撮影中に執拗に絡んでくる男主に嫉妬しちゃった頼重の話

撮影を終えた八代は、リビングのソファでゆっくりとお茶を飲みながら体を休めていた。その姿は、撮影中の緊張感から解放されて柔らかく、どこか安心感を与える雰囲気だった。

そんな静かな時間を破るように、頼重がリビングに足を踏み入れる。彼は無言のまま八代の背後に立つと、唐突に腕を回して八代を抱きしめた。

「頼重さん？」
八代が驚いて振り返るも、頼重はそのまま耳元に口を寄せる。

「……今日は、随分触られていたな。」

その一言に八代は「ああ、カメラマンのことか」と気づく。確かに撮影中、必要以上に絡んでくるカメラマンの存在はあったが、それも仕事の一環と割り切っていた彼は軽く笑ってみせる。
「気にしないでくださいよ。あれも仕事のうちですから。」

だが、頼重の腕がさらに強く八代を包み込む。その圧力に、彼の不機嫌さがじわりと伝わってくる。
「仕事のうち……ね。お前がそれを簡単に受け流しているのが、余計に気に入らない。」

頼重の声にはかすかな棘が混じり、八代は「また嫉妬ですか？」と半ば呆れながらも微笑んだ。だが、頼重はそれには答えず、八代の肩から鎖骨、腕へと指先を滑らせていく。

「んっ……ちょっと待って…」
触れられた箇所に小さな熱が集まるのを感じて、八代は身を捩る。しかし、頼重は構わず、まるで誰かの触れた痕跡を拭い去るかのように丁寧に撫で続けた。

「……本当に仕事だけだったのか？」
低い声で囁かれ、八代は困ったように頼重を見上げた。
「頼重さん、信用してくださいよ。本当にそれ以上のことなんてありません。」

その言葉に、頼重は少しだけ動きを止める。そして、八代の首筋に顔を埋め、静かに吐息を漏らした。

「……お前がこうしているのを見ると、安心はするが……やっぱり独占したくなるな。」

その呟きに、八代はくすりと笑う。
「独占って……頼重さんは十分私を独り占めしてるじゃないですか。」

「まだ足りない。」
頼重はそう言うと、再び指を動かし始める。特にカメラマンが触れた箇所を執拗に撫でるその仕草に、八代は「もう！やめて…くすぐったい」と笑いながら身を捩った。

「笑って誤魔化すな、八代。」
頼重の声には少しの怒りと独占欲が混じっていて、それが八代には可笑しくも愛おしかった。

「……本当に嫉妬深いんだから。」
そう呟くと、八代は背後の頼重にもたれかかり、彼の腕に自分の手を重ねた。その仕草に、頼重も静かに微笑む。そして、彼の手の動きが少しだけ穏やかになり、二人の間にゆっくりとした静寂が訪れる。

頼重の不機嫌は完全には消えていないものの、八代の優しい態度に少しずつ和らいでいく。