きみと、二年越しのキスを






会社に戻ると、他の車はまだ戻っていなかった。白く染まった砂利を踏んで、ロイは駐車場の隅に車を停めた。
すかさずカーテンを引き始めるロイに、エドワードはまたため息をつく。こういう状態のロイがすることといえば、ひとつだけだった。
すぐに手が伸びてきて、顎を掬われる。逆らわずに目を閉じるとキスが降ってきて、それからくすりと笑う音。
「ずいぶん素直じゃないか」
「考え事してたから」
「なにを?」
言いながらもロイの手は休まない。ベッドに移動させられ、シャツを放り投げられる。素肌に触れる手のひらの感触に身を竦ませて、エドワードは薄く目を開けてロイを見た。
「どうやったら、あんたがやきもちやかなくなるかなって」
「難しいな。私はきみに夢中だから」
抱き寄せられて、髪を撫でられる。そうされるのは気持ちがよかった。
「でも、オレ一人で乗るようになったら…」
「それが不安でたまらないんだ。きみは無防備すぎるからな」
「んなことねぇもん」
エドワードのむくれた頬にキスをしながら、ロイの手は残りの服を剥ぎ取ろうとして忙しい。
「このまま、ずっと私の隣にいてくれたらいいのにと思うよ」
「ダメ。オレ、早く一人前になりたいの」
ちらりと見えるカーテンの向こうは、雪。

「今日は、どんな仕事するの?」
「ああ。今日は今からきみとしばらく休憩をして、昼過ぎからはセンター便だ」
倉庫会社から配送センターへ。正月も休まない店に向けた荷物がある。
「それから皆で忘年会をして、初詣に行って」
「うん」
「それが済んだら寝て、次は新年会だ」
「なんだそれ。宴会ばっかじゃん」
「2日にはもう市場が開く。真夜中から出発だ」
「うん」

「忙しいぞ。大丈夫か?」

「大丈夫だよ」

あんたと一緒なら、大丈夫。

なんて、言ってやらない。

「年を越す瞬間も、こうやってキスしていたいな」

そう言って唇を寄せる恋人に、エドワードは苦笑して頷いた。

愛してる。

来年も、よろしく。

ずっとずっと、一緒に新年を迎えていけたらと思う。




キャビンの上に積もった雪が、ばさりと音を立てて地面に落ちた。



砂利を踏みしめながら、他の車が一台また一台と戻ってくる。



新年まであと1日。

トラックたちはまだまだ忙しい。






END,
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