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キッチンに着くと、ナギの凍るような冷たい言葉から始まった。
ナギ
「…チョコがねぇ…」
ヒロインの為に刻んでおいたチョコがまな板から消えていた。
ナギの視線が、ハヤテとトワを捕える。
ナギ
「…お前ら…刻んでやろうか?」
ビクッと肩が上がるハヤテとトワ。
言い訳なんて通用しない、甲板の暗闇では気付かなかったが
なにしろ2人の口の周りにチョコがついている。
ハヤテ
「ナギ兄!」
トワ
「ナギさん!」
怯える2人を見て、ヒロインは笑ってしまった。
ヒロイン
「ふっクスクス… ナギ、チョコまだあるし
私やるから! ふふっ」
トワ
「ぼ、僕チョコ刻みます!!」
ハヤテ
「オレも! えっと…ミルク温める!!」
ワタワタと動くハヤテとトワを見て、ナギの戦意は静まったようだ。
ナギ
「…じゃ…頼んだぞ…」
ナギがキッチンを出たのを確認すると、ハヤテとトワはホッと胸をなで下ろした。
ハヤテ
「ふぅ…ナギ兄、優しくなったよな?」
トワ
「本当ですね」
ソウシ
「ふふふ、ヒロインちゃんのお陰だね?」
ヒロイン
「え?」
マグカップを用意しているヒロインは、振り返った。
トワ
「今日のシンさんの大笑いも驚きましたけど、ナギさんがあんな顔で笑うなんて知らなかったです…」
ハヤテ
「オレもオレも!」
ソウシ
「ヒロインちゃんが来てから、船の中が明るくなったよね」
食堂の椅子に座っているソウシが、カウンター越しにニッコリ笑う。
その視線に、なんだか照れてしまうヒロイン。
ヒロイン
「そ、そんなっ…」
トワ
「僕もそう思います!!
僕、優しくてヒロインさんの事大好きです♡」
チョコを刻み終わったトワが笑顔で言った。
ヒロイン
「トワくんっ!」
ソウシ
「おや? 私も負けずに好きだな
かわいくて…ふふ」
ソウシはふんわりと笑い掛ける。
ハヤテ
「オ、オレだって別に嫌いじゃねぇし!
むしろどっちかっつーと…」
ハヤテの言葉が言い終わらないうちに、キッチンのドアが勢いよく開いた。
ヒロイン
「ナギ!?」
ナギの登場に驚くハヤテとトワ。
不機嫌この上ない表情に、戸惑ってしまう。
ナギ
「…告白大会か?」
ヒロイン
「ち、違うよ!!
それよりナギ、お風呂行ったんじゃ…」
そういうとナギは、黙って冷蔵庫の戸を開け
中から生クリームを出した。
ナギ
「コレ入れると、風味が良くなる…」
ヒロインに手渡すと、ナギは不機嫌のまま食堂に回り
ドカッと椅子に座ると、頬杖をつき目を閉じた。
目の前でブスッとしているナギを見て、ソウシは笑みがこぼれた。
ソウシ
「ふふふ、そんなに心配?
ナギは本当にかわいいね?」
ソウシが笑いながらナギの頭を撫でる。
ナギ
「ドクター…すりおろされたいのか?」
ソウシ
「ははっ、そーんな赤い顔されても全然怖くないよ?
ヒロインちゃんの事好きなんだね」
ソウシのツッコミに、ナギは不覚にも反応してしまい
顔が赤くなってしまった。
確かにこれ以上ヒロインにちょっかいを出さないように
こうして見張っているのは事実だ。
ナギは大人気ない自分に、うんざりしてしまう。
カウンターの向こうにいるナギとソウシの話が全く聞こえず、
ヒロインは何を話しているのか気になっていた。
生クリームの事をわざわざ教えに来てくれるなんて、
やっぱりナギは優しいと感激していた。
ハヤテ
「オイ!ミルク沸いたぞ!」
ヒロイン
「あっはい! じゃあチョコ溶かします」
キッチンにふんわりと甘い匂いが広がる。
それだけで幸せな気持ちで満たされる。
トワ
「うわぁおいしそう!!!」
チョコが溶け、ようやくココアが完成すると
ヒロインはカップに注いだココアを食堂にいるソウシに渡した。
ヒロイン
「ソウシさん、お待たせです!」
ソウシ
「ありがとう、じゃ部屋でいただくね?
あと、今日は頭打ってるんだから激しい運動はダメだよ?
オヤスミ」
ソウシはウィンクをして、ナギとヒロインに微笑むと食堂を出て行った。
ナギ
「チッ」
ヒロイン
「?」
何の事を言っているのか分からず、キョトンとしているヒロイン。
ナギはヒロインの手を掴むと、少し強引に引っ張った。
ナギ
「俺たちももう部屋行くぞ!」
ヒロイン
「あっちょっと待っ…! 片付け!」
ナギ
「ハヤテ、トワお前ら片付けやっとけ!」
ハヤテ
「は!? なんでだよ!!」
ナギ
「…チョコ食ったの誰だよ…」
ハヤテ
「う…わ、分かったよ!」
ナギの鋭い視線に、ハヤテはそれ以上言い返す事が出来なかった。
ヒロインは慌ててカップに手を伸ばし、なんとか掴むと
ハヤテとトワに挨拶をして
強引に手を引くナギについていった。
ヒロイン
「わっ!ナギ!! ココアこぼれちゃう!」
ナギはヒロインの言葉を一切聞き入れず、部屋に押し込むと
その足で風呂へと行ってしまった。
ナギの不機嫌な態度に、ヒロインははぁ…とタメ息をつき
窓の側の椅子に腰かけた。
体が冷えているので、ココアを一口飲むと
温かさがじんわりと体に染みわたっていく。
膝を抱えて、窓の外を見上げていた。
しばらくすると、風呂上がりのナギが帰ってきた。
グレーのスウェットのパンツと白いTシャツ姿で
タオルで頭をガシガシと拭いている。
ヒロイン
「おかえりナギ!」
ナギのその姿にうっとりしてしまう。
ヒロインは、抱きしめて欲しい衝動に駆られる。
ナギ
「…なんだ?」
髪を拭きながら、ヒロインへと視線を向ける。
ヒロイン
「う、うーうん…
じゃ、私お風呂入ってくるね?」
椅子を立ってナギの横を通り過ぎようとすると、
グッと手首を掴まれた。
胸がドキッと高鳴る。
ナギ
「…そんな顔して、外に出るな」
ヒロイン
「えっ?」
そのままナギの胸に抱かれる。
風呂上がりのナギの体からは、ふんわりと石鹸の香りがする。
その香りと、ナギに抱きしめられてる安心感で
ヒロインは心地よさのあまり、眠りに落ちそうになる。
ヒロイン
「ナギ…気持ちい…」
ナギ
「ふっ、寝るなよ?」
ヒロイン
「ナギ…怒ってないの?」
トロンとした目で見つめられ、ナギは思わず唇を塞いだ。
ヒロイン
「んっ!!」
そっと唇が離れると、ナギは優しく微笑んだ。
ナギ
「…ふはっココアの味…」
そう言われヒロインは顔が赤くなる。
ナギはヒロインの頬に手を添えると、
静かに話し始めた。
ナギ
「…別に怒ってたんじゃねぇ…
ただ…他のヤツと…その…」
ナギが言いにくそうに口ごもる。
ヒロインは、そのナギの顔を見て笑ってしまった。
ヒロイン
「ふふっナギってかわいいね
ヤキモチ嬉しいよ?」
そう言ってギュッと抱きつくと、ナギはそのまま後ろのベッドに
優しく押し倒した。
ナギ
「お前こそ…そんなかわいい顔して…
誘ってんのか?」
ヒロイン
「えぇ!?」
ナギ
「…寒いなんて言わせねぇくらい
汗かかせてやろうか?」
ヒロイン
「?」
目の前にあるナギの顔が真剣だが、
ヒロインはなんの事か分からずに『?』マークが顔に浮かんでいる。
ナギ
「お前…分かってないだろ…?
ドクターに激しい運動するなって言われたしな…」
そういうとペシッとヒロインにデコピンをするナギ。
ヒロイン
「痛ぁい」
ナギ
「…ヒロイン、コブ治ったら覚悟しとけよ?」
ナギの柔らかい唇がそっとオデコに触れる。
とびきりの笑顔に、とろけてしまいそうに体が熱くなるヒロイン。
さっき飲んだココアのせいなのか、ナギのせいなのかは分からない。
ヒロインはナギを見つめ返した。
ナギ
「…お前…」
ナギはゴクリと喉を鳴らした。
なんてやらしい顔で自分を見ているのかと、ナギの我慢は限界に達した。
ナギ
「…やっぱ風呂上がったら…覚悟しとけ…」
ソウシに言い聞かされたナギの自制心は、簡単に決壊してしまった。
☆END☆ おまけ&あとがき⇒