三日月ドロップ(前編)
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ハヤテ
「おー!!見えてきたぁ!!!」
マストの上に登っているハヤテが大きな声で叫んだ。
甲板にいたトワとヒロインも舳先の手すりに体を押し付けた。
トワ
「わぁ!ホントです!!
やっと着きましたね~!」
前に立ち寄った港から航海する事10日。
船内の食料も装備も底をつく寸前だった。
ヒロイン
「あれ…? でもなんか港の周りに船いっぱいだね。
なんで港に入らないのかな?」
港を取り囲むように船が停まっている。
ソウシ
「本当だね…なんか全部海賊船っぽいね。」
ソウシが後ろから声を掛ける。
リュウガ
「どうしたぁ?」
お酒の匂いをぷんぷんさせたリュウガが、ヒロインの肩に手を回す。
ヒロイン
「せ、船長!」
リュウガ
「いいじゃねぇか!
それよりどうした?」
ヒロイン
「船が…」
ヒロインは港を指差した。
リュウガ
「なんだありゃ?
ずいぶん不自然な停まり方してるな…
おっ!あそこにリカー号がいるじゃねぇか!!
シン!手旗やれ!!」
シンは赤と白の旗を手に、リカー号に向けて手旗信号を送る。
シンの横でトワが双眼鏡で、様子を伺う。
しばらくすると反応が返ってきたようだ。
トワ
「…船長! どうやらここの島に入るには船内の取り調べをされるみたいです!」
リュウガ
「なに!?」
トワ
「…女…売買…海賊…」
トワは送られてくる信号を解読する。
トワ
「どっかの海賊がこの島の女の人を人身売買しているようで、
全船積み荷まで調べているみたいです」
ナギ
「それって海軍絡みってことか?」
甲板に現れたナギは、グッとヒロインの腕を取り、
リュウガから離し、自分の傍に引き寄せた。
トワ
「どうでしょう…そこまでは分からないみたいですが…」
リュウガ
「なんだよそれ…面倒臭ぇな」
リュウガはガシガシと頭を掻く。
メンバーの視線がヒロインに集まる。
ヒロイン
「?」
ソウシ
「ヒロインちゃんの事見たら、仲間って信じてもらえなそうだよね」
ハヤテ
「そうだな…女ってだけでなんか言われそうだし
ファジーならともかく
ヒロインは海賊って感じしねぇもん!」
ヒロイン
「あっ私、じゃあどっかに隠れて…」
シン
「聞いてなかったのか? 積み荷まで調べるって?
見つかったらそれこそ終わりだろ」
ヒロイン
「…そうでした…」
しょんぼりとするヒロイン。
ソウシ
「降りるのも無理、隠れるのも無理…
船長、今回は上陸を見送りますか?」
リュウガ
「いや、上陸はする。
船の装備が薄すぎる。このままの航海は危険だ。
この島は海軍の取り締まりは緩いはずだ、
きっと島の役人がやってるんだろう」
自分の事で皆を悩ませている事にヒロインは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
どう考えてもお荷物になっている事に間違いない。
ヒロインは俯いた。
するとスッとナギの大きな手が右手を握る。
横にいるナギを見上げると、「大丈夫だ」と優しい顔で見つめ返してくれた。
ヒロインはその顔を見て、決心した。
(皆を困らせたくないもん!!)
ヒロイン
「トワくん!お願いがあるの!!」
トワは突然声を掛けられビックリした。
ヒロインはトワの手を取ると、船内へと走って行った。
取り残されたメンバーは呆然とヒロインとトワを見送った。
ハヤテ
「なんだ?アイツ…」
ソウシ
「何か思いついたのかな?
ナギ、何か言ってた?」
ナギ
「いや…」
ナギはヒロインが何を思いついたのか、考えを巡らせた。
何かとんでもない事を考えているのではないかと、内心ドキドキしていた。
しばらくすると、船内から甲板へと出る階段を登ってくるトワの姿が見えた。
ナギ
「トワ、ヒロインは?」
トワ
「もうすぐきます…」
ハヤテ
「アイツ何してんだ?」
トワ
「僕もよく分らないんですけど、服を…」
シン
「服?」
すると階段から現れたのはトワの服を着たヒロインだった。
ハヤテ
「ぷっ!なんだよお前その格好!!」
ヒロインは脇目も振らずに、リュウガの元へと歩み寄る。
リュウガは腕組みをし、ニヤニヤと笑いながらヒロインに問いかける。
リュウガ
「ふっ何だお前、男装のつもりか?」
ヒロイン
「そうです!」
なんのためらいもなく、ヒロインは胸を張って言い切った。
(何を考えてるんだ…)
ナギはその姿を見て、ヒロインを止めようと足を踏み出そうとした。
リュウガは、グイッとヒロインのアゴを掴み
顔を近づけた。
リュウガ
「お前は思いっきり女なんだよ
そんなんじゃ…」
そういうとヒロインはニッコリと笑い返した。
ヒロイン
「これならどうですか?」
その瞬間、リュウガの腰にあった剣をスルリと抜き取るヒロイン。
ナギ
「おまっ何して…!!!」
ナギが止める間もなく、ヒロインは背中まである長い髪をグッと掴むと
一気に剣でバサリと切り落とした。
ソウシ
「ヒロインちゃん!!」
一歩も引かない、頑固な表情でリュウガを見つめるヒロイン。
リュウガはその顔を見て、笑みがこぼれた。
リュウガ
「わーはっは!! お前はたいした女だな!
よし、今日から島を出るまでは男として扱う。
シン、今すぐ島へ入港しろ!」
シン
「フン、お前にしては考えたなヒロイン。」
シンはポンッとヒロインの頭に手を置くと、航海室へと走っていった。
目の前で起こっている事についていけないナギ。
ハヤテ
「お前スゲー根性だな!」
トワ
「僕、惚れちゃうくらいカッコイイです!」
ハヤテとトワはヒロインを囲み、ここまでやった事を誉め讃える。
ソウシはスッとヒロインの前に出た。
ソウシ
「ヒロインちゃん、おいで?
そんなバラバラの髪じゃおかしいよ。
整えてあげる…いいかな、ナギ?」
ナギ
「あぁ…」
ヒロインを見つめるも、一度もこちらを向こうとはしない。
ナギはどうしていいか分からずに、
ソウシがヒロインを船内に連れて行く姿を
ぼんやりと眺め、たたずむしかできない。
リュウガ
「いやぁ、ヒロインはいい女だな!
な?ナギ!?」
ナギ
「?」
リュウガ
「自分が迷惑掛けてるのが嫌だったんだろ?
ククッ…普通女が髪切るかぁ?
スゲーなアイツは!」
リュウガの言葉にナギはハッとした。
そういう事だったのかと、船内に消えたヒロインを目で追った。
ハヤテ
「ナギ兄大丈夫か?」
ナギ
「あ?」
トワ
「…なんかボーとしてます。」
それはそうだろう、そんな事を考えて
髪まで切るような子だとは考えてもいなかった。
ナギは甲板に落ちたヒロインの髪を見つめ、胸がズキンと痛んだ。
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