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部屋を出ると、ドアの横の壁に寄り掛かって
シンが立っていた。
シン
「…寝たのか?」
ナギ
「あぁ …さっきは悪かったな」
シン
「ったく、お前の女はトラブルメーカーだな?」
ナギ
「…………」
シンの挑発的な言葉を受けても、今日はとても返す気になれない。
シンがいなかったらヒロインがどうなっていたか分からない。
ナギはヒロインの顔と首の傷を思い出し、目線をシンから逸らすと
暗い顔でキッチンに向かって歩き始めた。
シン
「オイ! お前ちゃんとヒロインを守れよ?」
その言葉に、さすがにナギもカチンと来た。
不機嫌に振り返る。
ナギ
「あ? 言われなくても…」
シン
「もしできないなら、いつでもオレが変わってやるから… ふっ…」
シンは勝気な笑みを浮かべると、ナギを追い越し
廊下を足早に歩いていった。
ナギはその背中を見つめた。
(クソッ!)
シンの言った事が正論過ぎて、ナギは言い返せなかった。
守ると言っておきながら、結果ヒロインに怖い思いや、怪我をさせてしまった。
ナギはタメ息をつきながらキッチンのドアを開けた。
トワ
「あっ!ナギさん!!
ヒロインさん、大丈夫ですか?」
食堂側のカウンター越しに、心配そうな顔つきでトワが身を乗り出し聞いてくる。
ナギ
「あぁ、今 寝てる」
トワ
「そうですか…
僕なんだか心配なので、見に行ってきます!」
トワが走りだそうとするのを制御しようと
「大丈夫だ」と言おうとした瞬間、
ソウシ
「クスクス、トワ?
女の子の部屋に行くのは
こういう時遠慮しなきゃダメだよ?」
食堂のテーブルでハーブの葉を入いれる瓶を磨いていたソウシは、
トワを宥めるような優しい声で言った。
トワ
「ソウシ先生!!
ぼ、僕はそんなつもりは!!!」
ソウシ
「ふふふ」
皆心配してくれるのは嬉しいが、どこまでの心配なのか…
ナギは内心、仲間として以上に気にしているメンバーに
やきもきしていた。
リュウガ
「おい!ナギ!! ヒロインはどうだ?!」
ナギ
「…はぁ…」
ナギはまた面倒な事になりそうで、リュウガの顔を見た途端
無意識にタメ息がこぼれてしまった。
ナギ
「船長、大丈夫です!
オレがちゃんと見ますし、守りますから!」
リュウガ
「んぅ? そ、そうか?
なんか機嫌悪ぃな…」
(まったく…ヒロインとなると、どいつもこいつも…)
この後きっとハヤテも飛び込んでくるだろうと、
ナギはさらに大きなタメ息をついて、仕込みを始めた。
=================
数日後…
シン
「オイヒロイン!
航海室前のデッキの掃除を手伝え」
食堂で、野菜の皮むきをしていたヒロイン。
ヒロイン
「あっはい!
…ナギ、行ってくるね?」
ナギ
「あぁ」
キッチンにいるナギに一声かけて、シンと一緒にデッキへと向かった。
あの一件以来、ナギはとても心配性になり
どこに行くにもしっかり伝えて行かないといけない。
忘れようものなら、怒られてしまう。
ヒロインは、そんなにもナギに心配を掛けてしまい
また負担を掛けている事に、とても申し訳なくなる。
ヒロイン
「…はぁ…」
無意識にタメ息がこぼれた。
シン
「チッ! さっきから耳触りだな」
ヒロイン
「すいません…」
デッキに着き、手すりの下を拭き掃除しているヒロイン。
ナギの事を考えていて、あまり身の入らない掃除をしていた。
シンは同じデッキで、腕を組みながら
海の様子を見ていた。
(立ってるなら、一緒に掃除してくれてもいいのに…)
じっとシンを見つめて、またタメ息をついてしまう。
シン
「なんだ?」
ヒロイン
「…いえ…」
そういえばシンとはあの日以来、あの一件の事を話していない。
ちゃんとお礼も言ってない気がする。
シン
「ナギに何か言われたのか?」
ヒロインはパッと顔を上げて、シンを見つめた。
シン
「ふっ当たりか?」
ヒロイン
「ち、違います!!」
シン
「おい」
ヒロイン
「もうタメ息つきませんから」
シン
「おい!!」
ゴン☆
ヒロイン
「いっっったぁ~~!!!」
シンに言い返そうと立ち上がった瞬間、
デッキの手すりに思いっきり頭をぶつけてしまったヒロイン。
後頭部をさすりながら、痛さのあまりジワッと涙が浮かぶ。
シン
「…………くっ…ふ…ははは!!!」
シンは自分の前でしゃがみ込んでいるヒロインを見て、大笑いした。
デッキ下の甲板にいたハヤテとトワにも
その声が届き、2人はデッキを見上げながら
作業の手を止めた。
トワ
「シ…シンさんが…笑ってる…」
ハヤテ
「…うそだろ…」
オナカを抱えて笑っているシンを見て、2人は目を丸くしていた。
あんなシンは見た事がない。
ただでさえ人前で笑う事の少ないシンが、あんなに大きな声で笑っているとは…
ヒロイン
「ひ、ひどいです~!! 教えてくださいよぉ~ うぅ…」
シン
「クククッ、見事にぶつけたな?
言っとくがオレは声を掛けたぞ?」
笑いが納まらず、小さく笑い続けるシン。
ヒロイン
「そんなに笑わないでくださいよぉ~!
もぉ…痛ぁ~」
スリスリと頭を撫でていると、シンはそっと撫でているヒロインの手に自分の手を乗せた。
シン
「大…丈夫か?…ククッ」
その近い距離に、ヒロインはドキリと胸が鳴る。
思わず顔が赤くなってしまう。
シン
「お前はトラブルメーカーの上に、ドジだな?」
ヒロイン
「!!?」
ヒロインはその言葉に、ムッとした。
ヒロイン
「ひどいです!!トラブルメーカーって…
この傷だって好きで…!!!」
シンが一番知っているはずなのに、なんだか悔しくて
この場にいるのがとても気まずくなった。
ヒロイン
「も…デッキ掃除…いいですよね?
私、頭冷やしてきます…」
ヒロインはシンの顔を見ずに、バタバタと走り
デッキを後にした。
航海室を抜けて、廊下に出るとソウシがいた。
ソウシ
「ヒロインちゃん、大丈夫?」
甲板でハヤテやトワと一緒に、ヒロインが手すりに頭をぶつける鈍い音と、
シンの笑い声を聞いていたソウシは、
様子を見にデッキへと向かっている途中だった。
ヒロイン
「ソウシさん、なんかコブになっている気がします…」
ソウシ
「どれどれ…
あっ本当だね、ナギに氷もらって冷やしておいで?」
ヒロイン
「はい!」
ソウシはヒロインを見送ると、その足でシンのいるデッキへと出た。
シンは手すりに手をかけ、海を眺めていた。
ソウシ
「シンまでヒロインちゃんに心を動かされるなんてね」
その声にシンはピクッと肩を揺らした。
そっと後ろを振り向くと、腕を組みながら微笑んでいるソウシが立っていた。
シン
「…フン、からかってるだけだ…」
ソウシ
「ふふふ、本当かなぁ」
シン
「………」
シンはあからさまに不機嫌な表情を浮かべ、航海室の中へと入って行った。