M気質のシンデレラ



驚く姉や継母達をそのままに、オレはまた馬車に揺られてお城へと連行された。
ボロい服は捨てられてしまい、煌びやかではないが豪華なドレスに着替えさせられる。あの因縁のガラスの靴をまた履かされ、王子は嫌がるオレを王様とお妃様の前に連れて行って紹介した。

そんなんで、めまぐるしく変わる周囲にオレが目を回しているうちに。
いつの間にか、オレは王子と婚約してしまっていた。


いろんなことを我慢してきたし、たくさんの嫌なことも乗り越えてきた。たいていのことには慣れてしまって、辛いことを辛いと認識しなくなっていた。

でも、今は辛いことなんてない。まわりはみんな優しくしてくれるし、家事に追われることも嫌がらせを受けることもなくなった。

幸せなはずなんだけど。
なぜかそれに落ち着かない気分になるのは、オレが不幸に慣れすぎているせいなのか。それとも不幸なほうが落ち着くんだろうか。

なので、夜オレがいる部屋に王子がやってきて理不尽なワガママを言ったり子供みたいな意地悪をされるのがなんとなく楽しみになってしまった。
認めたくないけど、オレってもしかしてどっちかっていうとMなのかも。



世間では一夜にして王妃になったオレを幸運の女神みたいに言い、こういうラッキーな目にあった人をシンデレラと呼ぶようになったとか。


めでたしめでたし。

………なのかなぁ。








END.

6/6ページ
スキ