AKATSUKI
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ヒロイン
「…許さない…」
アサヒ
「?」
胸の中で小さくヒロインが呟いた。
ヒロイン
「こんな勝手な事をして、絶対に許さない!!」
怒りに満ちたその表情を見て、アサヒは驚いた。
てっきり泣き出すかと思っていたのに、ヒロインの体は今にも海に飛び込もうとしている。
アサヒ
「オイ!待て!!
危ないから待てって!!」
泣き虫で自分がいないと、どこかで泣いているんじゃないかと
いつも心配をさせていたヒロインとは
まるで違う。
アサヒはふっと笑うと、ヒロインの手を引いて走り出した。
アサヒ
「ヒロイン来い! アサヒ兄ちゃんが力になってやる!!」
こんなにも強い子になったのだと、アサヒは驚いた。
やはりどう考えてもナギには敵いそうになかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
リュウガ
「…ナギ…本当によかったのか?」
シリウス号は南へと進路を進めていた。
昨晩部屋を出たナギは、リュウガの部屋に行き
ヒロインを船から降ろす事を告げた。
ナギの気持ちが痛いほど分かり、リュウガはナギの言う通り
ヒロインの姿が見えなくなってから、出航させた。
ナギ
「…はい…」
ナギはそれ以上何も言わずに、不寝番の当番の為
見張り台へと梯子を登り始めた。
ヒロインは今頃どうしているだろうか?
港に戻り、船がない事に怒っているだろうか…
ナギは真っ暗な海を見つめ、ヒロインの事を思い出していた。
ヒロインが自分の名前を呼ぶだけで、生きている意味を感じ
抱きしめるだけで、なんの為に生きているのかを感じた。
あの笑顔も時折見せる拗ねた顔も…
ナギははぁ…とタメ息をつき、満点の星空を見上げた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
アサヒ
「オイ!ヒロイン!!
降りろって! 危ないぞ!!」
アサヒに怒鳴られ、ヒロインはマストからヒラリと飛び降りた。
アサヒ
「お前慣れてるからって、女がそんな事するんじゃねぇ!!」
当たり前の様にマストに登り、双眼鏡でシリウス号を探すヒロインに
アサヒは驚いた。
ヒロインは紛れもなく海賊になってしまったのだ。
アサヒは港で途方に暮れたヒロインを自分の船に乗せ、
シリウス号を追っていた。
数人の乗組員を叩き起こし、父親にも内緒で船を動かしていた。
ヒロイン
「アサヒくん、おじさん怒らない?」
アサヒ
「あーめちゃくちゃ怒られるだろうな」
アサヒは意地悪くヒロインを見つめた。
ヒロイン
「そうだよね!? おじさん怒るとスゴク怖いのに…
どうしよう…」
申し訳なさそうに見上げる。
その表情は、アサヒの父親が大事にしている花瓶をヒロインと遊んでいた時に割ってしまい、
怒られると怯えていた表情とそっくりだった。
アサヒはどんなに強くきれいな女性になろうが
やはりヒロインだと、
変わっていない部分に笑みがこぼれた。
アサヒ
「ふふっお前が心配すんなって、それよりシリウス号は見つけたか?」
ヒロイン
「船は見えないけど、船が通った後の波が南の方からきてるの
こんな時間に船を動かすなんて、よっぽどじゃない限りないと思うの」
ヒロインの読みに感心するアサヒ。
すると、見張り台で双眼鏡を覗く乗組員が声を上げた。
乗り組員
「アサヒさん!! 見えました!
11時の方向です!
大分速度も落としてますので、あと5分で追い付けます!」
その声にヒロインは、11時の方向に目を凝らした。
アサヒはこれで最後になるのかと、横で真剣な表情をしているヒロインを見つめた。
・・・・・・・・・・・・・・
ナギ
「…?」
見張り台で感傷に浸っていたナギは、遠くから聞こえる船の音に耳を澄ませた。
こんな時間にこんな至近距離を通ろうとする船は、
大抵が敵船だ。
ナギは双眼鏡を覗き込むと、思わず落としそうになってしまった。
向かってくる船の舳先に、ヒロインが立っているではないか。
見間違いかと思い、もう一度覗くが
やはりヒロインだ。
ナギは慌てて見張り台から降り、もうすぐ横並びになる船を
甲板の手すりに身を押しつけ待ちかまえた。
・・・・・・・・・・・・・・
アサヒ
「…ホントに行くのか?」
アサヒは最後の悪足掻きと思いながら、もう一度ヒロインに問いかけた。
ヒロインはかわいく笑うと、アサヒに抱きついた。
ヒロイン
「ありがとうアサヒくん…
会えて良かった…」
アサヒはグッと奥歯を噛み締め、ヒロインへ悟られまいと優しい笑顔を向けた。
アサヒ
「ほら、横に並んだぞ!
今梯子渡すから…ってオイ!! 何して…!!!」
ヒロインは甲板の手すりを越えて、船の縁へと躍り出た。
向かいのシリウス号ではナギが大声で怒鳴ってる。
ナギ
「お前何する気だ!」
ヒロインは2人の声を無視して、履いていたスカートの裾に手をやると
ビリーッと膝上まで裂いた。
ナギ
「おい!ヒロイン!!!」
裂いたスカートを膝の上で軽く結ぶと、ヒロインは履いていた靴を脱ぎ捨てた。
アサヒ
「待てヒロイン!! 今乗り組員が梯子を!」
ヒロインは振り返るとニッコリ笑う。
ヒロイン
「アサヒくん、ありがとう!!
…お兄ちゃん!行ってきます!」
少し助走をつけると、ヒロインは一気にシリウス号へと駆けだした。