三日月ドロップ(前編)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
・・・・・・・・・・・・・
ヒロイン
「ナギ…どうしたのかな…」
自分の掛け間違えたボタンのせいで、ナギとシンが争いそうになっているとは知らないヒロインは
湯船に浸かって、ナギの事を考えていた。
シャンプーも2回して、ボディーソープで体もしっかり洗った。
シンの匂いとお酒の匂いは消えただろうか…
ヒロインはブクブクとバスタブの中に、頭まで沈んだ。
すると、バタンという音が聞こえた。
部屋のドアがしまる音だ、ナギが帰ってきたのだろうか?
ザバッとお風呂を上がると、濡れたままの体にバスタオルを巻き
ヒョコッと顔だけ部屋の方へと出した。
ヒロイン
「ナギ、おかえりなさい」
ナギ
「あぁ…」
チラッとこちらを見るが、すぐに視線をそらすナギ。
その背中からイライラした怒りのオーラが伝わってくる。
ヒロインは着替えがベッドの上にあり、このままの姿で出て行っていいものか悩んだ。
こんな時に限って、こんな格好で出ていったら
滑稽ではないか…?
ヒロイン
「あの…ナギ…」
恐る恐る声を掛ける。
するとナギはこちらへ歩いてきた。
ヒロイン
「えっ?ど、どうしたの??」
問いかけるもナギは何も言わず、力強くヒロインを抱きしめた。
ヒロイン
「ナ、ナギ! 濡れちゃうよ!?」
ナギ
「…いい…」
ナギの力に負けてしまいそうなくらい、きつく抱きしめられる。
ヒロイン
「ん…ナギ…苦しいよ…」
ナギ
「ん…」
返事を返してくれるも、腕の力は緩まない。
どうしたのかとヒロインは、心配になりながら
ナギの胸にもたれた。
少しすると、ふっと腕の力が緩んだ。
ナギ
「…悪い…着替えあっちか?」
ヒロイン
「あ…うん」
ナギの体が離れ、
なんとなく気まずい空気に包まれる。
部屋を出た後、何かあったのか?
ヒロインはとりあえず服を着ようと、ベッドへと駆け寄った。
ナギ
「今日の買い出し、オレと一緒に行くぞ」
その言葉にヒロインはパッとナギを見つめた。
ヒロイン
「うん!行く!!」
一瞬ヒロインの周りに花が咲いたのではないかというぐらい
とびきりの笑顔でヒロインは頷いた。
その顔を見たナギは、イライラしていた事がバカらしくなってしまった。
ナギ
「ふはっ…あぁ、楽しみだな?」
ナギの笑顔にヒロインの胸は高鳴った。
こんなカッコいい笑顔を見せられたら、女の子はみんな恋をしてしまうに違いない。
何度となく向けてくれる笑顔にヒロインは、
うっとりしていた。
ナギ
「ん?どうした?
サラシ巻くの手伝うか?」
ヒロインは、慌ててサラシを手に持った。
とても見とれていましたなんて言ない…。
ヒロイン
「う、うん!!」
もっともっとナギの笑顔がみたい。
サラシを巻くのを手伝ってくれているナギを感じながら
ヒロインは、ニヤケてしまいそうな口元を
必死で抑えた。
・・・・・・・・・・・・・・・
昨晩寝ずに用事を済ませたナギは、昼近くまで部屋で寝ていた。
ふと目が覚めると、部屋の中にヒロインの姿はなかった。
ナギ
「ヒロイン?」
ベッドから起きるあがると、廊下へ出た。
するとハヤテが声を掛けてきた。
ハヤテ
「ナギ兄!起きたのか?」
ナギ
「あぁ、ヒロイン知ってるか?」
ハヤテ
「多分トワと一緒に、昼メシまだ食ってるんじゃねぇかな」
それを聞いて、ナギは食堂へ向かった。
ハヤテの言う通り、宿の食堂でトワと向かい合わせの席で
食事をしているヒロインを見つけた。
ヒロイン
「あっ!ナギ、起きたの?」
ナギを見つけるとニコニコと笑いけ掛けてきた。
ナギはその顔が可愛くて、つい顔が緩みそうになったが、
トワの手前、平静を保った。
ナギ
「あぁ」
トワ
「ナギさんお疲れ様でした!
あれ? 今日はバンダナしてないんですね」
ナギ
「あ? あぁ…忘れた…」
ヒロインを探す事に頭がいっぱいで、それどころではなかった。
シンに挑発されて、しっかりその挑発に踊らされている事にうんざりする。
現にこうして姿を見るまで、シンと一緒なのではないかと、不安に思った。
ヒロイン
「ナギ、ご飯食べるでしょ?
何頼む?」
ヒロインは、メニューを向ける。
すると周りの客がチラチラとこちらを見ている事に気付いた。
ナギ
「…ヒロイン、お前男って事忘れて、
トワと一緒の時もそんな事してたんじゃ…」
ヒロインは、ハッとした顔をした。
ナギは、はぁ…とタメ息をついた。
ナギ
「メシは買い物の時食う。
お前ら食い終わったか? 出るぞ!」
トワとヒロインは、気まずそうに席を立った。
トワ
「ヒロインさん…すいません。。
僕そんな事も気付かないで…」
ヒロイン
「トワくん!トワくんのせいじゃないよ?
私が…と、オ、オレが!!」
ヒロインが必死に男の振りを努めようとする姿を見て、
ナギもトワも吹き出してしまった。
ヒロイン
「あー!2人ともヒドイ!!
私だって頑張ってるのにぃ!」
トワ
「あははっすいません!
だって、スゴクかわいかったんですもん!」
自然にその言葉を口にするトワにナギはピクリと反応した。
しかしトワは全く気付かずに、ハヤテと買い出しに行く為
宿の前で別れた。
・・・・・・・・・・・・・
市場へ来たナギとヒロイン。
いつもだったら2人でいると、自然と手を繋いでくれていたが、
今は男でいなくてはいけない。
ヒロインは、少し前を歩くナギの背中をじっと見つめた。
ナギ
「…オレの背中に穴でも開けるつもりか?」
ヒロイン
「!!?」
ヒロインは、ドキリと胸が鳴ったが
振り返ったナギの優しい笑顔に、微笑み返した。
ナギ
「ふっ大丈夫か?」
ヒロイン
「う、うん…あっかわいい~!」
そこは髪留めが並ぶお店だった。
またしても男として過ごす事を忘れてしまうヒロイン。
店員
「おっ兄ちゃん!彼女にかい?」
ヒロイン
「えっ…あっそか、あぁまぁ…」
スッとお店を通り過ぎるヒロイン。
ナギ
「欲しかったのか?」
ヒロイン
「うーうん、可愛かっただけ。
しかも髪短くなった事忘れてた!
私ホントダメだね…クスクス…」
ナギはその姿を見て心が痛んだ。
ホントだったらそこら辺のヒロインと同い年の女の子のように
アクセサリーやファッションが気になるに決まってる。
なのに今のヒロインにさせている事はなんだ…
男の格好をさせて、自由に買い物もさせてやれない。
ナギは目の前で、いつものように食材をキラキラした目で見ているヒロインを見つめた。
ヒロイン
「ナギ? どうかした?」
ナギ
「………」
ヒロイン
「…ナギ…また何か悪い事考えてるでしょ?」
ヒロインの鋭いツッコミに、ドキリとした。
ナギ
「ふっなんだよ、悪い事って?」
じっと見上げるヒロインの頭にポンッと
手を置いた。
ヒロイン
「ナギ…そういう顔してる時って、1人で悩んでる時だもん…
何考えてたの?」
ナギは驚いた。
いつもニコニコと自分を見ているだけだと思っていたのに、
ヒロインはしっかりナギの表情を読み取れるようになっていた。
(それかオレの顔に出てるのか)
ナギはトンッとヒロインのオデコを指で押した。
ナギ
「アホ、お前がオレの表情読み取るなんて
10年早ぇんだよ!」
そう言ってナギはスタスタと歩きだす。
ヒロインはオデコに手を当てながら、なんだかはぐらかされたような気がしたが
ナギの後を必死で追い掛けた。
☆つづく☆
10/10ページ