AKATSUKI
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昨日と変わらず、人でごった返してる市場で
ヒロインはアサヒを待っていた。
夕暮れでオレンジ色に染まっている街。
ヒロインは幼い頃を思い出していた。
父が女の人を作って家を出て行ってから、母はヒロインと幼い弟を養う為、
昼夜問わず働きに出ていた。
その為学校から帰っても出迎えてくれる人はいなかった。
夕暮れ時になると、そういう寂しさを思い出す。
だが、そんな時はいつもアサヒが傍にいてくれた。
ヒロインの気の済むまで遊んでくれ、寂しい時は手を繋いでくれ
勉強も教えてくれた。
あの当時のヒロインにとっては、スーパーマンのような存在だった。
今考えると自分がどれだけ子供だったのかと、思い出しながらクスクスと笑ってしまった。
アサヒ
「お前…ひとりで笑ってて怖いぞ」
背後から声がして、ヒロインは振り返った。
ヒロイン
「アサヒくん!」
アサヒは振り返ったヒロインの姿に胸が鳴った。
子供のヒロインとは全く違う、こんなにキレイでかわいくて…
アサヒは思わず言葉をなくしてしまった。
ヒロイン
「アサヒくん?どうしたの?」
ヒョコっとアサヒの顔を覗く。
アサヒはニッコリ笑うとヒロインの手を取った。
アサヒ
「待ったか?」
ヒロイン
「えっ…うーうん」
歩き出すアサヒにヒロインはついていくが、手を繋いでる事に気まずさを覚えた。
ヒロイン
「アサヒくん! あの手…もう子供じゃないから…」
アサヒは自然にしてしまった事に自分でも驚いた。
アサヒ
「あぁ悪い…そうだよな…」
あれからもう何年も経っているというのに、やはり自分の中では
一日も忘れていない存在だったとアサヒは思い知った。
親の都合で引っ越さなければいけなくなり、ヒロインと離れる事に最後まで反抗した。
自分よりも年下で、年上の自分の事なんて兄としての感情しかないのは分かっている。
しかし毎日自分の顔を見る度に、周りに花が咲いているんじゃないかというような
満面の笑みで抱きついてくるヒロインがかわいくてしかたない。
ヒロインより年上のアサヒは、これが恋愛感情だと気付いていた。
引っ越してからも何度ヤマトに帰ろうと思ったか…
アサヒは離れたあの日に渡せなかった物を今日こそ渡そうと思っていた。
自分の横で嬉しそうに歩く大人のヒロイン。
幼い印象は消え、大人の女としての色気がしっかりと出ていた。
アサヒが想像していたよりも遥かにいい女になっている。
ナギとの関係がどこまでのものなのか、想像もしたくないが
きっと深い仲に違いない。
ナギの胸に抱かれたヒロインは、幼い頃アサヒがヒロインを抱きしめた時と同じような
安心しきった顔をしていた。
アサヒはチラッとヒロインを見ると、はぁ…とタメ息がこぼれた。
・・・・・・・・・・・・・
アサヒに連れられたレストランは、少し高級感のある場所だった。
ちゃんとドレスを着てきてよかったと、ホッと胸をなで下ろした。
アサヒ
「どうした? ほらここ座れよ」
ヒロイン
「あっうん」
アサヒは当たり前のように椅子を引き、しっかりとエスコートしてくれた。
大人になったアサヒは、背も高く容姿もなかなかの好青年だ。
きっと色んな女性と経験があるのだろうとヒロインは思った。
みんなに優しかったアサヒだ、大人になっても変わらない優しさに
なんだか笑いが込み上げてきた。
ヒロイン
「ふふっアサヒくん…やっぱり本物なんだね」
アサヒ
「ん?」
向かいの席に座りながら、アサヒはヒロインの笑顔につられて
一緒に笑う。
ヒロイン
「うーうん…クスクス、アサヒくんは大人になってもアサヒくんだね」
アサヒ
「?よく分かんないけど…ヒロインが笑ってるからいいか!
酒、飲めるだろ?」
メニューを広げながらアサヒは問いかけてきた。
ヒロイン
「うん…あれ?おじさんは?
先に飲んでていいの?」
アサヒ
「あぁ親父は仕事入っちゃって、来れないんだ…」
ヒロイン
「そうなの?!会いたかった!」
残念そうにションボリするヒロイン。
アサヒはふっと優しく笑い、ヒロインの頭にポンっと手を置いた。
アサヒ
「そんな顔すんな!
これから嫌でも毎日会えるようになる!」
ヒロイン
「え?」
目の前で、優しく微笑むアサヒを見つめ
ヒロインは、言葉の意味を考えていた。
アサヒ
「ほら、酒きたぞ!」
ヒロイン
「う、うん…」
グラスをカチンと合わせると、アサヒはグッと酒を飲み干した。
・・・・・・・・・・・
その頃シリウス号では、夕食を終えたナギが甲板に出て煙草を吸っていた。
滅多に吸うことはないのだが、落ち着かない気持ちを沈めようとしていた。
甲板の手すりに肘をつき、夜なのにいつまで経っても賑やかな
街の方をぼんやりと眺めていた。
ヒロインは今頃アサヒと何をしているのだろうか?
またあんな笑顔を見せてるのではないか…
考えれば考えるほど深みにはまる。
すると背後に人の気配を感じた。
ソウシ
「ふっ、なんかちょっと前に見たような光景だな」
振り返ると優しく笑いかけるソウシが立っていた。
ナギ
「…ドクター…」
ソウシ
「似た者同士だね。
ナギがソリアちゃんに会いにいった日も
同じようにヒロインちゃんがここに立ってたっけ…」
ナギの横にならび、ソウシも街の方角を見つめた。
ナギ
「ドクター…
オレは人に裏切られて人を信じる事はもうないと思ってた…」
ソウシは普段あまり自分の事を話さないナギが
やけに素直に話してきたので驚いた。
ナギ
「アイツと一緒になってから、怖いっていう感情が沸くんだ…」
手すりについた腕に顔を埋めるナギ。
ソウシはふっと笑い、ナギの頭を撫でた。
ソウシ
「ナギにもそう思える人が出来たんだね
それは大切なことだよ?
その人の事を考えて嫉妬したり、嬉しかったり…
ヒロインちゃんも、きっと同じ気持ちだよ」
ソウシの言葉がじんわり胸に染みた。
ナギは少し顔を上げて、手に持った煙草を口にくわえて
もう一度煌々と明るい街を見つめた。
ヒロインが一秒でも早く帰って来ないかと願いながら…