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結局ヒロインが宿へ戻ってきたのは、それから1時間経った頃だった。
ナギはベッドへ入り、ヒロインが部屋に入ってきた事にもちろん気付いたが
寝た振りをした。
そんな事ヒロインには、分かってしまうに決まっている。
話し掛けようか戸惑った足音が部屋に響くが
一向に動かないナギに、ヒロインは風呂場へと歩いていった。
ヒロインと別れた今、一緒の部屋にいる事は苦痛だ。
付き合う前とは違う、なんとも言えない空気にナギは耐えきれなくなりそうだった。
しばらくすると風呂から上がったヒロインが
ベッドへ入っていいのか悩んでるようで
立ちつくしていた。
ナギはベッドからモソッと起き上がると
何も言わずにソファーに向かい、寝ころんだ。
その姿を見たヒロインは、胸が痛くなった。
ナギは一度も顔を見てもくれない。
しかしこのまま終わってしまうのはもっと嫌だ。
嫌われてても、自分の気持ちを伝えようとギュッと拳を握った。
ヒロイン
「ナギ…?」
背中を向けているナギは、話しかけられドキリとした。
ヒロイン
「あの…ナギに甘えててごめんなさい…
もう今さらだけど…」
ナギはヒロインの口からリュウガが好きだとは
何が何でも聞きたくなかった。
ナギ
「も…いいから…悪い、何も聞きたくない」
その言葉にヒロインはショックを受けた。
もう何も聞いてもくれない。
あの優しいナギはここにはいないんだ。
ヒロインは「ごめんなさい」というと、ナギのぬくもりが残るベッドへと入り込んだ。
こんなに傍にいるのに、もう恋人としてのナギはここにはいない。
本当だったらナギに抱きしめられながら、ナギの匂いに包まれながら寝ているはずだったのに…
そう思うと涙が溢れてしまう。
ナギに気付かれたくないのに…
ヒロインはベッドの中で丸まり、声が漏れないように頭まで布団をかぶった。
ナギはとても寝付けなかった。
小さく泣いてる声が聞こえる。
抱きしめてやりたいが、ヒロインはもうリュウガのものなんだと
ナギはギュッと目を瞑った。
そしてソファーから立ち上がると、部屋を出ようとドアに向かって歩いた。
ヒロイン
「グズッ…ナギ!? どこ行くの?」
ナギ
「…いると辛いだろ?」
ヒロイン
「?…何が? …つ、辛いのはナギの方でしょ?
私なんかと…ヒッ」
ダメだ。
ヒロインの泣き顔を見ると、どうしても気持ちが揺らいでしまう。
もう自分のものではないのに…
ナギ
「…どう思ってもいい…」
ナギはドアノブに手を掛ける。
するとヒロインはベッドから飛び降りて
ナギの背中に抱きついた。
突然の事にナギは動揺した。
ヒロイン
「ヒッ…わた…しはヒッ…どうでもよくないの…
ナギみたいに…ヒッ…割り切れない…」
ヒロインの体が、手が自分を抱いてる。
リュウガへの想いと自分への罪悪感で気持ちが混乱しているのだろう。
ナギ
「…船長は…信頼できる男だし…
オレの事なんてもう忘れろ…」
ヒロイン
「船長…?
無理だよ! …もう覚えちゃってるの…ヒッ
わたしナギの事…」
ナギ
「お前がそういう事言うな!!
そんなどっちもみたいな…そんな女だったのかよ?!」
ナギは堪らず振り返り、ヒロインを睨んだ。
しかしすぐに表情を崩した。
泣きはらした目で、一生懸命伝えようとしてる。
大きな瞳からはボロボロと大粒の涙がこぼれてる。
ヒロイン
「…そんな…女って…? ヒクッ…そんなに…重かった…?
ナギの事が好きだけど、ナギが別れたいなら…」
ナギ
「あ? オレが好きって…」
ヒロイン
「え…?」
ナギ
「お前船長…」
ヒロイン
「?」
キョトンとした表情で見上げるヒロイン。
ナギはどういう事だ?と、言葉が詰まってしまった。
リュウガの事が好きになり、自分の事をどう切り離しそうか悩んでいるんじゃないのか?
ナギ
「…お前さ…ピアス…どうした…?」
ヒロイン
「え?」
ヒロインの心臓はドキリと跳ねた。
何故今それを言ってくるのか…? 失くしたなんてとても言えない…
口ごもってるヒロインを見て、ナギはやっぱり…と、少し期待をしてしまった自分を恨んだ。
もしかしたら自分の勘違いなんじゃないかと…
ナギ
「…とりあえず、もうこんな時間だから寝ろ…」
ヒロイン
「ナギは?」
ナギ
「オレは…」
この部屋にいてはいけない。
決心したのに、気持ちが折れてしまいそうだ…
ヒロイン
「も…嫌いかもしれないけど…
一緒に…寝て…くれる?」
その言葉を聞いて、ナギはムカッと怒りが込み上げた。
リュウガの代わりに一緒に寝ろというのか?
ナギ
「あ? ふざけんな!!
オレはお前の寂しさを埋める為にいるんじゃねぇんだよ!」
そう言って力任せにドアを開き、部屋を出て行った。
ヒロインは呆然と立ち尽くしてしまう。
ナギが本気で怒った。
そんなに嫌われてしまったのかと、目の前が真っ暗になった。
もう望みもない。
どんなに泣いてもどんなに謝っても、元に戻る事はないのだ。
それが今ハッキリした。
全身がガクガクと震え、また新しい涙が溢れてくる。
涙は枯れないんだと、初めて分かった。
ヒロインは窓から薄っすらと紫色に染まり出した空を見つめると
マフラーと上着を着込み部屋を出た。
・・・・・・・・・・・
シン
「なんだ…早いな」
宿の食堂に顔を出したシンは、先に座っていたナギを見つけ声を掛けた。
ナギ
「………」
シン
「昨日お前ら何かあったのか?」
珍しくシンが他人の事に首を突っ込んでくると、ナギは少し嫌悪を覚える。
ナギ
「…関係ないだろ?」
シン
「フン…まぁどうでもいいが…
朝早くヒロイン、出て行ったぞ?」
ナギ
「あ?!」
シンの言葉に俯いていたナギは顔を上げた。
シン
「なんだ知らないのか?
5時頃だったか…空が明るくなり出した頃、宿の前を歩いていた」
ナギはてっきり部屋で寝ていると思っていたので、驚いた。
ナギ
「それ本当か?」
ソウシ
「おはよ~! 今朝も寒いね」
トワ
「ホントです~!僕、夜中何度も起きちゃいました!」
いつもの朝のようにソウシとトワは声を掛けてきた。
リュウガ
「おっ!なんだお前ら早ぇな!」
トワ
「わっ!ビックリです!!
船長こそこんな時間に起きてるなんてどうしたんですか?」
いつも昼過ぎくらいまで寝ているリュウガなのに、今朝はこんなにも早く食堂に来ている。
リュウガはナギの顔を見た。
リュウガ
「おいナギ! お前ヒロインはどうした?」
ナギ
「…知りません…オレ達別れたんで…」
その言葉に、ソウシ、シン、トワは驚き
ナギを見つめた。
トワ
「わ、別れたって!! どうしてですか?」
ソウシ
「ナギ?! それ本気で言ってるの?」
ナギ
「………」
ナギの反応を見て、リュウガはニヤリとした。
リュウガ
「そうだよな! ナギはヒロインの気持ちが重くって嫌気がさしたんだよな?」
ナギ
「…? なんの事ですか?」
リュウガ
「あ?違うのかよ?
ヒロインはナギに寄り掛かり過ぎて、嫌われたって思ってるぞ?」
ナギ
「なっ…何言って!! ヒロインは船長の事が好きになって…」
ナギがそういうとその場にいたメンバーは、「えっ?」という表情を浮かべた。
リュウガ
「お前それ本当にそう思うのかよ?」
ナギ
「そう思うも何も、船長…昨日ヒロインを抱いてましたよね?」
リュウガ
「あ? あぁあの時か…抱いたっていうか…」
ナギ
「アイツはオレに気を使って、船長が好きな事言えなかったんです。
アイツの為にもこれがいいんです。
もうオレの事は気にしないでください」
ナギは俯きながらその場を去ろうとする。
リュウガはナギの背中に向かって声を掛ける。
リュウガ
「じゃあオレがヒロインもらっていいんだな?
アイツが昨日夜中まで何探してたかも知らねぇクセに…
何がアイツの為だ… アホくせぇな…」
さすがのナギもこの挑発に耐えきれなくなった。
そしてリュウガの前に立ちはだかった。
ナギ
「いくら船長でも…許さない…
ヒロインの事、大切にしないなら…泣かすような事したらオレ…許しませんから!!」
リュウガ
「…それがアホだって言ってんだよ!
ったくオメェらはメンドくせぇな…
ナギ、お前昨日オレとヒロインが抱き合ってた場所に今から行け!」
ナギ
「…断ります…」
リュウガ
「船長命令だ…行け!」
いつになく凄みのある物の言い方で、リュウガはナギを睨みつけた。
ナギは何も言い返す事ができず、拳をグッと握った。
リュウガ
「お前が知りたい事が分かるよ…」
ポンッとナギの肩に手を置くと、リュウガは「もう一度寝る」と言って部屋へ戻ってしまった。
ソウシ
「話が全く見えないんだけど…」
シン
「…別れたって…お前…」
ナギはその場で考えた。
(オレの知りたい事…?)
シン
「…お前オレ言ったよな? 守れないんだったら
オレがもらうって…」
ソウシ
「そうだよね…別れたんだったら私も動いていいんだよね?」
ぼんやりと大人のやり取りを見ているトワ。
ハッと気付くと向かいにいるソウシが、目で合図を送ってくる。
トワはそういう事かと、慌てて参戦した。
トワ
「ぼ、僕だっていいんですよね?
ヒロインさんの彼氏になっても…」
ナギはそう言われて、目が覚めた。
別れるという事はそういう事だ。
もう守る事も、誰と何をしようが止める権利なんてない。
そんなの黙って見てられるかと、閉じ込めた気持ちが沸き上がった。
ヒロインの事が好きなんだと。
トワ
「痛っ!!」
ナギ
「お前ら…誰に言ってんだ…
ヒロインは誰にも渡さない!」
ナギはそういうと走り出した。
トワ
「いたぁ~…なんで僕だけゲンコツされるんですかぁ」
涙目のトワはソウシとシンに聞いた。
ソウシ
「ふふっトワ頑張ったね。 よしよし」
シン
「世話が焼けるヤツらだな…」
トワ
「うぅ…ホントですよ。。
ナギさんがヒロインさんをそんな事で手放すなんて
もし本気でそうだったら、僕も怒ります!」
3人はやれやれと疲れた表情を浮かべたが
その心中は、とても清々しい気持ちだった。
ヒロインの事は好きだし、いつか本当に恋人になれる日が来たらとは思う。
だがこんな形でナギと別れたヒロインと付き合うなんてごめんだと思った。
ハヤテ
「おはよ~! ?なんかあったのか??」
シン
「…お前はいつものん気でいいな…」
ハヤテ
「あ?」