幸せになろう





会場の外へ出て、来賓たちをお見送りする。並んで笑顔を浮かべた私たちに、皆が口々に祝いを言って帰っていった。引き出物の紙袋が重そうだ。そりゃそうだ、皿やグラスなど思いつく限りのものに私と鋼のの名前や今日の日付を入れた記念品がいやというほど入っているのだから。よろよろと歩くご老体を見てちょっと申し訳ない気持ちになったが、後悔はしていない。私の幸せの重さを自宅に着くまで実感していただこう。

「おめでとう」
声に振り向くと、私がさっき頭を燃やしたおっさんだった。確かどこかの司令部の将軍だったような。私は急いで礼を言い、頭にキャンドルサービスした非礼を詫びた。
「いや、いいよ」
「ですが、髪が…」
「大丈夫。まだ替えがあるから」
ああ、ヅラなのか。私はほっとして、焼け焦げた頭の将軍を見送った。

「おめでとうございます」
微笑んだ副官が私たちに頭を下げた。うちの他の連中は皆酔っぱらっている。ハボックが鋼のの肩に手をまわして記念写真を撮ろうとしていたので、黙って副官に手を差し出した。副官は黙ってスリッパを渡してくれた。シャッターに合わせて奴の頭をぶっ叩く。うむ、素晴らしい写真になった。出来たら焼き増ししてもらわなくては。

「おめでとうございます。兄さんをよろしくお願いします」
アルフォンスが頭を下げた。
「大事にするよ。ありがとう」
そう答えたら、アルフォンスが涙の滲んだ目で笑った。披露宴が無事に終わって、ようやく感動する余裕ができたらしい。ウィンリィも泣きながら鋼のに幸せにねとか言っている。ホーエンハイムさんは柱の陰から恨みがましい目で私をじっと見つめていた。







「あー、楽しかった!」
車に揺られながら、鋼のは満足そうに言った。
「それはよかった」
私は車を運転しながら微笑んだ。
やっと二人きりだ。運転手は断って、自分の車で式場を出た。助手席の鋼のはいつもの姿に戻っているが、それも可愛い。結局私はこの子がなにをしようがどんな格好をしてようが可愛いのだ。
「なぁ、これからどこに行くの?」
「まずは今夜泊まるホテルに行く。明日から3日間、旅行だ」
「新婚旅行ってやつ?」
なんとなく恥ずかしそうに鋼のが言う。そんな顔と声はやめてくれ。ホテルまで我慢できなくなるじゃないか。
「行き先、どこ?」
「さぁどこかな。知りたいか?」
聞くと鋼のは首を振った。

「どこでもいいや。たいさと一緒なら、どこでもきっと楽しいよ」

私は急ブレーキで停車して、悲鳴をあげてフロントガラスにキスしそうになった鋼のを抱きしめた。

愛してる。

これから一生、めいっぱい愛し続けるから。

二人で、誰よりも幸せになろう。









END,
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