どれだけ好きにさせれば気が済むのだろう。
自分に向けられる笑顔や言葉に、こんなにも嬉しく感じるとは思いもしなかった。
キッチンでの続きをしたいところだが、
このまま抱きしめているだけでも充分だ。
ヒロイン
「ナギ…明日も明後日もこうしてね?」
スリッと顔を胸に埋めるヒロイン。
ナギは堪らなくなる。
こんな可愛い事を言われて、何もしないで寝るなんて無理だ。
ナギはヒロインのアゴに手を掛けて、上を向かせた。
ナギ
「…いつでもこうしてやる…」
ヒロイン
「ナギ…ん…」
ふわっとナギの唇が重なる。
そっと唇が離れ、ゆっくり目を開けると
ナギと目が合う。
ナギ
「…お前…可愛いな…」
ヒロイン
「え…?」
ナギ
「無意識でそうしてるのか…?」
ナギに言われる「可愛い」は、他の誰が言う言葉よりも
何倍も嬉しい。
好きな人に言われるだけで、特別な女の子になれた気がする。
ナギ
「…ヒロイン、今日はこれだけで満足なのか?」
ヒロイン
「?」
ナギの手が腰に回り、スルッとシャツの中に入ってくる。
ナギ
「…キッチンでお前に止められて、治まらねぇんだけど…」
ヒロイン
「あんっ…でもナギ今日は…」
ナギ
「もう無理…いいか?」
ナギの手がブラのホックに掛かる。
こんなに自分を欲しがっているナギを見て、断る女の子がどこにいるだろう…。
ヒロイン
「…う…」
ヒロインが返事をしようとした瞬間、ドアをノックする音が聞こえた。
2人ともドキリと心臓が鳴り、ヒロインはナギの胸にギュッと抱きついた。
ナギ
「誰だ?」
トワ
「ナギさんすみません!! ちょっとお願いがあります!」
予想外のトワの声にナギもヒロインも驚いた。
ナギ
「…ヒロイン、お前は寝てろ」
ヒロイン
「でも…」
そう言うとチュッとおでこにキスをするナギ。
ナギ
「いいから、すぐ済ませてくる」
バサッとコートを着ると、ナギは部屋のドアを開けた。
トワ
「本当にすみません! …っと!ヒロインさん寝てるんですね?」
ナギ
「…あぁ、それよりどうした?」
トワ
「実は船長に頼まれて、お酒を部屋に持って行ったら泥酔状態で…」
まぁ想像はつくが…。
なぜそれで自分なのだろう。
トワ
「…ナギさんのツマミが食べたいって大騒ぎなんです!」
すがる様なトワの声に、ナギは「はぁ…」とタメ息をついた。
まったく自由な人だ。
ナギは申し訳なさそうに見上げるトワの頭にポンッと手を置いた。
ナギ
「分かった。
…お前昨日、不寝番で夜しっかり寝てないだろ?
作ってオレが持って行くから寝ていいぞ」
トワ
「そんな! 僕なら平気です!!
お手伝いさせてください!」
ナギ
「簡単なの作るから気にするな
おやすみ」
トワ
「ナギさん… はい!ありがとうございます!
おやすみなさい」
トワは下っ端で一番疲れているのを知っている。
いつも気丈に振舞っているが、休める時は休んだ方がいい。
そういう所ではトワもヒロインも似ている。
ナギはキッチンに向かい、リュウガの要望通りツマミを作った。