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12月の底冷えをするような寒さに
倉庫で棚の整理をしていたトワとヒロインはかじかむ手をさすっていた。
ヒロイン
「トワくん、今日すごく寒いね…
うぅ~このビンも冷え切ってて、冷た過ぎる!!」
保存食用の瓶を持って、棚を拭き掃除しているが
体が思うように動かず、なかなかはかどらない。
トワ
「ホントですね! はぁ…終わったらナギさんに
温かいものもらいにいきましょう!」
両手に息をかけながら、寒さに慣れているトワも弱音を吐いていた。
するとガタンッと、ものすごい音を立てて船が揺れ
その拍子にトワとヒロインは、床に倒れ込んでしまった。
珍しく大きな波にまともに突っ込んでしまったようだ。
シンが舵をとっているというのに珍しい。
トワ
「いたた…大丈夫ですか? ヒロインさん」
ヒロイン
「う…ん… スゴイ揺れたね…」
起き上がろうとした途端、ヒロインの背中にあった保存食用の棚がグラリとバランスを崩し倒れてきた。
トワ
「ヒロインさん! 危ない!!!」
トワが咄嗟に棚を両手で支えたお陰で、棚の下敷きにはならなかったが
その反動で棚の上にあった瓶詰めが2人めがけて落ちてきた。
ガッシャーンと大きな音を立て床で割れるビン。
トワ
「だ、大丈夫ですか?」
ヒロインはトワが両手で棚を支えているその間にいた。
そのおかげで降ってきたビンに当たる事もなかった。
ヒロイン
「うん…でも…」
2人は酢漬けのお酢や、オリーブオイルまみれで頭からズブヌレになってしまった。
ヒロイン
「トワくんこそ大丈夫? ビン当たったで…」
ふと顔を上げると、こんなに近くにいたのかというくらい
トワの顔が目の前にあった。
ヒロインは急に意識してしまい、慌ててトワの支えてくれている棚との間から抜けようとした。
しかしトワの腕はヒロインの動きを阻止するかのように動かない。
ヒロインはトワの顔を見上げると、じっと真剣な目で見つめてくる。
ヒロイン
「あ…えと…片付け…して、お風呂…」
気まず過ぎてトワの顔を見る事が出来ない。
するとトワの顔が近づき、唇が触れそうになり
ヒロインはギュッと目をつぶった。
ヒロイン
「ト、トワくっダメ…」
ナギ
「平気か?」
ヒロインが声を発したと同時に、倉庫の入り口からナギの声が聞こえた。
その声に反応したかのように、トワの顔がパッと離れた。
ヒロイン
「ナギ!」
ヒロインはホッとした。
トワ
「ナギさん! あっぼ、僕…あの棚…戻してもらえますか?
この体勢じゃ戻せなくて…」
トワは慌てたようにナギにお願いした。
ナギは棚を支えてるとはいえ、あまりにも至近距離にいる2人を見て
不機嫌な表情を浮かべた。
ナギが棚を戻してくれると、トワはサッと立ち上がった。
トワ
「ヒロインさん! ここ僕が掃除するんで、お風呂行ってください!
風邪ひいちゃいます!!」
ヒロインは何も言ってこないが、自分がキスしそうになった事くらい気付いただろう。
トワはヒロインを見る事ができない。
ヒロイン
「で、でもトワくんもびっしょりだし、
ビンが当たって背中アザになってるかもよ?
ソウシさんに…」
トワ
「平気です!僕頑丈ですから!!」
いつものトワらしからぬ、慌てた態度にナギは何かを感じた。
ナギ
「ここはオレがやるから、2人とも風呂とドクターのトコ行け」
トワ
「でも…」
ナギ
「いいから行け、お前ら体早く温めろ!
風呂出たら、あったかいスープ作ってやるから!」
ヒロイン
「…うん、トワくん行こう?」
ヒロインが立ち上がろうとすると、ナギはグッとヒロインを抱き上げた。
ヒロイン
「きゃあ!」
ナギ
「アホ!ガラスの破片がいっぱいあるのに、むやみに動くな!」
トワは目の前で抱き上げられてるヒロインを見て
しょんぼりとしてしまう。
自分にはあんな風に、ヒロインの動きを気にして抱き上げてあげようなんて
思いつかなかった。
ヒロイン
「トワくん大丈夫? どっか打った?」
ナギに安全な場所に降ろしてもらったヒロインは、その場から動かないトワが心配になった。
トワ
「あっいえ!僕もお言葉に甘えてソウシ先生のところへ行きます!
ヒロインさんお風呂先に使ってください!」
トワはいつもの爽やかな笑みを浮かべて、倉庫の入り口へと歩き出した。
ヒロインはチラッとナギの方を振り返るが、ナギは割れたガラスの破片を集めていた。
ヒロイン
「ナギ…お風呂…行ってきま…クシュッ」
ナギ
「早く行け!風邪ひくぞ!!」
ヒロインは、なんだかトワとナギの不穏な空気を感じ、それ以上何も言えなくなってしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・
ソウシ
「うわぁ…スゴイ匂いだなぁ…ふふふっ」
びしょ濡れのトワは、ナギに言われるがままソウシの元へと来た。
医務室もさっきの衝撃で、棚の物が床に落ちてしまったようだ。
薬品のビンがいくつか割れたのだろう。
ソウシが集めたガラスの破片が、部屋の隅に置いてあった。
トワ
「すいません!あの…背中にビン当たったくらいなんで
別に…」
ソウシ
「…トワ…何かあったのかい?」
向かい合わせで座るソウシは、自分の目を見ないトワに優しく微笑んだ。
トワ
「何かって…その棚が倒れてきて…」
トワはさっきの事を見透かされたのではないかと、
ドキドキして俯いてしまう。
ソウシはそんなトワを見て、それ以上何も聞かず、
お湯で絞った温かいタオルをトワに渡した。
ソウシ
「とりあえずそれで体拭きな?
お風呂ヒロインちゃんが入ってるんでしょ?」
トワ
「あっありがとうございます」
タオルを受け取ると、トワはシャツを脱いで体を拭き始めた。
ソウシはトワの背中を見ると、やはり大きなアザが2つできていた。
ソウシ
「トワ、こことここ痛むでしょ?」
ソウシが手の平でグッと押す。
トワ
「っ!! は…はい…」
ソウシ
「大変だったね。
お風呂出たらもう一度ここへおいで?
湿布薬用意しておくから」
トワ
「…はい…」
トワはソウシにだったら相談できるかもしれないと
ゴクリと喉を鳴らし、顔を上げた。
トワ
「あ、あのソウシ先生!」
ソウシ
「ん?」
トワ
「…僕、最近おかしいんです。。
ヒロインさんの傍にいると、胸が苦しくなって…
ナギさんと一緒にいる所を見ると、なんだかすごく悔しいというか…」
トワはなんだか情けない表情を浮かべて、ソウシに打ち明けた。
ソウシはそんな事とっくに知ってるよ とでも言うように
トワに優しく微笑んだ。
ソウシ
「トワ? トワは今まで人を好きになった事ある?」
トワ
「あります! まぁ小さい頃ですけど…
でもその時とは全然違うんです!」
ソウシ
「そうかぁ…うん、そうだね。
それはきっとトワが成長したからだよ」
トワ
「?」
ソウシ
「体が成長するように、心だって成長するんだよ。
だからトワが小さい頃感じた『好き』という感情と
今感じてるヒロインちゃんへの感情はまるで違うはずだよ?」
トワ
「それって…僕…ヒロインさんに恋をしてるって事ですか?」
ソウシ
「うん。違う?」
トワはそう言われ、今までの気持ちを思い返していた。
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