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結婚するって本当ですか





その1 プロポーズ


アルフォンスがみんなにもみくちゃにされている。
口々に祝いを言い頭を撫でる軍人達に囲まれて照れ臭そうに笑う弟を、少し離れたところでエドワードは笑顔で見守っていた。
おめでとうと微笑むホークアイやファルマンに涙ぐむ弟を見て一緒に胸が熱くなる。やったな、と背中を小突くブレダや頭をぐりぐり撫でるハボックに弟と一緒に笑い、泣き笑いするフュリーの背中をぽんぽん叩くアルフォンスを見つめ。

エドワードは幸せだった。弟が生身の体を取り戻したことを、みんながこんなに喜んでくれる。
軍属でいることを後悔したことはなかったが、こんなにいい仲間に恵まれたのは幸運だった。迷っていたけど、資格は返上しないでやっぱりこのまま軍に残ろうか。

そんなことをぼんやり考えていたエドワードの背後から、ぽんと肩に手を置く者がいた。

「おめでとう、鋼の」

振り向かなくてもわかる。いつも胡散臭い笑顔で妙な冗談ばかり言ってからかってくるエドワードの上司だ。
ああ、こいつもいたんだっけ。
途端に幸せ気分が吹っ飛んで、エドワードは不機嫌な顔を隠しもせずに振り向いた。
ロイは相変わらず微笑んで、エドワードの右手に注目していた。
「きみの手足も戻ったんだろう?」
「……まーね」
鎧から華奢な少年に変貌したアルフォンスのほうが目立つため、みんなはエドワードのことは忘れていた。無理もない。服を脱がなければどこといって変わったようには見えないのだ。エドワード自身も弟の錬成がメインで自分はおまけのついでだったため、特に気にしなかった。
それを、まず最初に言ったのがコイツだなんてムカつく。

「それよかアル見てくれよ。やっとリハビリ終わったんだぜ。なんとか普通の生活ができるように……」

エドワードは言葉を続けられなかった。ロイの目はいつになく優しく暖かくて、その視線はエドワードだけに向けられている。
「うん、頑張ったな。よくやったぞ、鋼の」
そんな目は狡い。なにも言えなくなるじゃないか。
「………アリガト」
頬を染めて目を逸らすエドワードにロイはにっこり笑ってみせて、エドワードの肩に置いた手をそのままに顔をあげてアルフォンスを見た。
「おめでとう、アルフォンス」
「あっ、ありがとうございます!」
ロイと兄を見守っていたアルフォンスは、声をかけられて慌ててぺこりと頭を下げた。
「大佐のおかげです!色々本当にお世話になって…」
「そんなことはない。きみたちの努力が実ったんだよ」
にこにこと優しく言うロイに、アルフォンスも笑顔になった。なんとなく黙ってしまっていたまわりの軍人達は、お祝いパーティはどこでしようかとかまた声高に話し始める。それを笑顔で聞きながら、ロイは傍にいるエドワードを見下ろした。

「お祝いパーティもいいがね、鋼の。私達の式はいつにするかな」

「………………はぁ?」

俯いていたエドワードは、ゆっくり顔をあげて隣に立つ上司を見上げた。幸せ顔で自分を見下ろすロイを見つめて、えーとと考える。

なんだ今のは。こいつは今なんて言った?
式?なんの?なにかあったっけ?私達、てことは自分にも関係があるのか?なんか忘れてたのか?なにを?

考えてもわからないので、エドワードは仕方なく恐る恐る口を開いた。
「あの、式って……?」
「ははは、決まってるだろ」
ロイはあくまで笑顔だ。その顔がなんだか怖い。エドワードは本能的に逃げたくなったが、肩に置かれた手がそれを許してくれなかった。

「結婚式だよ、私達の。いつか元に戻ったら結婚しようと言っただろう?」



一瞬にして静まり返る司令部で、そうだった!と大きく頷くアルフォンスの声がこだました。
「そうだよ、いつか約束してたじゃない!兄さん忘れたの?」
「なに、それどういうこと?」
金縛りが解けたホークアイがアルフォンスに向き直る。それへアルフォンスが説明する声を聞きながら、エドワードは意識を半分なくしかけていた。





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