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真冬の寒さが少しだけ和らぎ、今日は一日中暖かい日差しがシリウス号に降り注いでいた。
こんなに天気のいい日は久しぶりだった。
夕焼けが近づき、ヒロインはお日様のいい匂いのする洗濯物と布団をしまっていた。
しかし張り切り過ぎたのか、まだ夕食まで時間があるにもかかわらず
オナカが空いてしまった。
ヒロイン
「ナギに何かもらいに行こ!」
ナギはキッチンで夕食の準備をしている頃だ。
ナギとは部屋も一緒なのに、こうして少しでも離れていると会いたくてしかたなくなる。
自分でも気付かないうちに、少し早足になっていた。
船内へと降りる階段にさしかかった時、急に出てきた影とぶつかってしまった。
ヒロイン
「きゃっ!」
???
「おっと…大丈夫かい?」
思い切り胸に飛び込んでしまったのは、ソウシだった。
ヒロイン
「す、すいません! 私、階段しか見てなくて…」
ソウシ
「ふふっどこも打ってない?」
ヒロイン
「はい!」
ソウシの胸から離れようとすると、髪の毛がピンッと引っ張られた。
ヒロイン
「痛っ…!」
ソウシ
「あっヒロインちゃん、ごめんね?
髪の毛引っかかっちゃったね」
ソウシが持っていた薬品の瓶のふたに髪の毛が絡まってしまった。
ソウシ
「ん~ヒロインちゃん、結構噛んじゃってるから
一回医務室行って取ろうか?」
ヒロイン
「はい…すいません…」
ソウシ
「私こそごめんね?」
ソウシと一緒に医務室へ向かう。
ナギに会いたかったが、この状況ではしかたがない。
医務室へ入ると、やんわりと薬品の匂いがした。
ソウシ
「ここ座って? 多分すぐ取れると思うから」
ヒロイン
「はい」
ソウシの目の前に腰掛けると、ソウシは瓶のふたを緩めながらそっと解いていく。
ソウシ
「痛かったら言ってね?」
ヒロイン
「はい!」
なんだかソウシとの距離が近い。
仕方のない事なのだが、気付いてしまうと急に意識してしまい
ドキドキとしてしまう。
ソウシ
「ふふっ、なんか緊張してる?」
ソウシは目の前で身を固くしているヒロインを見て、思わず笑ってしまった。
ヒロイン
「あ…だって…こんなに近くにソウシさんがいるの初めてなので…」
恥ずかしそうに言うその顔を見て、ソウシの悪戯心が疼いた。
ソウシ
「そんな事言われると、余計意識しちゃうんだけどな…」
ヒロイン
「え?」
ニッコリと微笑むと、ソウシは瓶に絡んだ髪を解くのをやめ
ヒロインの頬に手を掛けた。
ソウシ
「私もこんなに近くでヒロインちゃん見るの初めてだな」
ヒロイン
「ソ、ソウシさっ…」
ソウシ
「ヒロインちゃんってまつ毛長いよね…」
ソウシの顔がさっきよりも近づく。
ナギとは違う、細い指が頬を触れている。
ヒロイン
「ソウシさん、あの髪…!」
ソウシ
「髪は後でね… こんな可愛いヒロインちゃんを独り占めしてるんだもん」
その言葉に耳まで赤くなるヒロイン。
からかうつもりで始めたが、その反応に思わず体が熱くなるソウシ。
ソウシ
「ホント可愛いね…
ナギだけが知ってるなんてズルイな…」
ソウシの目が熱っぽく見つめる。
ヒロインは何も言えず、ソウシを見つめるしかできない。
ソウシ
「ナギから奪っちゃおうかな…」
ヒロイン
「え…?」
ニッコリとソウシの優しい笑顔が更に近づく。
このままだとキスされてしまう。
ヒロインは慌てて、ソウシの唇と自分の唇の間に手を入れた。
ソウシ
「!?」
ソウシは思っていたヒロインの唇の感触と
違う感触が触れ、ハッと目を開けた。
ソウシ
「…ヒロインちゃん?」
ヒロイン
「ソウ…シさ…どうしたんですか?
あまりからかわないでください…」
上目使いに困った表情を見せるヒロイン。
ソウシはなんとも言えないその可愛い顔に
堪らなくなってしまう。
グッと唇を遮るヒロインの手を掴んだ。
ソウシ
「…本気だったらいいの?」
ヒロイン
「え…?」
するとさっきまで頑固に巻きついていた髪が瓶のフタから解け
カランッと床に落ちた。
ヒロイン
「…ソウシさっダメ…!」
ソウシ
「もう…無理…」
ヒロイン
「ん…!!」
何が起こっているのだろう。
ナギとは違う感触が唇に走る。
すぐにそっと唇が離れた。
ソウシ
「…ヒロインちゃん…
もっと先まで知りたい…」
再びソウシの唇が近づく。
するとヒロインは、力強くソウシに掴まれてる手を振った。
ヒロイン
「ソウシさ…どうして…」
その声にソウシはハッとヒロインの顔を見つめると
泣き出しそうな顔をしていた。
ヒロイン
「…も…行きます…」
ソウシ
「ヒロインちゃん!」
勢いよく部屋を飛び出して行ったヒロイン。
ソウシは悪乗りが過ぎたと反省した。
あの泣き出しそうな顔…。
別に気にしなくてもいい、だがヒロインにあの顔をされると
どうにも罪悪感で胸が潰れそうだ。
ソウシは床に転がった瓶を拾い上げ。
どうして我慢できなかったのか…と、深いタメ息をついた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
ソウシの部屋を出たヒロインは、キッチンを目指して走った。
ソウシの感触を思い出さないように、唇に右手の甲を押しあてた。
(ソウシさん…どうして?)
ヒロインは今にも泣き出してしまいそうだ。
あんな事をする人とも思ってなかったし、力強く手を握られて
全く抵抗できなかったのも怖かった。
キッチンの扉の前に着くと、勢いよくドアを開けた。
中ではいつものように料理をするナギの姿があった。
ナギ
「!!? ヒロイン?
どうした?」
いつもと様子の違うヒロインが飛び込んで来て
ナギも驚いた。
ヒロインはナギの姿を見た途端、堪えていた気持ちが崩れ
ギュッとナギの胸に抱きついた。
突然の事にナギは驚いた。
ヒロインがここでこんな事をしてくるなんて珍しい。
ナギ
「ヒロイン?」
トワ
「…あ…ナギさん、僕またあとで来ますね?」
ヒロイン
「!!!」
その声を聞いてヒロインはバッとナギから離れた。
そして食堂のドアがパタリと閉まった。
ナギは食堂にいるトワと話をしている途中だったらしい。
ヒロイン
「あっ…ごめんなさい…トワくんと…」
ナギ
「…いい…それよりどうした?」
ナギを目の前にすると、とても話す気になれない。
ソウシにキスされたなんて言う事ができない。
どうしようかと俯いていると、スッと衣擦れの音が聞こえ顔を上げたヒロイン。
すると、ナギが両手を広げていた。
ナギ
「ん…」
ヒロイン
「?」
ナギ
「…来いよ…」
ヒロインは戸惑いながらもナギの胸に抱きついた。
ナギに優しく抱かれていると、ソウシとの事を忘れてしまいそうになる。
ナギ
「何かあったのか?」
ヒロイン
「…んーん…ごめんね?
もう大丈夫…お料理の途中なのに…」
なんだか声も表情も暗いヒロイン。
ナギは何かあったなと感じた。
ヒロイン
「私も洗濯物たたまなくちゃ!」
ナギの胸から抜けだし、精一杯の笑顔を見せた。
ナギ
「…そうか…」
本当は何があったか聞き出したかったが、話してこない所をみると
ヒロインも色々考えているのだろうと思った。
ナギはドアへ向かって歩こうとするヒロインの手をグッと掴み
振り返らせた。
そして唇を重ねようとした。
ヒロイン
「あっ…!」
ヒロインは思わずナギのキスから顔を背けた。
ナギ
「!?」
ナギは拒否をされ驚いた。
ヒロイン
「…あ…えと…わ、私洗濯物…」
ナギ
「さっき聞いた…」
気まずい空気が流れる。
ナギに掴まれた手は、一向に力が緩まない。
ヒロイン
「…その…」
もし話したらナギはどんな反応をするだろう。
ヒロインはどうしていいか分からない。
ハヤテ
「あ~ハラ減ったぁ!
ナギ兄メシまだ!?」
食堂からハヤテの声が聞こえた。
するとナギの手が緩み、ヒロインは慌てて手を離し
キッチンを出た。
(どうしたらいいの?)
廊下で呆然と立ち尽くすヒロイン。
頭の中がぐちゃぐちゃで、ナギの事もソウシの事もどうしていいか分からない。
でもナギに嘘をつくのも嫌だ。
ナギは怒るだろうか…。
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