スノーフレーク
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廊下を歩いていると、お風呂から上がったトワが向こう側から歩いてくる。
ヒロインはさっき助けてもらったのに、しっかりお礼を言ってなかった事に気付き
トワの元へと近寄った。
ヒロイン
「トワくん、先にお風呂ごめんね?
あと、さっき助けてくれてありがとう」
トワの明るい声が返ってくるかと思い、トワの顔を覗き込むと
俯いたまま、ヒロインの顔も見ようとしない。
トワ
「あ…いえ…あの、僕仕事残っているので…」
ヒロイン
「トワくん!?」
まるでヒロインを避けるように、走り去るトワ。
ヒロインは、いつものトワらしからぬ行動に心配してしまう。
トワはさっき怪我でもしたのだろうか?
こんな風にそっけなくされたのは初めてだ。
意外にもショックを受けたヒロインは、その場で立ちつくしていた。
するとコツンと頭を小突かれた。
シン
「何をぼーっと突っ立ってる?」
ヒロイン
「あ…シンさん…」
ヒロインは、頭に手を当てて振り返った。
シン
「…? なんだ?何かあったのか?」
なんだか暗い表情のヒロインに気付いたシン。
ヒロイン
「いえ…」
シン
「さっきは悪かったな…棚の下敷きになるとこだったみたいだな」
ヒロインは、パッと顔を上げた。
シン
「なんだ?」
シンが謝ってくるなんて珍しい事だ。
ヒロインは見下ろしてくるシンを見て
なんだか泣きそうになってしまった。
シンは普通に接してくれる。
でもトワは? 今までのような関係に戻るにはどうしたらいいのだろう?
シンと話しているのにトワの事を考えてしまう。
もしかしたら知らないうちにトワの事を傷つけていたのだろうか?
シン
「…お前…ナギと何かあったのか?」
ヒロイン
「? ナギ…ですか?」
シン
「違うのか? なんでそんな顔してる?」
ヒロインは自分でどんな顔をしていたのかが分からない。
でもトワとなんだか気まずくなってしまい、
大切な弟が自分から離れていってしまうような寂しさが辛かった。
シンになんて返事を返せばいいか考えていると
いきなりブニッと頬を摘まれた。
ヒロイン
「ヒンはぁん…いひゃいれすぅ~~」
シンはナギと違って、つねる力に容赦はしない。
シン
「お前、このオレが謝ってるというのに
他の事を考えるなんていい度胸してるな」
ヒロイン
「ふ、ふいまへん(すいません)!」
やっと手を離してくれるが、ヒロインの頬はビリビリと余韻が残る。
ヒロイン
「うぅ~シンさん、ヒドイです!
私…だって考え事する時だって…ックシュ!」
シン
「…お前はバカでも風邪をひくのか?」
ヒロイン
「風邪でもバカでもないです!! クシャミが出ただけです!!」
ヒロインはシンに向けて、顔をしかめて言い放つと
キッチンの中へと逃げ込んだ。
ナギ
「どうした?」
駆け込んできたヒロインに驚き
ナギは心配そうに聞いてきた。
ヒロイン
「あ…うーうん、手伝うね?」
夕食まであと少しの時間だった為、ナギは仕上げに取り掛かっていた。
ヒロインは食器棚からお皿を取り、台の上に並べた。
ヒロイン
「ここのお皿は平気だったんだね?」
ナギ
「あぁ、でもいくつか割れたのはある。
明日壊れた物の調達に近くの港へ寄るらしいぞ」
ヒロイン
「ホント!? やった!」
ヒロインは倉庫に置いてあった保存食用の棚に
お気に入りの果実酒の入ったビンが数個割れてしまい。
また作りたいと思っていた。
ナギ
「ふっお前、どうせ食いもんの事だろ?」
ヒロイン
「う… そ、そうだけど?」
ヒロインは開き直って、ナギに強気で答えた。
ナギ
「ふはっ ったく、お前とハヤテは同類だな」
ナギがそういうと、食堂から声が聞こえた。
ハヤテ
「冗談だろナギ兄!」
ヒロイン
「ハヤテさん!」
ハヤテがカウンターから身を乗り出して反論する。
ハヤテ
「オレこいつほど意地汚くねぇもん!」
ヒロイン
「なっ! そんな事ないです!!
第一ハヤテさんはなんでここにいるんですか?」
ハヤテ
「え…それは…」
ヒロイン
「…ハヤテさん…パウンドケーキの残り食べますか?」
ハヤテ
「食う!!」
ハヤテの子供のような反応に、ナギもヒロインも笑ってしまう。
ナギ
「ククッまぁ、お前らは同じようなもんだな」
ハヤテ
「い、今のは違うって! おっ!トワ!!
お前も食うか?パウンドケーキ」
廊下を歩くトワが見えたのか、ハヤテはトワを呼びとめた。
その名前にヒロインはドキリとしてしまう。
トワはチラリとキッチンにいるナギとヒロインに目をやると、
首を振った。
トワ
「…いえ、まだ仕事が終わらなくて…」
そう言って廊下を歩いて行ってしまった。
ハヤテ
「なんだ…?アイツ…」
ハヤテは不思議そうにトワを見送った。
ナギとヒロインは、それぞれトワの行動に考え込んでしまった。
やはりトワの様子がおかしい。
そしてそのままナギもヒロインも黙り込んでしまった。
ハヤテ
「あ? なんだよ2人とも…」
一向に分からないそれぞれの反応にハヤテは片眉を上げて、
残りのパウンドケーキを頬張った。
・・・・・・・・・・・・・・・・
夕食が済むと、ヒロインはさすがにトワの態度を放っておく事ができなくなった。
これが姉心というモノだ。
自分の弟だって、もしそうなったらお節介とわかっていながらも
きっと放る事はできない。
片付けをしているナギの横で、ヒロインは材料をそろえ始めた。
ナギ
「何してるんだ?」
ヒロイン
「チョコチップクッキー作る」
ナギ
「…トワにか?」
トワがチョコチップクッキーが好きな事は誰もが知っている。
それにヒロインが作るのは、ナギが認める程の絶品だ。
返事を返さないヒロインに、ナギはそっと声を掛ける。
ナギ
「トワもそういう時だってある…放っておいてやれ」
ヒロイン
「ほっとけないよ! だって…」
ヒロインは思わず声が大きくなってしまった。
だって…トワをああしてしまったのは、自分かもしれないのだ。
あの棚が倒れてくる前までは、いつものトワだったのだから…
やみくもにボウルに入れた材料をかき混ぜるヒロインを見て
ナギは、はぁ…とタメ息をついた。
ナギ
「…だったらもっと優しく作ってやれ…
そんな混ぜ方したら固まりできるぞ」
ヒロインはナギに言われ、気付かない内に力任せにしていた事に気付いた。
何をそんなにヒロインは気にしているのか、ナギは正直不思議だった。
トワがどう思おうが、どんな態度を取ろうが関係ないはずだ。
やはり2人の間に何かあったのだろう。