AKATSUKI
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ナギは珍しくヒロインと別行動をしていた。
ハヤテと一緒に酒の調達だ。
ハヤテ
「なんでオレが酒なんだよ~
重いのによぉ…トワの役目なのに…」
歩きながらずっと文句を言っているハヤテに、
ナギはちらりと視線をやると、抱えていた酒樽をドカッと地面に置いた。
ナギ
「ハヤテ、あそこで何か食うもん買ってこい!
そしたら船まで文句を言うな」
ハヤテ
「マジで!? やりぃ!ナギ兄の樽も持ってやる!!」
ハヤテは手持ちの酒を置くと、弾むように走っていった。
ナギははぁ…とタメ息をつき、酒樽の上に腰を降ろした。
ここは何度も来た事のある港だが、いつ来ても人でごった返している。
人混みが苦手なナギは、どうもこの雰囲気に慣れない。
ふと市場のテントが並ぶ通りに目をやった。
ヒロインもトワと買い物をしている頃だろう。
もしかしてバッタリするだろうか…
ナギは数時間前まで一緒にいたのに、もう気になっている自分に笑えてしまう。
こんなにも心配性で、女々しい気持ちが自分にもあったのだと、
ヒロインと付き合いだしてから、驚く事ばかりだった。
すると、ナギの気持ちが通じたのか
人混みの中から買い物袋を抱え
楽しそうにトワと話しているヒロインを見つけた。
こんな人混みでよく見つけられた物だと、
自分でも感心してしまう。
大声を出せば気付きそうな距離だが、恥ずかしい気もする…
ナギが戸惑っていると、ヒロインの背後に見慣れぬ男がついて歩いていた。
もちろんヒロインもトワも全く気付いていない。
ナギ
「チッ」
ナギは酒樽から立ち上がると、人混みをかき分けて
ヒロインの元へと向かった。
・・・・・・・・・・・・・・
ヒロイン
「トワくん、これで全部かな?」
トワ
「あっあと、お魚です!
…でも…この荷物じゃ持てないですね…
一回船に戻りましょうか?」
ヒロイン
「うん!」
ヒロインもトワも両手が塞がれ、これ以上持つことは難しかった。
2人は来た道を引き返そうと振り返った。
ヒロイン
「きゃっ!」
???
「うわっ!」
ヒロインは人の気配に気付かず、思いっきりぶつかってしまった。
トワ
「大丈夫ですか?ヒロインさん!!」
???
「ヒロイン?…やっぱり…」
男は小さな声で呟いた。
ヒロイン
「いたた…すいません!大丈夫ですか?」
道に座り込んでしまったヒロイン。
目の前に立っている男を見上げた。
夕焼けの逆光で影になり、顔を見る事ができない。
まぶしい顔つきで立ち上がろうとすると、グイッと腕を強い力で引き上げられた。
ヒロイン
「あれ!? ナギ?」
目の前の男にされたのかと驚いたが、引き上げてくれたその手は間違いなくナギだった。
ナギ
「大丈夫か?」
トワ
「ナギさん!近くにいたんですか?」
ナギ
「あぁ…」
ナギはヒロインの無事を確認すると、目の前の男を睨みつけた。
ナギ
「…あんた、何者だ?」
ヒロイン&トワ
「???」
ナギの問いにヒロインもトワも、何の事だとナギを見つめた。
ナギ
「なんでヒロインをつけてた?」
ナギはグッとヒロインを胸に引き寄せた。
ヒロインはナギの言葉に驚き、ナギの腕を掴むと
男を見つめた。
???
「…ふっ…お前も彼氏なんかできる歳になったんだな…」
男は柔らかく微笑んだ。
ヒロインはどこか懐かしい笑顔に、遠い昔の記憶が蘇ってきた。
ヒロイン
「え…もしかして、アサヒ…くん?」
ヒロインは掴んだナギの腕から手を離し、アサヒという男に体を向ける。
アサヒ
「ははっトロイのは変わってないな!
オレはすぐお前って分かったぞ!?」
ニカッと笑うアサヒ。
あぁこの笑顔、やっぱりそうだと
ヒロインは満面の笑みを浮かべた。
小さい頃近所に住んでいたアサヒは、ヒロインよりも年上で
小さい子供達の面倒をみて、よく遊んでくれたお兄さんだった。
今考えてみると、アサヒはナギと同い年くらいのはずだ。
ヒロイン
「うわぁ!何年ぶりだろう!!
アサヒくんどうしてこの町に?住んでるの??」
質問攻めのヒロインにアサヒは笑ってしまう。
アサヒ
「落ち着けって!
まぁまず、その不機嫌なお前の彼氏に自己紹介しなくちゃな?」
ナギは自分を忘れて嬉しそうに話すヒロインとアサヒを
どんな顔で見ていたのだろうと
大人気ない感情に、少し恥ずかしさを覚えた。
ヒロイン
「あっうん! ナギ、トワくん!
この人私の幼馴染みでアサヒくん。
ナギで、トワくんだよ?
えっと…一緒に…旅をしてる人!」
この状況で海賊になったとはとても言えずに、
ヒロインは咄嗟にウソをついた。
アサヒはナギを見つめると、ニッコリと笑った。
アサヒ
「どうも。 幼馴染みっても歳も少し離れてるし
オレ引っ越しちゃったから、そんなに一緒にはいなかったけどね」
愛想のいい笑いをするが、ナギはその何か秘めた笑いに不快感を覚える。
ヒロイン
「アサヒくん、ここへは?」
アサヒ
「あぁ、お前も知ってるだろ?
親父の仕事手伝ってるんだ。 色んなトコ飛び回ってるけど、
ここへは昨日着いたばっかだから、たぶんしばらくいるかな?」
ヒロイン
「えっ?おじさんもいるの??
会いたい~!! 確か…貿易のお仕事だよね?」
そういうとアサヒはヒロインの頭をくしゃっと撫でる。
アサヒ
「よく覚えてんじゃん!
そ、宝石とか貴金属とか…色んな事やってるよ」
ヒロインとアサヒとの間では、当たり前のやりとりなのかもしれないが、
ナギはあまりにも自然で、嫌がりもしないヒロインに腹が立った。
アサヒ
「おっと、ごめんな?
つい子供の頃のようにしちゃうな…
ホント、中身は変わんないけどキレイになったな」
ナギと同じくらいの身長のアサヒは、ヒロインの目線に背を合わせると
まじまじとヒロインを見つめた。
ヒロインはその距離にドキドキしてしまう。
なんて言ったって、このアサヒこそがヒロインの初恋の人だった。
歳も離れているし、子供過ぎて全く相手にされていなかったヒロインは、
告白する勇気もなく、アサヒが引っ越して行ってしまった。
ナギはそんなヒロインの表情を見て、チッと舌打ちをした。
トワ
「あっあの!そろそろ行かないと、市場しまっちゃうので…」
トワがその空気を察したように、切り込んだ。
ヒロイン
「そ、そうだった!」
アサヒ
「そっか…お前はまだここにいるのか?」
ヒロイン
「うん、多分2、3日…」
アサヒ
「じゃ、明日親父と一緒に夕飯でも食うか?
…いいかな?ナギ…さん?」
意味深な言葉尻にナギは、イラッとする。
紳士的な態度をしているが、ナギを挑発しているようにも思える。
ナギ
「…好きにしろ…」
アサヒ
「ありがとう…
じゃあ明日この時間に、この場所にいろよ?
迎えにくるから…」
ポンッとヒロインの頭に手を置くと、アサヒは爽やかな笑顔で人混みに混じっていった。