aroma
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
食堂の前を通り過ぎようとすると、いい匂いがしてきた。
ヒロイン
「あ…!ご飯の用意…」
ハヤテに任せきりになっていた事を思い出した。
ナギ
「チッ」
ナギはヒロインの手を離した。
ナギ
「…今は何も聞かない。
だけど避けたり、目を逸らすのはやめろ」
キッチンのドアノブに手を掛け、背を向けたままヒロインに言った。
ヒロイン
「!?」
そのままドアを開けようとするナギにヒロインは慌てて声を掛けた。
ヒロイン
「ナギ! あのえっと…」
こんな気まずい雰囲気になるんだったら、もっと早く話しておけば良かったと
ヒロインは後悔をした。
なんて言ったらいいのだろう。
ナギに声を掛けたものの、何一つ言葉が浮かばず焦っていると、
ナギの手がポンッと頭を撫でた。
ヒロイン
「ナギ…?」
ナギ
「…怒ってねぇから…
普通にできるか?」
見上げたナギの目がとても優しくて、ヒロインはなんだか泣きそうになった。
ヒロイン
「…うん…
あとでちゃんと話すね…?」
そう言うとナギはふわっと微笑んでキッチンのドアを開けた。
一瞬見せてくれた笑顔だったが、ヒロインの胸はキュンと締めつけられた。
ナギのあの笑顔が見れなくなってしまうのではないかと
ヒロインは不安に駆られていたが、ちゃんと話そうと心に決めた。
ナギと一緒にキッチンに入ると、ハヤテとトワがすっかり食事の用意をしてくれていた。
ヒロイン
「ハヤテさん、トワくん!
すいません~~!!」
ハヤテ
「遅ぇよ! …もう全部用意できたから」
ナギ
「悪かったな」
トワ
「全然です! ヒロインさん、食堂行きましょ?」
にこやかにトワが手を取った。
さっきのヒロインの様子を見て、トワは気にしないようにいつも通りに接した。
そのトワの優しさを感じ、ヒロインもニッコリと笑った。
ヒロイン
「うん! ありがとう♡」
ナギの言う通り、普通でいないと色んな人に心配を掛けてしまう。
ヒロインは気持ちを入れ替えて食堂へ向かった。
・・・・・・・・・・・・・・
リュウガ
「そろったか? そいじゃいっただきま~す!!」
全員
「いただきます!!」
リュウガの掛け声で夕食が始まった。
ソウシの一件があってスッカリ忘れていたが、
ヒロインは腹ペコだった。
ナギ
「ふっ、美味いか?」
ヒロイン
「うん! オナカ減ってたから尚更おいしい!」
口いっぱいに料理を頬張ると、不意にソウシが話しかけてきた。
ソウシ
「そう言えば、ヒロインちゃんが言ってたヤマトの料理なんだっけ?」
ヒロイン
「え…っん!!」
意識しないようにソウシとの距離を取っていたが、
いきなり声を掛けられ、喉に詰まりそうになってしまった。
トントンッと胸を叩くヒロイン。
ソウシ
「大丈夫?」
シン
「ガキか…お前は…」
ヒロイン
「んぅ…ケホッだい…じょうぶです!
えと…何でしたっけ?」
ナギはその姿を見て、すぐに分かってしまった。
ヒロインとソウシの間に何かあったのだと…。
ソウシ
「ふふっ、うーうん何でもない。
ごめんね?」
優しく微笑むソウシは、いつもと何ら変わらない。
やっぱり何もなかったように接するのは難しい。
きっとナギにも気付かれてしまっているだろう。
ヒロインはしっかりとソウシの唇の感触を思い出し
それ以上何も話せなくなってしまった。
ナギ
「…ヒロイン、キッチンからタバスコ取ってきてくれ」
ヒロイン
「うん!」
ナギの言葉に救われた。
きっと分かって言ってくれたのだろう。
ヒロインはすぐ隣のキッチンに向かった。
ドアのしまる音がするとリュウガがソウシに小声で話し掛けた。
リュウガ
「で? 何したんだソウシ?」
その言葉に全く予想していなかったハヤテとトワはパッと顔を上げた。
ソウシ
「そうですね… 船長がいつもしてる事ですかね?」
ソウシは少し意地の悪い笑みを浮かべた。
リュウガ
「う~ん… いつもしてるっつたら、腰を抱くとか尻を触るとか…」
ナギ
「…いつもしてるんですか…?」
静かなナギの声にリュウガはドキリとした。
リュウガ
「い、いや違うぞ!! 今はソウシの話だろ?」
シン
「いつもしてるってハッキリ言ってました」
リュウガ
「シン! バカお前…!」
ナギ
「…船長、明日からメシ覚悟しておいてください」
リュウガ
「うそだろ!? おいソウシ!
お前のせいで…」
ヒロイン
「ナギー、タバスコもうなくなっ…ど、どうしたんですか?」
戻ってきたヒロインは、身を乗り出して半泣きしているリュウガを見て驚いた。
シン
「自爆した」
ヒロイン
「???」
何の事か分からずに「?」マークを浮かべているヒロイン。
ソウシはクスクスと笑っているが、ナギの心中は穏やかではなかった。
ソウシが何をしたかも気になるが、リュウガはいつもそんな事をしているのか?
もちろんからかっているだけだろうが、
今まで何とも思っていなかったが、ヒロインにしているかと思うとかなり腹が立つ。
あまり気にしないようにしていたが、段々とイライラが募っていく。
ヒロイン
「ナギ? どうしたの?」
ヒロインが席に座りながら、心配そうに声を掛けてきた。
ナギ
「…別に…」
不機嫌に料理を食べるナギ。
ヒロインはいない間に何があったのか、ナギの急に変わった態度に不安になってしまう。
もしかしてソウシがみんなの前で話したのだろうか?
ソウシの性格からして、それはないと思うが…
何だか食欲がなくなり、しょんぼりと俯いた。
・・・・・・・・・・・・・
食事が終わり、それぞれが部屋に戻り
ナギとヒロインは明日の仕込みと片付けをしていた。
あれからナギは一言も話さない。
ヒロインも気になってしまい、ハヤテやトワが話しかけてくれたが
上の空で答えていた。
食堂にいるナギをカウンター越しに見つめ、はぁ…とタメ息をついた。
手元に視線を戻し、明日の朝用に切った野菜を皿に乗せようとしたが
いつもの場所にお目当ての器がなかった。
ヒロイン
「ナギ? あの四角いお皿ってどこにある?」
ナギ
「…あぁ悪い、上の棚に乗せた。
届かないだろ?」
ヒロインは棚の上を見上げ背伸びをした。
ナギの言う通り、とても届く高さではなかった。
ナギ
「取ってやるから待ってろ」
「ん~!」と一生懸命手を伸ばしていると、キッチンのドアが開き、ナギが入ってきた。
ナギ
「ふっ、取ってやるって言ってるだろ?」
ヒロイン
「あ…うん…」
すると手を伸ばしていたヒロインの背後に周り
ヒロインがどれだけ手を伸ばしても届かなかった皿を
難なく取ったナギ。
ナギ
「この皿だろ?」
背中に感じるナギとの距離にドキドキとしてしまうヒロイン。
ナギ
「…違うのか?」
ヒロイン
「!! あっうーうん、そのお皿!
ありが…!!」
皿を受け取ろうとすると、ナギが後ろからギュッと抱きしめてきた。
ナギ
「ヒロイン…」
こんな事をされると思っていなかったヒロインは、
ナギとの離れていた心の距離が一気に縮み、ジワッと目に涙が浮かんだ。
ナギ
「…オレは何があってもお前が好きだからな?」
ヒロイン
「………」
夢でも見ているのだろうか?
ナギがこんな事を言ってくるなんて信じられない。
ヒロインは嬉しくて我慢していた涙が頬を伝った。
そしてクルッと向き直って、ナギの体にギュッと抱きついた。
ヒロイン
「…ッヒ…ナギ…」
ナギは優しく頭を撫でてくれる。
ナギ
「…ごめんな? 余裕なくて…態度悪かったよな?」
フルフルと胸の中で首を振るヒロイン。
何があったか気になって、ヒロインの気持ちに気付いてやれなかった事を深く反省したナギ。
きっとヒロインの事だ、ソウシとナギの関係が気まずくなるのを恐れていたに違いない。
それに自分が愛想を尽かしてしまうのではないかと不安に感じていただろう。
キスを拒まれた事や、ソウシの事でいっぱいになり
一番安心してあげなくてはいけないヒロインを不安にしていた。
ヒロイン
「グズッ…違うの…私も…ごめんなさい…」
ナギの優しさが本当に嬉しかった。
潤んだ目でナギを見上げると、ナギが親指で涙を拭きとってくれた。
ナギ
「…ドクターと何があった?」
ヒロイン
「…キス…されたの…」
やっぱりかとナギは思わずタメ息をついた。
しかしそのタメ息がヒロインには違う意味に感じた。
ヒロイン
「…やっぱり…呆れた?」
ナギ
「あ?」
ヒロイン
「…隙があり過ぎるって…何で逃げないんだって…」
ナギ
「何言って…」
ヒロイン
「できなかったの! 手を掴まれてて、スゴイ力で…」
また涙が溢れてくる。
ナギ
「ヒロイン」
ヒロイン
「ソウシさんがそんな事するなんて思ってもいなかったから…」
ナギ
「…もういい…」
ヒロイン
「でも私は…んっ!」
言葉を遮る様に唇を塞がれたヒロイン。
そしてナギの舌が入り込んで来る。
ソウシとキスした時とはまるで違う感覚が全身を走る。
ナギとは何度となくキスをしているのに、この痺れるような甘い感覚は何だろう。
何度も角度を変えて、深いキスを繰り返すナギ。
ヒロイン
「ん…はぁ…ナギ…んっ…」
ヒロインから甘い吐息が漏れ始め。
キッチンである事を忘れてしまいそうになる。