一番好きなものは…
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結局ハヤテと別れた後、ヒロインを見つける事が出来なかったトワは
もしかして…という思いも込めて、シリウス号へと戻ってきた。
しかしヒロインの姿は見当たらなかった。
ソウシ
「あれ?トワひとり?
ナギどうしたの?」
トワ
「あっソウシ先生! ヒロインさん帰ってきました?」
ソウシ
「ヒロインちゃん? まだだと思うけど…
どうしたの?」
トワの不安げな表情に、ソウシは首をかしげた。
トワ
「あ…えと…」
なんて話せばいいのか口ごもっていると、甲板の方からドカドカと
足音が聞こえてくる。
ナギ
「ハヤテ!」
ハヤテ
「………」
ナギ
「オイ!」
ハヤテはソウシとトワの前に来ると、ハッとしたような表情を浮かべ
気まずそうに俯いた。
ナギ
「待てっていってるだろ?」
ナギがハヤテの肩を掴むが、ハヤテは力任せに振りほどいた。
ハヤテ
「オレはナギ兄を見損なった!」
ナギ
「………」
ナギをキッと睨むハヤテ。
ソウシ
「…何事?」
ハヤテ
「…ナギ兄、浮気してた」
ソウシ
「えっ?!」
トワ
「やっぱり…そうだったんですか…?」
ナギは呆れて何も言う気になれない。
ハヤテ
「…なんとか言えよ!」
ナギ
「話す気にもなれない…勝手にそう思ってろ…」
ハヤテ
「なんだよそれ! 逃げんのかよ!?
ヒロインにもそうやって言うのかよ!?」
さすがのナギもその言葉に、イラッと火がついた。
ナギ
「あ?」
すると、その騒ぎに遅れてシンが現れた。
シン
「何の騒ぎだ?」
ナギ
「…もういい、お前らには関係ない。
オレが誰とどうしようと…」
シン
「…だそうだ…ヒロイン」
ナギ&ハヤテ
「!!?」
シンがスッと後ろを向くと、怯えた顔のヒロインがそこにいた。
シン
「市場のトコでひとりでいたから、オレが連れてきた」
ヒロインは話のほとんどを聞いていた。
この状況でなんて答えればいいのだろう…。
ナギの事は信じてる。
浮気なんて考えられない。
ヒロイン
「あ…あの…私、ケーキ…作らなくちゃなので…
失礼します!」
ヒロインは船室へと続く階段を駆け降りていった。
ハヤテ
「ヒロイン!!」
ソウシ
「どういう事? ナギの答え次第では、ホントにどうでもよくないんだけど…」
ナギ
「………」
メンバーが揃ったこんな場所で真相を話す事なんてとてもできない。
ナギは面倒臭そうにタメ息をつくと、ヒロインの後を追って船内へと入っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
ヒロインはキッチンに入ると、深呼吸をした。
ハヤテが何を見て『浮気』と言っているかは分からないが、
自分を残して走っていったのは、その事を確かめる為だったのかと
やっとつじつまが合った。
ナギがそんな事するはずがない…
でもハヤテがウソをつくはずもない、あんな剣幕で
慕っているナギを責めるなんて、初めて見た。
そんな事を考えていると寄り掛かっていたキッチンのドアがいきなり開き、
入ってきたナギの胸にもたれてしまった。
ヒロイン
「あっごめんね?」
慌てて体勢を直し、ケーキ作りをしてました風に
調理台へ並ぶ材料の前へ走った。
ナギは一言も話さず、買ってきた食材を同じ調理台に置くと
背中を向けて、黒のギャルソンエプロンを腰に巻きつけた。
何も話してこない事になんだか気まずくなってしまう。
ヒロインは、よしっ!と気合を入れて
ナギの背中に抱きついた。
ナギ
「!!?」
ナギは驚いた。
まさかヒロインからこんな事をしてくるなんて…
自分のオナカに回された、細い腕にギュッと力が入った。
ヒロイン
「…ナギ? 私、信じてる…」
そう言ってポスッとナギの背中に顔を埋めた。
ナギはその愛しい言葉に、胸の奥がジンと疼いた。
本当は自分から話さなきゃいけない事なのに、ヒロインは分かって話しかけてくれたんだと…
ナギ
「浮気なんてしてねぇ…」
ヒロイン
「うん」
ナギ
「…ヒロインが分かってくれてればそれでいい…」
ヒロイン
「でもハヤテさんと…」
ナギ
「アイツは勝手に勘違いしてるだけだ」
ヒロイン
「…うん…でも仲直りしてね?
ナギとハヤテさんがあのままだと悲しいから…」
ナギはそう言われ、心が温かくなった。
この子は本当に不思議な子だと思った。
ヒロインに言われた一言で、さっきまでのトゲトゲしていた感情が
一気にどこかへ行ってしまった。
ナギはヒロインの手をそっと握ると、「ありがとな」と呟き、振り返った。
そこには心配そうに見上げてくるヒロインがいた。
ナギ
「…なんだよ…ハヤテと話すって言ってんだろ?」
ヒロイン
「あ…うん!」
ナギの少し照れた表情を見て、やっと安心した。
ヒロインはニッコリ笑うと、ケーキの準備をし始めた。
ナギ
「そういえば、お前なんのケーキ作るんだ?」
ヒロイン
「内緒! でも多分スッゴク時間掛かるから
お料理のお手伝い、少ししかできないかも」
ナギ
「そんなスゲぇの作る気なのか?」
ヒロイン
「あ、うーうん、スゴクはない…んだけど…
でも…スゴイのかな?」
どんなケーキなのかは教えてもらえずに、ヒロインはニコニコしながら
材料を混ぜたり、溶かしたりしている。
初めのうちは気にしていたナギも、段々と料理が間に合うか心配になり
自分の作業に集中し始めた。
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その頃、ハヤテとトワは船内の飾り付けをしていた。
なんとなく食堂の飾り付けは、ナギがキッチンにいるので
気まずくて取りかかれない2人。
トワ
「ハヤテさん…ナギさん本当に浮気してたんでしょうか?」
ハヤテ
「…そんなの…わかんねぇよ…」
トワ
「僕、信じられません… でも女の人を追って行ったのは僕も見ましたから…」
ハヤテ
「あーもう訳わかんねぇ! ハラも減ったしよぉ…
トワお前なんかもらって来いよ!」
トワ
「えっ嫌ですよ! 僕だってナギさんと気まずいです!
ハヤテさん、謝った方がいいですよ!
そしたらきっと…」
ハヤテ
「…そうだな…オレだってナギ兄の事、そんな風に思いたくねぇし…」
そう決心して、ハヤテとトワは食堂へ向かった。
飾り付けをしに来た感じで、ハヤテもトワも恐る恐る食堂へ入ると
チラッとキッチンに目をやった。
ナギもヒロインもピリピリした空気を放ち、
一言も話してないようだ。
トワ
「ハ…ハヤテさん…なんかとても話す雰囲気じゃ…」
ハヤテ
「そうだな…」
トワ
「も、もしかして僕達のせいで、 ナギさんとヒロインさんケンカしちゃったんでしょうか?」
確かにそんな風にも見える。
一言も話さない2人を見ると、なんだか罪悪感が沸いてくる。
見て見ない振りをした方がよかったのか?
ハヤテとトワは飾り付けに全く集中出来ず、なんだか雑なものになってしまった。
ハヤテ
「トワ…また後でやろうぜ…
まだ他もやるようだろ?」
トワ
「そうですね…」
しょんぼりと肩を落とし、2人は食堂を後にした。