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ハヤテ
「あれ? 今ヒロインいなかった?」
カウンターから身を乗り出してキッチンの中を覗くハヤテ。
ナギ
「………」
ナギはものすごくショックを受けていた。
話したくない事があるのは分かる、でもキスを拒むなんて…
いつも恥ずかしそうにはするが、あんな風に拒まれたのは初めてだ。
一体何があったというんだ。
ハヤテ
「ナギ兄?」
ナギ
「あぁ…もうすぐメシできるから我慢しろ」
ハヤテ
「…ヒロインとなんかあったのか?」
それはナギが一番知りたい。
ナギ
「いや…」
ハヤテ
「?」
なんだか思い詰めた表情をしているナギにハヤテは心配した。
あまり感情を表に出さないナギだが、ヒロインとつき合い出してからは、時にこういう風になる。
ハヤテは食堂のテーブルに座り、頬杖をつきながらナギを眺めていた。
元々気持ちの優しいナギだ。
どんなに厳しい事を言われても、その裏に相手を思った言葉がある事をハヤテは知っていた。
だが、ヒロインに見せる柔らかい笑顔は、船に乗り出してから初めて見た。
今こうして上の空で料理をしている姿もヒロインがしているのかと思うと
ナギにとってのヒロインの存在がどれだけ大きいかが分かる。
ハヤテ
「ナギ兄ー! 手伝う?」
ナギ
「…いい」
ハヤテに声を掛けられ、ナギはハッと意識を戻した。
さっき不意に離された手の感触がまだ残っている。
本当は追い掛けようかとも思ったが、避けているような態度をとられ
さすがに躊躇してしまう。
(ヒロインの行動でこんなにも振り回されるのか?)
ナギ自身も驚いていた。
失うものなんて何もなかったのに…。
ナギは女々しい気持ちで支配された感情に苛立ち
グッとバンダナを外した。
ナギ
「ハヤテ! 鍋見てろ」
そう言ってキッチンを出ると、ヒロインを探しに船内を走った。
・・・・・・・・・・・
ヒロイン
「…はぁ…」
ヒロインは大量の洗濯物をたたみ終えて、まとめた洗濯物を各部屋に届けに来ていた。
さすがにソウシの部屋へ届けるのは迷ってしまう。
一番最後にしようと決め、ハヤテ、トワの部屋へ洗濯物を置くと
次はシンの部屋へとやってきた。
シンはこの時間、大抵航海室にいるので
ヒロインはノックもせずに部屋へと入った。
ヒロイン
「!! わぁ!シンさんごめんなさい!!」
シン
「…お前勝手にドアを開けておいて、その反応はなんだ」
シンはソファーに座り、本を読んでいた。
ヒロイン
「ホントにすみません! シンさん居ないと思ってたんです…」
シン
「いなくても普通、他人の部屋に入る時はノックくらいするだろ?」
ヒロイン
「…はい…」
ヒロインは何も言い返す事が出来ず、申し訳なさそうに俯いた。
シン
「? なんだ?何かあったのか?」
自分の言った事にショゲてるだけではない雰囲気を感じたシン。
ヒロイン
「え…?」
シン
「なんでそんな暗い顔してる」
ヒロイン
「…それは…」
話した訳ではないのに、なんだか全てを知っているようなシンの視線から目を背けたくなる。
ヒロイン
「…シンさん…お願いがあるんです」
シン
「?」
・・・・・・・・・・・・・・
コンコン
ソウシ
「どうぞ」
ソウシは医務室で机に向かっていた。
しかしヒロインにあんな事をしてから、何一つ手についていなかった。
ソウシ
「あれ? シン?珍しいね」
こんな時間に医務室を訪れるのは珍しい。
ソウシ
「怪我でもした?」
シン
「このオレが使いっぱしりされました」
そう言ってポスッとソウシの洗濯物を近くの椅子の上に置いた。
ソウシはそれを見て、思わず笑ってしまった。
ソウシ
「ふふっホントだね… シンに頼むほど嫌われちゃったかな…」
少し悲しそうに笑うソウシをシンは腕組みをして見下ろしていた。
シン
「…珍しいですね?
ドクターがヒロインに嫌われるなんて」
ソウシ
「そう? まぁそれだけ信頼されてたんだよね…
ホントに純粋だよ…クスクス」
そう言いながらソウシは、さっき触れたヒロインの柔らかい唇の感触を思い出し
体が熱くなった。
シン
「…何したのかは大体分かりました…
アイツは冗談で済むタイプじゃ…」
ソウシ
「…冗談じゃなかったらどうする?」
ソウシは意味深な笑みを浮かべ、シンを見つめた。
シン
「…それはナギに言ってください。
オレに言われても何の意味もないですから…」
ソウシ
「そう? シンもそう思う時ない?
かわいくて無防備に懐いてきて、このまま奪っちゃいたくなる瞬間」
シンは何も言えなくなってしまった。
こんなやりとり軽く受け流せるのに、ソウシの言い方は
自分も感じた事のある感情を言っているようだ。
確かにある。
ヒロインが自分のものだったら…と、何度も想像した事。
あんなにまっすぐに愛されたら自分はどうなってしまうのだろうと…
ソウシ
「ふふっごめんね?
さぁて、どうやったらヒロインちゃんの機嫌治るかな…」
ソウシの声にハッとしたシン。
シン
「…菓子でもあげれば、すぐ懐きますよ」
ソウシ
「あはは! そっか!そうしようかな」
ソウシには本当敵わないとシンは心から思った。
結局自分が踊らされてしまった。
シンは医務室を出ると「チッ」と舌打ちをした。
・・・・・・・・・・・・・・・・
ナギは船内を歩き回っていた。
部屋で洗濯物をたたんでいると思ったが、どうやらメンバーの部屋に置きに行っているようだ。
コンコン
ナギ
「…入ります」
ナギはリュウガの部屋をノックした。
ドアを開けると、机に足を投げ出し居眠りをしていた。
ナギ
「船長」
リュウガ
「んぉ?! あ…ナギか?
もぅメシか?」
ナギ
「いえ…あのヒロイン…」
そう言い掛けた瞬間、ナギの背後にあるドアをノックする音が聞こえた。
ヒロイン
「船長、入ります!」
ドアを開けて部屋に入ったヒロインは驚いた。
ヒロイン
「あ…」
ナギの姿を見つけ、立ち止まってしまった。
リュウガ
「? どうした?」
ヒロイン
「あっいえ! 洗濯物です!
ここに置いておきますね?」
自分を全く見ないヒロインの態度に、ナギのイラついた気持が頂点に達した。
リュウガ
「…ナギ、部屋でやれよ?」
ナギ
「………」
思わずここで「いいかげんにしろ」と怒鳴ってしまう所だった。
リュウガに言われ、ナギはハッとし
ヒロインの手を取って部屋へと歩き出した。
ヒロイン
「ナ、ナギ! ちょっと待って!」
ナギは何も言わず、痛いくらいに手を握る。
ヒロイン
「手…痛いよナギ…!」
ナギ
「お前逃げるから…」
そう言われヒロインは胸が痛んだ。
ナギを傷つけたくなくてした事が、逆に傷つけてしまった。
手を引かれるがまま、ヒロインはナギの大きい背中についていった。