AKATSUKI
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船に戻り、部屋へと入るとベッドの縁に腰掛けて俯いているヒロインがいた。
ナギ
「…大丈夫か?」
疲れ切ったような表情で、ナギを出迎えたヒロイン。
ナギはそっとヒロインの隣へ腰を降ろした。
ヒロイン
「…アサヒくんから…何か聞いた?」
ヒロインはナギにギュッと抱きつきながら問いかけた。
ナギ
「…いや…」
ナギは自分を抱きしめるヒロインの左手に指輪がはめられている事に
顔をしかめた。
アサヒは本当にプロポーズをしたのだ。
ヒロインは迷っているのだろうか?
ナギはその事を聞きたくて、喉の所まで言葉が出かかっているが
どうしても聞く事が出来ない。
この期に及んで、ヒロインの幸せを考えるよりも
離れたくない、アサヒなんかに渡したくないという想いが溢れてくる。
ナギはギュッと目をつぶり、ヒロインを引き離すと
ベッドから立ち上がった。
ナギ
「…もう遅いから風呂入ってこい」
ヒロインは不安そうにナギを見つめる。
ナギはアサヒとの事を何も聞いてこない。
自分に興味がないのだろうか?
こんな事でナギとの仲が悪くなるのは嫌だと
話掛けようとナギを見上げると、
ナギは悲しい表情を浮かべていた。
ヒロイン
「ナギ…?」
そっとナギの手を握った。
するとナギは力強くヒロインを抱きしめ、唇を押しつけた。
今までにないくらい激しいキスに、ヒロインは息をするのを忘れてしまいそうになる。
こんなナギは初めてだ。
何かに怒っているのか?
自分への配慮がない一方的なキスに
ヒロインは抵抗し、ナギの胸を押し返した。
ヒロイン
「はぁ…ナギ? ど…したの?
なんか…ナギらしくない…」
ヒロインがナギを見つめると、ナギは傷ついたような目をしていた。
驚いたヒロインが声を掛けようとすると、
ナギは「悪かった」と言い、部屋を出て行ってしまった。
ヒロインは部屋に取り残され、冷たく締められたドアを見つめた。
そしてナギは部屋を出たその足で、リュウガの元へと向かった。
===============
次の日になり、昨晩部屋に戻って来なかったナギを探しにキッチンへ駆け込んだヒロイン。
ナギはいつもと変わらず、朝食の用意をしていた。
ナギ
「おはよ」
ヒロイン
「?!」
何もなかったかのように話しかけてくるナギ。
ヒロインは勢いよくキッチンに飛び込んでしまい、
この勢いをどうしたものかと戸惑っていた。
ナギ
「ふっ…どうした?」
それが分かったのかナギは少し微笑むと、ヒロインの傍に来てくれた。
ヒロイン
「あの! ナギ私ね?」
ヒロインはアサヒとの事をきちんと話そうと
昨晩ナギをずっと待っていた。
するとナギはスッと体の向きを変え、調理台に向かい
作業を始めた。
話を聞こうとしてくれないナギ。
ヒロインは負けずにナギの傍に行った。
ヒロイン
「ナギ! ちゃんと聞いて?
私、ナギに話したい事あるの!」
ナギは正直何も聞きたくなかった。
ヒロインの答えは分かっている。
あんないい男からの申し入れだ、断る女がどこにいるだろうか。
分かってはいるが、ヒロインの口から
その言葉だけは聞きたくない。
ナギ
「…悪い… 後にしてくれないか?」
ナギに壁を作られてしまい、ヒロインはそれ以上入り込む事ができない。
大切な話で、ナギに絶対に聞いて欲しい事なのに…
ヒロインは俯きながら部屋へと戻り、朝食も昼食も食べずに
アサヒと約束した時間まで誰とも会話をしなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・
夕暮れが近づき、アサヒとの約束の時間になった。
ヒロインはナギと一緒に甲板へ出ると
ナギはいつになくニッコリと笑いながら見送ってくれた。
ヒロイン
「すぐ戻ってくるからね?
そしたら話、ちゃんと聞いてね?」
必死にナギに訴える。
ナギは「分かった」と頷くと、くしゃっと頭を撫でてくれた。
ナギの行動に不信感を抱きながらも、ヒロインは船を降りた。
船が見えなくなるまで、何度も何度も振り返りながら…
約束の場所にはアサヒが既に待っていた。
ヒロインを見つけると、ニッコリと笑って大きく手を振ってきた。
その仕草にヒロインは子供の頃、いつもそうやって自分と弟を出迎えてくれたアサヒを思い出した。
アサヒ
「来てくれないかと思った」
アサヒの笑顔に胸が痛む。
ヒロインはこれから自分が出そうとしている答えに、罪悪感を感じていた。
あの頃の自分にとってアサヒはかけがえのない人だった。
だが、その人を今傷つけようとしている…。
アサヒ
「…あれ? なんだろなぁ…この感じ…
もしかしてオレ…振られちゃう??」
おどけた表情でヒロインを覗き込むアサヒ。
ヒロインに気にさせまいと明るく振舞ってくれている。
その優しさにヒロインは鼻の奥がツンとなる。
ヒロイン
「…アサヒくん… プロポーズ…嬉しかった。
私の誕生日も覚えてくれてて、子供の頃の私も忘れないでいてくれて…」
アサヒの表情が悲しみに染まっていく。
ヒロイン
「私…あの頃アサヒくんの事大好きだった。
アサヒくんのお嫁さんになりたいって何度も思ってたの…
…でも…でもね?」
ヒロインは目に涙を浮かべながら必死に伝えようとする。
ヒロイン
「私はアサヒくんのお嫁さんになれない。
ナギと生きて行くって決めたから…」
アサヒの顔を見ると、困った笑顔を浮かべて
ヒロインの頭を撫でた。
アサヒ
「…参ったな…お前を泣かすつもりじゃなかったんだ…
ナギさんと生きて行く事がどういう事か分かってるんだよな?」
ヒロイン
「!? アサヒくん知ってたの?」
アサヒ
「バーカ!オレだってそのくらい知ってる
だからこそお前にはオレを選んで欲しかった…」
アサヒを見上げるヒロインの目から、ボロボロと涙がこぼれた。
アサヒはそっと頬に手を掛けて、親指で涙をぬぐった。
アサヒ
「ふっ…やっぱりあの時、渡しておくべきだった
ガキの頃のオレやっちゃったなぁ…」
悔しそうに顔をしかめるアサヒを見て、ヒロインは笑ってしまった。
アサヒ
「…笑ったな?」
ヒロイン
「ふふっ、アサヒくん…ありがとう
アサヒくんは私にとっての、本当の朝日だったよ?」
アサヒはジッとヒロインを見つめた。
ヒロイン
「アサヒくんとバイバイした後、早く明日になって欲しくて
次の日になればアサヒくんの笑顔に会えて…
アサヒくんは小さい頃の私に次の日が来る楽しみを教えてくれた
朝日だったの」
潤んだ瞳で笑い掛けるヒロイン。
アサヒは堪らなくなり、顔を近づけ優しく唇を重ねた。
ヒロイン
「ん…アサヒくん!!」
ギュッとアサヒに抱きしめられ、ヒロインは何が起きたのかと
頭の中が真っ白になる。
アサヒ
「…これくらい許せよな…
チクショー…なんでオレじゃないんだよ…」
ヒロインはアサヒの胸に抱かれて、何度も何度も「ごめんね」と思った。
ナギと出会っていなかったら、きっとアサヒのプロポーズを受けていたに違いない。
でも出会ってしまったのだ。
海賊で懸賞首で…そんなナギが大好きになってしまったのだ。
アサヒ
「…まだあきらめるつもりはないからな?
それまで…いいお兄ちゃんしてやるよ…」
ヒロイン
「アサヒくん…」
胸から離されたヒロインは、アサヒを見つめた。
アサヒ
「お前がツライ時は、いつでも力になるからな?
だから…その指輪はお守りとして持ってろよ?」
アサヒに返そうと、握りしめていた指輪。
その手をアサヒの手が包み、ギュッと握りしめる。
ヒロイン
「…うん! アサヒくんに会えて本当によかった!」
ヒロインはニッコリと笑った。
アサヒはヒロインの気持ちが自分に向く事は二度とないだろうと
分かっってしまった。
ヒロインにはナギしかいないのだ。
それでもアサヒは、気の済むまで好きでいようと、
ヒロインに渡した指輪に誓った。
アサヒ
「…船まで送る。」
ヒロイン
「うん!」
こうして並んで歩くのは最後かもしれない…
アサヒは胸の奥がキュッと締めつけられる。
強引に奪ってしまいたい。
昨日ナギに宣戦布告をしたものの、ナギはきっとヒロインを引きとめたりはしなかっただろう。
色んな人を相手に商売をしているだけあって、アサヒの人を見る目は
普通の人よりも長けていた。
ナギは本当にヒロインを愛している。
ヒロインの幸せを一番に願っているに違いない。
あの数分の会話で、アサヒは見抜いていた。
そろそろ船が見える場所になっているのに、昨日停まっていた場所にシリウス号が見当たらない。
ヒロイン
「あれ…?」
ヒロインはキョロキョロと港を見渡すも、シリウス号の姿がない。
アサヒはその場で立ちすくんだ。
アサヒの思った通り、説得してアサヒの元へ来させるのではなく
ヒロインの幸せの為にナギは自分から消えたのだと悟った。
ヒロインはどうしてこんな事になったのかと、動揺している。
アサヒ
「…ヒロイン…大丈夫か?」
きっと泣き出すだろうと、小さい頃から泣き虫だったヒロインを思い出し
アサヒはそっと抱き寄せた。