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シン&ヒロイン
「「はぁ…はぁ…」」
なんとか命は落とさなかったものの、
息が上がり過ぎて、話す事も出来ない
びしょ濡れのシンとヒロイン。
船内の廊下で、呼吸を整えていた。
シン
「はぁ…早く…はぁ着替えろ…
風邪ひくぞ…」
シンにコツンと頭を小突かれる。
ヒロイン
「はぁ…はぁ…シ、シンさん…はぁ…
着替えて…きま…す…」
ヨロヨロと壁に手をつき、部屋へと向かうヒロイン。
なんでこんな事になったのかと、シンはその姿を見送りながら、
大人気ない自分に苛立った。
シン
「はぁ…クソッ…」
全力で走ったのはいつ振りだろう、意外にもヒロインの逃げ足が速く
ついムキになって追い掛けてしまった。
シンは航海室を目指し、階段を登った。
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しばらくしてヒロインは、二日間留守にしていた船内の掃除に取り掛かった。
まずはキッチンから始める事にし、調理台や棚を拭いていた。
思いの外ホコリが溜まっており、鍋や食器をどかせて拭き上げるのに
かなりの時間がかかってしまった。
ヒロイン
「ふぅ…こんなもんでいいかな」
シンクでタオルをすすいでいると、ガタン という音が遠くで聞こえた。
港へ打ち寄せる波の音かと思い、ヒロインは気にせず作業を続けた。
しかし、また数分して更に大きくガタガタッと音がした。
音の感じからすると、船の下の方から聞こえてくる。
ヒロインは廊下に出て、倉庫を目指した。
きっと誰か帰ってきたのだろうと思い、
薄暗い倉庫の入り口で声を掛けた。
ヒロイン
「…トワくん?」
そっと倉庫に足を踏み入れるが、人の気配も音もしない。
キョロッと辺りを見回し、気のせいかと
ヒロインは、倉庫の入り口へ引き返した。
ヒロイン
「んぐっ!」
その瞬間、ヒロインは後ろから口を塞がれた。
急な事に頭の中がパニックになる。
男
「騒ぐな! 殺されたくなかったら大人しくしろ!!」
聞いた事のない男の声だ。
首元にヒヤリと金属の感触が走る。
ヒロインは恐怖のあまり、なにも考えられない。
自分の首に当てられているナイフ、塞がれている口。
体がガクガクと震えだす。
男
「オレの顔を見たか?」
その問いに、ふるふると首を振ると
男は安心したのか、ナイフが少し首から離れ
口を塞いでいた手も緩んだ。
ヒロインはその隙に、精一杯の力を振り絞って
男の鳩尾に思いっきり肘を打ち付けた。
男
「うぉ!!」
男が痛さのあまり身を沈めると同時に、首元にあったナイフが
シュッとヒロインの頬をかすめた。
ヒロインはなりふり構わず倉庫の入り口を目指し走った。
足が震えてしまい、上手く走る事が出来ない。
なんとか船室のある廊下まで出ると
倉庫から男の叫び声が聞こえる。
男
「待てこらぁ~!!!」
ドスドスという重い足音が、倉庫から近づいてくる。
腰が抜けてしまいそうに、しっかり立つ事ができない。
ヒロインは必死で階段をさらに上がり、シンのいる航海室を目指した。
ドンドンドンドン
ヒロイン
「シンさん!シンさん!!」
手が痛くなるくらい何度も何度もドアを叩いた。
きっと数秒してからドアが開いただろうが、ヒロインにはとても長く感じた。
シン
「何だ? うるさ… …!!?」
シンの顔がドアから覗いた瞬間、ヒロインはシンの胸に抱きついた。
驚くシン。
シン
「どうした?」
そう問いかけたと同時に、下の階から男の叫ぶ声が船内に響く。
男
「どこ行きやがったぁ~!!」
シン
「…チッ、どこのネズミだ…
ヒロイン、ここにいろ」
部屋を出ようと体を動かそうとしても
ヒロインがしっかりと抱きつき
一生懸命に首を振る。
シン
「…ヒロイン、大丈夫だ
すぐ戻ってくるから、オレが出たら鍵をかけろ
いいな?」
ヒロインの返事を待たずに、胸から引き離すと
シンは銃を手に、男の元へと向かった。
男は廊下の真ん中で、腹を抱えキョロキョロと辺りを探っている。
シンは階段の影に隠れ、男が近づくのを待った。
カチャリ
シン
「オイお前、死にたくなかったら
今すぐ船から降りろ」
目の前に銃を向けられ、どうする事も出来ない男。
男
「ひっ!男もいたのかっ!!」
男はわき目も振らず、船を出て行った。
シン
「フン、情けないやつめ…」
銃をしまい男の後を追うと、甲板から外の様子を見た。
他の仲間の気配もなく、単独で忍び込んできた輩だと分かった。
シンはふぅと息をつくと、航海室へと戻った。
さっきのヒロインの怯え方は尋常ではなかった。
そんなに怖い思いをしたのか?
シンは顔をしかめて、航海室のドアをノックした。
コンコン
シン
「オレだ…」
少し間があってから、カチャっとドアが開き、
ヒロインが俯きながら立っていた。
シンは部屋へ入ると、腕組みをしながらヒロインと向き合った。
シン
「大丈夫か? 何された?」
シンの問いに、震えた声で返事が返ってくる。
ヒロイン
「………だい…じょうぶ…です…」
シン
「? 何がだ? 質問に答えろ」
ヒロイン
「…………」
ずっと下を向いたままのヒロイン。
シンは不審に思い、グッとアゴに手を掛け上を向かせた。
ヒロイン
「あっ…」
シンはヒロインの顔を見て目を見開いた。
右の頬には10cm程の切り傷があり、首にも細い線の様な傷がついていた。
血が薄っすらと滲んでいる。
シン
「…お前…」
シンは今にも泣きだしそうなヒロインの顔を見つめた。
ヒロイン
「あっ…す、すいませ…
こんなんじゃ海賊失格です…ね…」
その言葉が言い終わらない内に、シンはヒロインをギュッと抱きしめた。
ヒロイン
「シ、シンさん!?」
シン
「バカが…怖い時は甘えろ!
なんですぐにオレに声を掛けなかった?」
ヒロイン
「だ、誰か帰ってきたと思って
倉庫に様子を見にいっちゃったんです…」
そう言うと頭の上から「はぁ…」というタメ息が聞こえた。
シン
「お前…とんでもないバカだな…」
ヒロインはその言葉に、何も言い返せなかった。
確かに自分の行動は、警戒心もなく軽はずみだった。
でもあんな恐怖は今まで味わった事がなかった。
思い出すと今でも体が震えてしまう。
その震えが伝わったのか、シンはスッと頬に手を当てて、優しい目でヒロインを見つめる。
シン
「怖いか?」
ヒロインは、ハッとし
自分はナギでもない、他ならぬシンの胸の中で何をしているんだと
慌てて平静を取り戻そうとした。
ヒロイン
「へ、平気です! すいません
あの…掃除…続きしないと…」
腕を抜けようと、グッとシンの胸を押し返すヒロイン。
しかしシンは抱きしめた手を緩めない。
シン
「お前は…こんなに震えて何言って…」
シンの言葉と同時に明るい声が部屋に飛び込んできた。
ハヤテ
「たっだいまぁ~!!
シンお前の言ってた酒… ってお前ら何してんの…?」